転章




「まさしく、台風の目となりそうな男じゃの」


「は。その名も風巻大地と申すそうで」


「風巻大地か……。で、我が藩からはだれも出ておらぬのか?」


「それが……今年はひとりも出場すること叶わず……」


「情けないやつらじゃ……といいたいところなれど、まあよい。

 打つ手はいくらでもある。のう、織部おりべ


「御意。春様の仰せのとおりにございます」


 春様と呼ばれた男――尾州公・徳川宗春むねはるは武者絵に描かれた風巻大地の姿をちらり見やると、さも楽しげに笑い声を立てるのであった。




   大江戸アルティメイタム 第一部 完


 

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大江戸アルティメイタム 八田文蔵 @umanami35

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