第6話 出る杭は打たれるって言うけど、出ない釘は存在すら忘れられるよね

 朝のSHRが終わり、次の授業に備えるための休憩時間が訪れる。


 本日の一時限目は数学。

 移動教室でもないこの時間は、本来ならリア充どもの他愛無い雑談で埋め尽くされているはずだが今日に関してはその様子は無い。

 というか、リア充だけじゃなくて全てのグループがそうだ。

 皆、会話こそすれどもぎこちなく、どのグループもいつものような賑やかさは感じられない。

 ……まぁ、理由は分かりきっている。アイツしかいない。

 教室の廊下側。

 そこは、まるで特殊なバリアでも展開されているように閑散としていた。

 一人、無表情のまま予習でもしているのか教科書を読みふけっている。

 その周囲には誰もいない。いや、正確に言えば立ち入ることができない。

 美少女転入生のセオリーで言えば自己紹介後、男子と女子双方から質問攻めが押し寄せてくるはずなのだが、彼女は今も、さらに言えば現在進行形でそんなことは一切ない。

 じゃあ、美少女じゃなくない?と疑うかもしれないが、悔しいことに正真正銘、アイツは美少女だ。しかも、超がつく。

 なら、なぜ性欲の権化たる思春期男子高校生が飛びつかないのか?それは単に恐れているだけだろう。

 こうなった責任は全て、五分前の彼女本人の言動にある。

 

『——男性の方は吐き気がするので一メートル以内には近寄らないでください——』


 一応、補足しておくとこれ、自己紹介です……え、自己紹介なの?

 自分の言ってることが一瞬理解できなくなるくらいの自己紹介。もう自己紹介の概念を超えている気がしなくもないが自己紹介だ。あれ……自己紹介ってなんだっけ?

 そんな訳で転入美少女は孤立している。俺と同じだ。

 だが、俺と違って話題にはなっている。

 悲しいことに俺の話題はパートナー抽選以外だと皆無。むしろ、避けられてる気さえする。

 ……深くは考えないでおこう。うん、やっぱ避けられてるよね。そんなの、深く考えなくても分かってるわ!

 騒がしい自分の心の声とは裏腹に、教室は今だ静けさを保っている。

 まるでそれは、それまで賑やかだった教室に俺が入ってきた時のような静寂さだった。

 ……ほんと、ウザイよなあれ。

 いや、分かってるから。十分。そんな『うわー、なんでこいつ今、来ちゃうかな?』みたいな顔しなくても分かってるんだよ。こっちは!

 だが、そんないつもより静かな教室だからこそ耳を澄ませば多少小さくても周りの会話を聞き取ることもできる。

 斜め後ろの席を陣取る女子グループの会話をピクピクと鼓膜が拾った。


「ね、あの転校生の子どう思う?」


「うーん、すごい美人だけど……さっきの感じだと、ちょとね」


「わかる……なんか、上から目線が凄いっていうか、いきなりあれはないよね~」


「わかる~、てか、そういう人に限って裏でいろいろやってるんだよね」


「そうそう、わかる~男が嫌いとか言ってたけどうちの学校来てる時点で嘘決定じゃーん。絶対に男と遊んでるって~」


「あぁ~わかる~わかる~」


 あいまいな返事の応酬。

 今のJKの会話は「わかる~」さえ言えばなんとかなるって、この前テレビでコメンテータが言ってたのを思い出した。もはや、日本語じゃないだろそれ……。

 ともかくこんな感じでアイツの話は至る所でされている。

 あんな自己紹介をした時点で、こうなることは分かっていたのだろう。周囲の声には全く反応せずに能面のような顔で教科書を眺めている。

 というか、そもそも周りの反応なんてどうでもいいのかもしれない。

 その姿は癪だが、かっこいいと映らなくもない。

 周りの反応を気にすることなく常にピンとしている背筋は、同じ状況においてイヤホンで逃避するしかない俺とは比べ物にならないほど凛々しかった。どっちもボッチなのは変わらないけど……。

 元凶が気にしないのをいいことに、そこかしこから小声の密談が催される。

 先ほどの女子グループと同じような内容の会話が教室の後ろから少し漏れていた。

 腕を枕にして顔を沈める。

 ボッチが頻繁に使う現実逃避の秘儀——寝たふり——を駆使して様子をうかがった。


「あの子ヤバくない? いきなりあれはないでしょ!」


「うん、いやーほんと。うちもビビったわ☆ 吐き気とか普通にヤバくない? ちょっと怖いし、マジでヤバいわ~! ヤバくない?」

 

 どうやら「わかる」に続いて「ヤバくない?」もJK語録に入っているようだ。

 何で今の会話だけで三回も入ってんだよ。ほんとJKヤバくない?

 自身の主張を他者と共有することで一度も淀むことは無く進んでいく会話。

 様々な主張がなされてはいるが、結局、どれも本質は異分子に対する抵抗感が生み出したものだ。

 女子の大半の心中は似たようなものだろう。

 関わりたくない、と。


「えーでも、めっちゃ可愛くない?」


「それな! つーか美人過ぎじゃね? モデルかな?」


「いや、あんなモデル見たことないけど。とにかくヤバいわ!」


 一方でそんな女子二人の意見と異なる主張の二名の男子。

 いつも窓際を男女で指定席のごとく陣取り、空き時間は絶え間ない喧騒を生みだす魔の巣窟。

 このクラスでもトップに位置する彼らの名は——リア充。

 毎時間、授業が終わると同時にまるで蛍光灯に群がる蛾のごとく集まるあの集団がこの話題に飛びつかないはずもなく、それぞれの意見を交換する。

 すると、男子側の意見に納得できなかったのか、明るく脱色された髪色のいかにもビッチです、といった感じの女子生徒(童貞は髪の色が明るい=ビッチだと自然に思ってしまう)が幾分かの鋭さを含んだ声で、最初に可愛いと口にした男子に抗議し始めた。


「……へ~、ああいうのがいいんだ。かけるは」


「いやいや、可愛いって言っただけで咲菜さなの方が好きだから。いや、ほんとマジで!」


「ふーん、何か嘘くさいなー」


「嘘なんかついてないから! 俺が好きなのは咲菜だけだから!」


 ビッチ——もとい咲菜と呼ばれた女子生徒に咎められるリア充——翔は明らかに動揺しながらも必死に首を振りながら否定する。

 金倉咲菜かなくらさな早川翔はやかわかける、両人とも自他ともに認めるリア充——つまり、俺の敵だ。

 早川の様子に疑いを深めた金倉が、さらに咎めるという悪循環が生まれていく。

 ……いい気味だ。身内で争え!苦しめ!

 人の不幸は蜜の味というが、ことリア充の不幸に関してはミシュラン三ツ星高級店のスイーツにも引けを取らない美味しさだ。おかわりを所望したい。


「まぁまぁサナっちも落ち着いて。でも、確かに今のはカケるんが悪い!」


 醜い下界の争いを収めるべく、天使の啓示がポニーテールと共に舞い降りる。

 二人の仲裁に割って入ったのは真白さんだった。

 どこのグループにも所属していない真白さん。

 万人受けするタイプの彼女はクラスどころか学年の中でも特定のグループに固執しておらず、どのグループにも顔パスで所属することができるというコミュ力の化物……いや、天使でおらせられるのだ。

 故にこのクラスの上位カーストグループであるあの場にいても違和感はない。

 いやーほんと、他の人の喧嘩を止めるとか天使過ぎないですか?もちろん俺も最初から止めようと思っていたけどな。

 続けろ、とか共倒れしろ、なんて一切考えてないからな。もう平和が一番でございます。——結論、真白さんマジ天使。


鏡音きょうねもかよ! いや、俺はおもったことを口にしただけで」


「そうだな翔。お前が悪い。鏡音の言う通りだ」


「ちょ、たちばなまで! お前だってさっきは!」


 自分の味方はいないと悟ったのか早川はもう一人のリア充、橘(たちばな)を道ずれにしようとするが、その思惑は凛としたイケボに阻まれてしまう。


「まぁ、確かに今のは翔が悪いかな」


「尾堂もそっちの味方かよ!」


「いや、元は翔の言ったことが原因なんだから当然でしょ?」


 凛とした声の正体は尾堂寿おどうことぶきだ。

 まぁ、真白さんもいるんだから当然と言えば当然か……パートナーだもんな。

 早川と尾堂のやり取りを聞いただけで、二人のリア充度の違いが浮き彫りになる。明らかに尾堂の方が上だ。

 伊達に真白さんの彼氏をしていない。

 俺のスカウターによると尾堂のリア充度は53万。おい、どこの宇宙の帝王だよ。

 ……俺もたいがい天方のレーダーのこと言えない気がするから、このレーダーは封印しておこう。

 リア充スカウターとか需要が意味不明すぎる。ヤリチンレーダもだけど。


「あらあら、何を楽しそうにしていますの?」


「なんかあったのか」


 そう言いながら近づいていく二人の男女。

 二人は臆することなく、リア充たちの巣窟へと向かう。

 自殺にも近い行為。だが二人が近づくにつれて自然な動作で窓際の席の前に立っていたリア充達が道を開き、それを当然とばかりに二人は渡り歩いて中央の席に座った。

 現代版モーゼですか?


「転入生の子の話をしてたら、カケるんがべた褒めするからサナっちが怒っちゃって」


 訪れた二人に簡潔に状況説明する真白さん。

 その説明に納得したのか二人は絶賛四面楚歌中のリア充、早川のもとへ追加の冷えた視線を落とす。


『翔……』


「渚と神ヶ崎まで……い、いやーその」


 いまだ逃れようと言い訳を口にしようとする翔。だがその言葉が放たれることは無かった。


「咲菜が怒るのも当然です。自分の始末は自分なさい」


「自己責任だろ」


 高圧的な言葉。

 これだけで今来た二人の地位がリア充である早川よりも高いことが容易に判断できる。

 つーか、リア充の社会って縦社会過ぎるだろ。こっわ……

 なんなの、ヤ〇ザなの?仁義なき戦いですか?


「う、……わ、わるかった咲菜。今度なんかお詫びにおごるか——」


「やった☆ 洋服ね! 服! あ、でもあのアクセも欲しいし……うーん悩む!」


「え、ちょ、お前、めっちゃ元気じゃん! 一つだけだからな! 一つだけ!」


 ようやく非を認める早川にあっけらかんと金倉が欲しい品を思考の中で物色する。

 その様子を見ている一同には笑いが訪れた。

 その笑い声が暖房のように冷たく物静かだった教室の空気を弛緩させる。

 静かだったクラス全体の声量も元に戻り、さっきまでの教室から一変して普段の教室へと変化していった。

 これがリア充の教室における権力の実態だ。

 スクールカーストのもたらす魔法。

 すなわち、リア充たちによる空気操作。

 その威力は絶大で、アイツが生み出した氷の空間をも和ませている。

 だが、今回の場合。真に特筆すべき存在はあの二人の存在だ。

 神ヶ崎雅かみがさきみやび水原渚みずはらなぎさ

 このクラスの代表は?と問われた場合、まず間違いなく全員が思い浮かべるであろう二人。もちろんこの二人はパートナーだ。

 常にクラスの中心に位置する二人の地位は今や確固たるものとなっている。

 その証拠に、いつもリア充グループが集まるのは二人の席の近くである窓付近であり、さっき二人が近づいたときにおこった妙に自然な道の開き方など、様々な行動があの二人を中心人物だと物語っていた。

 ……まぁ、一番の証拠は俺が名前を知ってるってことだな。

 一年間、同じだったクラスにいる大半の生徒の名前を知らない俺が知ってるんだぜ。これ以上の説得力はないだろ?

 ひとしきり笑い終えた神ヶ崎たちは新たに話題を変える。

 特にやることもないので俺も観察を継続することにした。


「雅はどう思う? 転入生のこと。やっぱ怖い?」


 怖いと思っていることが前提の疑問を金倉が投げかける。もはや、それ以外に余地はないと思っているのだろう。

 だが、質問を受けたトップリア充——神ヶ崎はおかしそうに少しだけ笑うと彼女の予想と違う言葉を口にした。


「フフフ、別に怖くなんてありませんよ。どっちかというと面白そうですかね」


「あ、ミヤミヤもそう思う? 絶対、面白いよあの子!」


 神ヶ崎の意見に賛同する真白さん。

 予想とは違う二人の意見に金倉は呆けた表情のまま疑問を口にした。


「面白そう?」


「あの自己紹介ですよ。あんな面白い人初めて見ました」


「あれは凄かったよね! ちょっと話しかけてこよっかな~」


「ちょ、ちょっと! 鏡音。流石に止めといたほうがいいって。ああいうのは関わらないほうが絶対にいいヤツだから!」


「うん、咲菜の言う通りやめたほうがいいって!」


 真白さんが話し掛けに行こうとするのを必死に引き留める金倉ともう一人のビッチ。

 よく見れば、さっき天方が本当に転校したのか椿先生に聞いていた明るい髪色の女子(ビッチ臭強め)だった。名前は確か……田口だったか。下は憶えてない。

 てか、あいつら必死すぎだろ。どんだけ天方と関わりたくないんだよ。

 ……うん、まぁ分かるけど。


「いいんじゃねぇの、別に。男じゃないなら大丈夫なんだろ」


 引き留めるビッチ二人に気怠そうに声を掛けたのはカースト上位の中の上位、水原渚だ。

 ガッシリとした体格、確かバスケ部のレギュラーだったはず。前に一度、リア充達が教室でそんな話をしていたような気がする。

 尾堂をスタイリッシュなイケメンと評すならこちらはワイルドなイケメンが適切だろう。

 高い美容院に通っているのが俺でも分かる短めに整えられた髪型は、暑苦しすぎず適度に爽やかだ。

 一方、話し掛けられた二人の反応は顕著だった。

 リア充というのは空気を読むことが必須の職業だ。

 故に自分より、上位の者が「YES」といえば空気に従ってそれに同調する。


「まぁ、渚君がそういうなら……」


「う、うんそうかも。平気だよね……」

 

 馬鹿らしい。


 自分の意見を他人に委ねる、それは自分を機械にすることと大差ない。

 いくら俺が青春を送りたくても機械にならなければ送れないものなんて俺は青春と呼びたくない。

 俺が送りたいのは、もっと別の青春だ。

 機械になるぐらいなら二十八人から振られた方がマシだ。

 ……いや、天方から振られたら退学だからマシもクソもないけど。

 ……さすがに退学は嫌でございます。


「だよね、ナギナギ! じゃあ話してくるね!」


 鶴の一声ならぬ、水原の一声により止める者がいなくなった真白さんは真っ直ぐに直進して天方の方へと向かう。

 青春育成科といえども教室の広さは普通の高校と変わらないので、ものの五秒足らずで真白さんは天方の前方にたどり着いた。


「あの、雨片あめかたんだよね!」


 ……って、出だしから名前間違えてんじゃねーか!

 という風に、何も知らない俺が見たら思わずツッコミを入れてしまう所だが、これは真白さんの責任ではない。

 一応、言っておくと作者の打ち間違いでもない……ん?俺は今、一体何を……

 ともかく、これで通常なのだ。

 その理由は先ほどの自己紹介にある。

 例の自己紹介を言い終えた天方は堂々と、黒板に『雨片冬華あめかたとうか』の文字を書いた。

 一瞬、天方自身の書き間違えを疑ったが、そうではないことは様子を見ている椿先生の落ち着きぶりで分かる。

 その瞬間、俺はこれが椿先生の考えていた対策ということに気が付いた。

 まだ本人から直接聞いたわけではないので絶対とは言い切れないが、恐らく間違いないだろう。

 しかし……いくら騒ぎになる恐れがあるといっても偽名まで普通使うか?

 さすがに思いつかなった。てか、思いつくヤツいないだろ……。スパイ映画とかでしか見たことねぇし。

 そんな経緯で現在。

 真白さんが、天方を雨片と呼ぶことに疑問はない……ないんだけど、うん、やっぱり気になる。

 ……絶対、違う名前にしたほうがよかっただろ。

 もう、ほとんど元の名前の当て字じゃねぇか!


「……ええ、合っているわ。でも、その前に自分の名前を言うのが筋じゃないかしら。最低限の礼儀も知らないの?」


 偽名使ってる時点で礼儀もクソもないだろ、と思わず言いそうになったので口を慌てて噤む。

 人の口から発したとは到底思えない温度の低さ。

 こいつの中身がドライアイスって言われても驚かない自信がある。

 だが、そんな素っ気ない対応の天方にも真白さんはめげずにコミュニケーションを取ろうと笑顔のまま食らつく。


「あ! そうだよね、ごめん。私、雨片さんと話すのが楽しみで舞い上がってたみたい! 私の名前は真白鏡音。呼び方は好きにしていいよ!」


「そう……それで真白さん」


「うぐ、クラスで苗字呼びが二人目になるとは……まぁ、いっか。どうしたの?」


「あなたが話し掛けてきたんじゃない。何か私に用事があったのではないの?」


「うん! あ、でも用事じゃなくて。普通に喋りたかっただけだよ、アメっち!」


「……アメっち? それは私のことかしら」


「うん! そうだよ! 珍しいよね雨片って。あんまり聞いたことないし。可愛いと思って! もしかして嫌だった?」


「別に嫌ではないけれど……そういうのは確認してからにしてほしいわね」


「あ、ごめん! 雨片さん、アメっちじゃだめ?」


「はぁ…………別にかまわないけど」


 重めの溜息をつき、眉間を抑さえる。

 だが正直、この状況でその仕草をしていいのは逆の立場だと思う。

 こいつ……男だけと思ったら全人類に対して厳しいのかよ。椿先生と普通に話してるのを見て油断してたわ。

 確かに、いきなり「お前」とか呼ばない辺り多少は配慮してるんだろうが、その他が残念過ぎるから無効だ。無効。

 だが、そんな態度の天方を目にしても真白さんは笑顔を一切曇らせることなく、逆に瞳をキラキラと輝かせる。

 もう、真白さんが天使過ぎてツライ。この子を冷たく出来るなんて天方は悪魔か⁉

 悪魔だな。考えなくても分かります。この女間違いなく悪魔です。


「話はそれだけかしら。ならそろそろチャイムがなるから席に座ったらどう? 始まるまであと一分もないわ」


 淡々とした口調で話す天方。

 なんか話す前よりやつれている気がする。

 悪魔に天使の笑顔は効果抜群のようだ。


「あ、ほんとだ! ありがとねアメっち! 私、そろそろ席に戻るね。じゃあね!」


「……クラスは一緒なんだから、別にそこまでする必要はないと思うのだけれど」


 自身の机に戻る途中で振り返った真白さんが「また後で話そうね!」と言っていたのを流し目だけで天方が確認し、スルーというクソ対応をしながら読みかけの教科書を閉じた。

 ……本当にごめんね、真白さん。とりあえず天方には後で説教しよう。

 心の中で謝罪しながら、起き上がる。

 自身の頭の重みによって止められていた血液がの流れが、再び元の速さに戻る。

 青白い腕。なんだかゾンビって言われるのが自分でも納得できそうで怖い。

 俺は人間だ!多分!きっと!あんまり自信ないけど!

 ……俺、人間だよな?

 

「美少女転入生……男嫌い……クール系……天と同じくらいキャラ立ってるな!」


 いつの間にか隣に立っていた紫藤のキモイ戯言を無視して教科書を準備する。

 その様子を見ていると無性に溜息を出したくなる衝動に駆られるのでやめてほしい。

 

 ……俺の周りって変人しかいなくない?

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