リュウリの決意


 大人たちがその場を救ってくれたことに、リュウリは感謝をしながらも、ラランの心と聴色師としての恐怖が癒えない中、惑いはあった。

しかしこの戦いでキザンやコジョウのような事は出来なかったにせよ、自分なりに「今やっておかなければならないことは今やっておかなければ」という気持ちが強く湧いてきていた。多くの人の生死、そして今からのための自分の決意であった。


リュウリは若いサンガの前に歩み出た。そうしてリュウリにしては大きな声で


「サンガさん、僕をあなたの弟子にして下さい。これから先、僕は色々な事、色々な面でもっと強くならなければならない。世の中をほんの数人の人間が悪くすることなど、おとぎ話と思っていました。ですがやはり今度はそうではない、そのために僕もラランも町を出てきて、素晴らしい仲間たちとも出会いました。旅は充実したものでした。ですがもうそれだけではだめだと気が付いたのです。お願いします」

サンガはそれに少々苦笑しながらも、すぐに答えた。


「リュウリ君、敵に捕まった私にそう言ってくれるのは少々恥ずかしいよ。でも、たしかに私は君に何かを教えることもできるだろうし、命色については逆に学ぶこともできると思う。お互い助け合うようことができるだろう。コジョウ、君もいた方が切磋琢磨できるとも思うのだが、君の場合は側に最高の人間がいる。私の後継者だ、君にも初代サンガの本当の手ほどきを体験してもらいたい。そうすれば君も強くなれるだろう、師匠、自分のお子さんに甘いというのは無しですよ」


「言ってくれるなサンガ、だがこれからどうするにせよ、とにかくここから離れよう」


ラランの顔には、やっと自然な笑みがこぼれるようになった。



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