第4話


「浩次君?」


 コンコン、と聞こえたノックの音と、遠慮がちな声で目が覚めた。




 ――えっ、裕文さん? 帰って来てるの?


 もうそんな時間? と思うが、時間が判らない。


 暗くなっている部屋に、夜なのだということは判る。裕文さんが帰って来ているということは、20時――それとも21時だろうか?


 枕元のスマホで時間を確認することも忘れて起き上がろうとしたが、上手く体が動かない。


 熱を持った体と頭の痛さに、再び枕へと倒れ込んだ。


「開けていい?」


 遠慮がちにかけられた声に、「はいっ」と返事する。


 その自分の声が思っている以上にかすれていることに、驚いた。


 同時に、けほっ、けほっ、と咳が出る。


 開けたドアから顔を覗かせた裕文さんが、「大丈夫?」と尋ねてくる。そうしてベッドに横になったままの僕に、驚いたようだった。


「どうしたの? しんどいの?」


 パチリと電気を点けた裕文さんが、僕の顔を見た途端、目を見開いて近付いて来る。


 ひやりと冷たい手の甲を僕の額にあてると、「大変だ」と部屋を出て行った。




 ――起きないと。……晩御飯。




 今からすぐ作れるものって何があるかな、と考えるが、頭が上手くまわらない。


 ぼー、とする頭のまま、床に足を付いた。

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