第25話 逃げようか?



 こんなの俺の手には負えない。

 いくら特別な力を持っていたって、人一人に出来る事は限りがある。


 ならもう、どれだけ頑張っても無駄なんじゃないか?


 ここまで頑張ったんだから、もう見て見ぬふりして逃げても良いんじゃないか?


 その瞬間、これまでに出会った人達の顔が、両親や屋敷の者達の顔が脳裏に浮かんだ。


 けれど俺はそれらに、目を背けた。


 もう、十分だ。


 諦めよう。


――スキルの解放条件が満たされました。運命停止スキルを発動します。


「は?」


 けれど、俺が下した決断は残酷な事実をつきつけた。


 その瞬間、時が止まって世界から音が消えた。


 シオンも、氷みたいに固まってしまったかのように動かない。


「まさか、あきらめがじょうけん? それで、じかんが」


 まったく予期せぬ発見だったが、驚愕の感情はすぐに消え失せた。

 そんなものが分かったところで何になる。


 この時間で考えろとでもいうのだろうか?

 皆を救う方法を。


 そんなの、無理だともう分かりきっているのに。


 諦めた矢先に戦えなんて、理不尽だろ。


 それより、この状態いつになったらとけるんだよ?


 まさかずっとこのままという事は、ないよな?


 ……。


 ……。


 ……。


 そのまましばらく待ってみたけれど、まったく時が動き出す気配はなかった。


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