第12話 人との邂逅



呆けているとブルースが駆け寄ってくる。どうやら殲滅し終わったようだ。



『主殿、怪我はござらんか?むッ、その腕!まさか魔法でござるか?』



「あ…あぁ。何とか使えたみたいだ。そっちは大丈夫みたいだな!良かった。」



『ええ、大丈夫でござる。どうやらこの森では拙者の驚異となる敵は居らんようでござるな』



胸を張り腰に手を当てどや顔でブルースは言う。まぁ、そうだろうな。っと騎士の姉ちゃん忘れてた!俺が呆けてる間にグルグル巻きに蔦で縛られてた騎士の姉ちゃんをブルースが光の剣で既に切り裂いていた。さっきから此方の話が終わるのを待ってたみたいだ。声を掛けよう。



「お怪我は有りませんか?」



「あ、あぁ…この度は助太刀頂き感謝致す。」



手を差し出し、助け起こす。そういえば俺血塗れだな。騎士の姉ちゃんにも掛かってる。



「返り血を浴びてますね。ブルース、水を出してくれ!」



『承知でござる!』



ブルースが地面を光の剣で削り取り、空間魔法を発動する。すると水溜まりが出来上がる。



「んなッ……!!」



騎士の姉ちゃんが驚いてるのも分かる、俺も驚いてるから。けど、ブルースには主たる威風で、堂々と接して欲しいと先程言われたので腰に手を当てポーズを取って見守る。



俺は失礼と一言断り、ジャージを脱ぎ、Tシャツも脱いだ。結構お気に入りだったんだけど、仕方ない。水に濡らして騎士の姉ちゃんに渡す。見られて減るもんじゃないし、これでも昔は野球やってたからその名残でひまさえありゃ鍛えてた。騎士の姉ちゃんはなんか顔を隠してるんだけど。



「と、突然、服を脱ぐとはにゃに事だ?…はっ!」



あ、噛んだ。だが俺は動じない、紳士的に対応しよう。



「これで血を拭ってください。女性が返り血に染まっているのは見るに耐えません。不快とは思いますが、持ち合わせがないので着ていた物ですが良ければ使ってください。話はそれからしましょう。」



なるべく諭すように伝えてみる。これで分かってくれると有難いんだが……



「あ、有り難くお借りする。」



つんとした態度でひったくると顔を拭い手を拭った。その間に俺は手っ取り早くジャージの下を脱いでパンツ一丁になりブルースが作った池に飛び込み全身を洗う。



おい、誰だパンツレスラーつった奴!



へくちっ…!


やべぇ、後のこと何も考えてなかった。ぶるりと震えながら思い出す。ブルースに寝てる人達を起こしてもらわなきゃ。



と思ったらすでに実行してる。



あー、なんか俺の考えがブルースに流れてるんだっけ?すっかり忘れてた。



ジャージだけを着直して騎士の姉ちゃんを見る。というかこの人めっちゃ綺麗だな……あ、鎧の隙間から火傷の痕が見える。かなり痛そうだ…あとでブルースに治せないか相談してみよう



この世界で初めて会った人だから脳内補正があるのかもしれないが…



意識してたら熱くなってきた。無心だ、無心。



てか騎士の姉ちゃん、ぽかーんと口を開けて俺を見てる。


どした?惚れたか?…いや、ないな。


だが万一もある。…あるよな?とにもかく紳士的に対応しよう。



「お待たせしました、俺はソラトって言う旅の者です。あっちはスライムのブルース。貴方のお名前を伺ってもよろしいですか?」



「あ…あぁ。私はセレナ・クッコローゼ。騎士爵を国王陛下より賜っている。この部隊の隊長でもある。皆を代表して感謝致す。この度は命を助けて頂いたばかりか顔を拭うものまで貸して頂き有難く思ってる。」



クッコローゼって……マジかぁ…もう少しいい名字なかったのかなご先祖さま?



てか尊大な態度は貴族だからなのか。ツンデレかと思ってたよ…



「いえいえ、こういうときはお互い様ですよ。間に合って良かったです、クッコローゼさんの柔肌に魔の手が伸びるその前に憎きオークを排除することが出来たのですから。」



キラーンと白い歯を見せキメ顔をする。これで落ちた女はまぁ、うん…居たらいいな……。



「あ、あぁ…ソラト殿が通り掛からねば我々はオークの苗床になるところだった。このご恩一生忘れぬ。あとセレナでいい。」



なんかクッコローゼさんもとい、セレナさんの頬が赤くなってく。これは……風邪でも引いてるのかな?


我々……?あ、遠くて見えなかったけど全員女性みたいだな?



というか、一生は流石に重すぎないか?



「良いですよ。偶々で拾った命を一生掛けて恩返しに使うのは勿体無いです。セレナさんや皆さんにも大切な人がいるでしょう?幾つか聞きたいことがあるので教えて頂けませんか?」



「…わかった。」



『主殿、全員拘束を解き起き上がりました。それとこちらが倒したオークのドロップ品でござる』



ブルースが呪文を唱えドロップ品の袋をボトボト落とす。中は……猪肉か?肉…肉……肉ぅー!!



「でかした、ブルース!さっそく食べよう!」



はっ!肉を見て興奮してしまった……セレナさんは苦笑いをしている。



「すみません…ここしばらく生魚しか口にしてなくて取り乱しました。」



「なんと…!生魚だけだと?栄養が足りぬではないか!このままではいかん!助けて頂いた礼に調理をさせてくれ!!香辛料や足りない素材はこちらが出そう。」



ズズイッとセレナさんがこっちに詰めてきた。なんか美人さんに迫られると…恥ずかしいな。



『主殿、コボルト達をお忘れしてませぬか?』



コボルト…あ!すっかり頭から抜け落ちてた。後ろを振り返ると三十体以上のコボルトが立ち尽くしている。



「すみません、セレナさん!とりあえずコボルトの塒まで移動しませんか?」



「あぁ、分かった。皆、移動するぞ!着いてこい!動けない奴には肩を貸してやれ!」



俺の食欲を満たすためここはセレナさん達の力を借りよう。コボルト集落の中心へと移動した。



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