第7話


「え……」




 向かった、姉さんのお墓の前。


 誰か居ることに、足を止める。




 そしてそれが、見慣れた背中であることに、驚きの声を落とした。




「どうして……」




 僕の呟きに、しゃがんで手を合わせていた人物が振り返る。


 驚きにぽかんと口を開け、立ち上がった。



「あれ? 浩次君? どうしてここに居るの?」



 それはこっちのセリフです、と足を進める。


「お義兄さんこそ。お見合いはどうしたんですかっ」


 時間は!? 間に合うの!? と続けざまに訊いた僕に、「いやぁ、それが……」と横を向いて頭を掻く。


「あれ、実は断ってたんだよねぇ」


「え……」


 どうして……と呟いた僕に、今度は裕文さんが問うてきた。


「浩次君こそ、どうして此処に? お友達は?」


「それは……その……」




 口篭った僕に、裕文さんがふわりと笑う。


 そうして、優しく頭を撫でてきた。




「気を遣ってくれてたんだ? 浩次君は、良い子だねぇ」


 全然良い子じゃないのに、それを言えない。


 そっと息を吐いて、姉さんの墓前に花束を供えて手を合わせた。


「ごめんね。せっかく2人で会話してたのに、邪魔しちゃって」


 僕が言うと、クスリと裕文さんが笑う。


 見上げた僕に、肩を竦めて笑った。


「どうだろ。――もしかしたら、由美が浩次君を呼んだのかもしれないね。僕の愚痴にうんざりして……」


「え……?」



 ――グチってた? 裕文さんが?

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