星。世界。黒。

愚っ痴ぃ

第1話

 星が綺麗だね。


 僕はそらを見てもいないのに。

 誰もいやしないのに、そう呟く。


 呟いた素敵な言の葉は、此処ここには似合わない。

 在るのは暗い暗い無という黒。

 眼を凝らしても、真黒から何も変わりはしない。

 在るのは淋しい風の音。

 僕以外誰もいやしない。

 僕はこの此処せかいには似合わない。


 星は綺麗な物だと、僕はいつか気づく時が来るのだろうか───────その思考すらこの闇に呑まれてしまった。


 在るのは慣れた色。僕は世界を知らない。

 知る術がない。全て闇で完結されている。


 此処には希望すらない。在るのは見えない世界。

 目の前に在る筈なのに、何も解らない。


 手探りで触れても、この世界が解らない。

 在るのは、人々の喧騒と辺りに散らばる無機質な黒。


 僕には、此処が解らない。

 何故なのかと、名も知らぬ誰かに呼んでも教えるはずも無い。


 ───────受け止めろ。

 自分に押し付けた言葉が針となって心臓に突き刺さり、今にも吐き出してしまいそうな悪寒を憶える。


 ─────解らない。

 ─────解せない。

 ─────何故なんだ。


 星が解らない。

 星という物が、どういうものなのかさえ不完全だ。


 自分が解らない。

 今どんな顔をしているのか視認できない。


 何も視えちゃいない。何も解らない。

 


 在るのは、暗い暗い闇という黒。

 僕は此処せかいに似合わない。


 僕は一体何なのだ。

 人間ヒトなのか。また別の何かなのか。


 産まれた時から、ずっと僕は広い世界を知らない。

 ヒトより遅れている訳では無い。スタート位置にも立てていない。それだけだ。


 それだけなのに、その現実は冷酷で。

 とげとげとした現実は喉に引っ掛かって呑み込めない。


 僕はもう一度、星が綺麗だ。と呟く。


 見たことも無い星。

 見える筈もないホシというモノ。


 人はそれを。綺麗だという。

 僕には解らない。

 誰も教える術がない。


 目の前に在るのは、日常となった寡黙な黒。

 それが、自己を壊しそうで───────


 僕は、世界を知らない。見えない。解らない。


 僕は人知れず昏い世界を、歩き続ける。

 此処には誰もいやしない。人間ひとは此処には居ない。


 在るのは、一寸先も無い無色彩。

 見えた試しのないせかいを求めて今日も僕は歩き続ける。

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星。世界。黒。 愚っ痴ぃ @Gucy

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