第三話 不意打ち


 まさに大地は場違いな闖入者ちんにゅうしゃといえた。

 その場にいた全員が奇異な目で大地を見た。


「なんだ、おぬしは?」


 取り巻きと思える二人のうちの一人が居丈高にいった。


「なにって、道場破りだべ」


「はあ?」


「聞こえなかっただか、道場破りって、はっきしいったべ」


 大地は『道場破り』という言葉を強調して繰り返した。


「失せろ山猿! こやつのようになりたいか!?」


 取り巻きのもうひとりが、木刀で祐馬と呼ばれた少年を差し示し声を張りあげた。


「失せろといわれて失せる道場破りはいねえべや。おらにびびって勝負を受げたくねえなら、最初ハナからそういってくんろ」


「なんだと!」


「待て」


 いきりたった二人を制して、大柄な男がずいと一歩前に進みでてきた。


「面白そうなやつだ。名を聞こう」


風門流ふうもんりゅう風巻大地かざまき・だいちだ」


「風門流? 聞かぬ流派だな」


「山の天狗様に教わっただ。あんたはなんていうだ?」


「おれか……おれの名は――」



 なんの予備動作もなく、いきなり大男が大地に向かって突きを繰り出した。


「地獄で聞けい!!」


 まさに不意打ちの一撃、必殺の刺突であった。


   第四話につづく


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る