決意

 タイトはその後もフミオには負け続けた。だが、通算98勝、目の前には100勝がぶら下がっていた。そして、今日の斡旋は2試合。


「……フミオさんの500勝の日と同じ条件、か。」


 誰に言うでもなくつぶやくタイト。


 スタジアムに着くと、横断幕の用意がしてあった。こんな自分でも祝ってもらえるのか、今日達成できるとも限らないのに、と複雑な胸中で観客席を見ると、誰かが手を振っている。誰だ?




「タイト! あの日からお前しか買ってねーぜ! 今日決めてくれ!」



 その声は、はっきりと聞こえた。タイトは照れ臭そうに笑いながら、頭を掻き、深くお辞儀をした。




 番組表を見ると……1試合目はジュキヤ、ノリフミ。2試合目は、ケイタ、……そしてフミオ。


 それでも、観客席から手を振ってくれた、きっとあの日うっすらと聞こえた声の主の想いに応えたい。タイトの目には、涙が浮かんでいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る