休養

「とにかく今は休もう、ララン、それも必要だ。あの山の粉は聴色師の俺たちにも悪影響を及ぼす。急がない方が良いさ、それより、丁度いい未来の練習相手に俺たちの子供と一緒に遊んでやってくれ! どうも若い方が良いみたいだから」


チュラの言葉は的確で明るかった。命色師の一行はコジョウの家で長期的な休息を取る必要があった。命色師二人も、創色師のユーシンでさえも、一旦命色の事から離れるようにとキリュウから言われていた。


まだらの状態だった若い男は、日に日によくなってゆき、一か月もしないうちに「普通の人間」に戻ることができた。そうして待っていた家族の元に戻ることができ、感謝の手紙が命色師たちに来た。本人は家の農作業を手伝いながら落ち着いた生活が出来ている、と警察からも聞くことができた。

「操り人形だった彼と一緒だ。そちらの方が良いのだろう」

誰よりもゆっくりとした時間が必要なのは、間違いなく彼だった。


 若い命色師たちは、昔の話を伝説の三人に聞きたかったが、キリュウは猶更忙しくなり、家に「寝に帰る」だけの生活になってしまっていた。そんな中、センとチュラが子供たちが眠ってから話してくれた。



「要は命色線の出る穴が詰まっているような状態なんだ。無理やりやるとそこが色で固まってしまうんだよ。あの時のサンガは・・・・・可哀そうだと思えたのはあの時だけって感じだな、なあ、セン」


「ああ、これから先はそう言う「攻撃」をしてくる可能性が高い。それを溶かす「温泉」が山奥に数か所あるが、それは極秘事項だよ、敵に見つかったらどうしようもないからな。だが猿と一緒に入らないといけないぞ」


「本当に? 」

「本当、本当。なあ、サンガが猿と一緒に温泉に浸かっている姿は」

「サンガが深刻な顔をしていたから、最初は笑えなかった、チュラ、お前ですらそうしなかった」

「で、こらえきれずに噴き出したのはお前だろう? セン」

「ハハハハハハハハ、でも今でも最高におかしい思い出さ、目に浮かぶだろうみんな」

「フフフ」「ハハハ」「面白い! 」


二人はのんびりと話していたが、センは長くいることもなく自分の家に帰り、チュラとビギナと子供達も「学校があるから」「えーここにもっといたい! 」というごく普通の会話の後、出発することになった。


「ララン、今度は君が訪ねてきて欲しい」

「分かりました、チュラさん」

「え! ラランお姉ちゃんいつか僕のおうちに来るの? やった!!! 」

ちょっと悲しげだった子供たちは大喜びだった。


「ほう、お前が師匠面か」

「息子の前で他人を小馬鹿にする父親はどうだ、コジョウ」

「初めて見ます」

「だろう? 親友、いやこれが腐れ縁の仲間さ、なあ、サンガ、いやキリュウと言った方が良いのか? 」

「任せる、チュラ。ありがとう、後はのんびりと過ごしてくれ」

「そうか? そうできはしないさ、だがいろいろ有難う、サンガ。楽しかったよ、お前の女房にも会いたかったが・・・よろしく言っておいてくれ」

「ああ、わかった」

「おじちゃん、おもちゃとお菓子ありがとう!! 」

「二人とも元気で、ありがとう、ビギナ」

「ええ、サンガ、がんばってね、みんな」

「ハイ」


これからことは、姿がはっきりと見えない聖域の山のように大きかったが、若い人間達は、旅の一つの区切りをつけることが必要のように思えた。


「リュウリはサンガさんと一緒か、俺はどうしようか」


「ごめん、はっきりとした相談もなしに、キザン」


「何となくわかっていたよ、リュウリ。それにキザンは特殊で、自分の道を模索することが必要になってくる。僕はキザンのためにも一緒にいた方が良いかもしれない」


「俺がユーシンと一緒にいられるのか!! わお! 最高級の色を使い放題! 」


「練習には試作品を使ってもらうけれどね」


「しっかりしているな。ユーシン、で、ラランちゃんはどうするのかな? サイサイさんの妹みたい、じゃない妹に将来なるだろうけれど」


「サイサイさんから言われたんだ。何処の国でも、聴色師の護衛に神の娘が付くことになったって。そして国の全体的な変化を感じ取ってもらうって」


「なるほど、そしてコジョウがおやじさんにくっついて、情報を俺たちに知らせるってことだな。なんだか・・・戦えそうな気がしてきた」


新たな出発に徐々に準備を整えていた。

 

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