第24話 八方ふさがり



 スキルが発動した。


 そして、過去が、運命が書き換えられる。


 次に目を覚ました時は、辺り一面どころか、全てが焼け野原になっていた。


 何かが焦げた匂いが鼻につく。


 熱風が吹いて、体をなでていった。


「な、なにが。どうなって」


 目の前に、建物もない。

 人もいない。


 草一本も映えていない惨状にうろたえる。


 みんな同じ景色だから、どこに町があるとか屋敷があるとか、森があるとかも分からなくなってしまった。


「ラックス様のせいではありません」


 呆然自失としていると、シオンが痛ましい表情でこちらを見てきた。


「え?」


 彼女は、苦しげな表情で俺を抱きしめる。


「なにが、いったい」

「ラックス様は、魔人の復活と私の秘密に気付かれて、適切な行動をとっただけです。他の人達は邪神に命を捧げる事しか知らない狂信者でした、悔やむ事なんて何一つありません」


 何が何やら分からなかったが、シオンの説明で一つの推測が立てられた。


 おそらくこの世界では、俺が願った通りになった。


 この世界の俺は、かなり早期にシオンの秘密に気が付いたのだろう。


 それで、命のかけらを宿した人間達を捕まえようとした。


 でも、おそらく失敗して……。


「俺のせいで邪神の活動が早まったのか?」

「いいえ、ラックス様のせいではありません。こんな事になるなんて、私ですら、わからなかったのですから。彼らがあんなふうに、目の前で自害するなんて」


 おそらくシオンも少なからずショックを受けているのだろう。

 冷静なときであれば、子供に言わないような事を口走っている。


 けれど、おかげで大体わかった。


 キルトスにはおそらく、命のかけらをもった連中が集まっていたのだろう。

 けど、俺がそれを捕まえようとしたから、町の人達はロクに避難できずに……。


 魔人が活動するのが早かったから、とっくの昔にここら一帯を焼き払っていったんだな。


 じゃあ、どうすればいいんだよ!


 八方ふさがりじゃないか!


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