第11話 くっ殺せ…それはお約束
ブルースとコボルトに引き連れられ足場の悪い森の中を走ること二十分ほど。
これと言った変化もない森の木々を抜けると開けた岩場があり、ポツポツと大きな穴が開いていた。
ブルースに尋ねるとあれはコボルトの塒でありこの開けた場所はコボルトの集落の中心だという。そのまま進んで行くとコボルトの鳴き声と大きな猪の魔物が群れを成して戦っていた。
『オークでござる!主殿気を付けて下され!奴らには物理攻撃が聞きにくいので魔法を!』
「お、おう…てか俺まだ使えないぞ、魔法」
魔法を習う時間がなくてそのままコボルトと遭遇してしまったから未だ俺は魔法が使えない。だがブルースは親指を立てこちらを見つめ自信満々の顔でこう言った。
『主殿ならきっとすぐ覚える事が出来ると拙者信じてるでござる!ガンバ(´p・ω・q`)♪』
マジかよ…
そう言うとブルースは光の玉を俺に預けオークの方へ飛んで行った。人に預ける事も出来るんだな。魔法って素晴らしい。
まだオークとの間には距離がある。少しブルースに習った魔法の話について思い出す。
魔法は念じることが大切。次に想像、その次が自らを律する事。
念じる…すなわち願うってことだろ?想像ってことは自分の思いを形にする。ふむ、段々イメージが出来てきたぞ。後は魔力を通して具現化する。ブルースに少しだけ教わったな。
・・・これだ、後は形にすることが出来れば。うーん…上手くいかないなぁ。焦るな、まだ始めたばかりだ。
数回試してみたが出来そうにない。だめだ、どうしよう…とか言ってる間にブルースが光魔法で出した剣で無双してる姿たるや、さながら侍だな。もうこれ俺要らないんじゃないかな?
『……けて!た…け…!』
何か声がする。こっちか?ゆっくり茂みに隠れながらそろそろと声のする方へ向かう。
そこには数名の鎧を纏った人間が蔦で簀巻きにされ転がされていた。
見張りは……一匹だけみたいだな。というか女の人に興奮してるみたいだ。
「ブヘヘ、ブヒィー」
「クッ……殺せ!!」
やべー、生でクッコロさんを見てしまった!めっちゃ綺麗な人が精緻な装飾が施された鎧に包まれ綺麗な金髪を振り乱している。
早く助けないと……けど、どうする?物理は効かないけど魔法なら…俺には手段がない……
いや、やるしかないか。ブルースに出来たんだ、俺だって出来るはず。覚悟を決め俺はもう一度だけ魔法を試してみる。
俺の職業は拳闘士。
ただスライムを殴り倒しただけだがダメージは多分、職業の能力補正が着いてるんじゃないか?と思った。ブルースは光の剣でオーク相手に無双してた。
ならば物は試しだ。拳を包むように氷魔法でボクシンググローブの様なものをイメージしてみる。
むむぅ~……?記憶の中のボクシンググローブを思い出す。大丈夫、構造は理解出来てる。おっ!
よし、完成だ。少し歪だがなんとかなる、これなら行けるだろう!俺は自分を鼓舞し、茂みから飛び出し背後から護衛のオークを襲う。
「死にさらせッ!おらッ!」
横合いから頭目掛けてストレートを決める。
パァーンと音がなりオークの頭が弾け飛んで正面の気に当たった。
噴水の様に血が飛び出しそれをモロに被ってしまう。オークから煙が出て麻袋が落ちた。
『レベルが上がりました。レベルが上がりました。レベルが上がりました。レベルが上がりました。』
そして脳内に響く機械の様な音声。ひえぇー、どんだけ上がるの…
『氷創造魔法―アイシクルブロウを覚えました。』
あ、魔法覚えた。
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