第4話 DV

私には恋人がいる。

今は同棲して生計を立ててくれているし、私の気持ちが落ち込んだ時も根気強く説得してくれるパートナーだ。


さて、別にそんなのろけがしたくてこの書き出しを選んだわけではない。


私は措置入院を経験した。

簡単に言うと、精神科の医者に「あなたヤバいから県の命令ででも入院した方がいいですよ」という強制力の強い入院形態のことだ。


そのきっかけが、恋人への暴力だった。


仕事が上手くいかず、前の職場でいじめられていたことに苦しんでいた私は、何かに当たり散らすしか発散方法がわからなかった。

そして悪いことに、当たり散らしても発散はされなかった。


頬を叩いた。思いっきり。

頭を掴んで壁に叩きつけた。

蹴りつけた、ひっかいた、噛みついた。


殺してしまうのではないかと、怖くなった。


電話相談を利用した。

電話越しの相手は私の話を聞いて、笑って「ぬいぐるみでも用意すればいいんじゃないですか?」と軽い調子で言った。


そうしてなあなあできたつけがきた。

私は木刀を持っていじめを受けた職場に行こうとした。

私がこんな目にあっているのはあいつらのせいだ、殺しに行こう。


恋人は必死になって止めてくれた。

ただ私は止まれなかった。

木刀は途中で手放し、身一つで抵抗した。


やがて通行人が警察を呼んできた。

そのまま私は警察に保護され、精神鑑定をされ、病院に放り込まれた。


これまで以上の闘病生活が始まった。

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