第4話 今後の方針

 俺はシロ(白い犬だからシロと呼ぶことにしました)についていくと湖に着いた。

「ここに居るのか?」

 そう尋ねるとシロと子犬のユキ(シロから連想してユキになりました)は俺を見ると頷き、対岸を見つめる。

「向こうに居るのか?」

 そういって対岸を見つめると水浴びをしている女性と彼女を少し離れた場所から見守るクロ(黒いからクロと……以下略)と子供のオニキスとカラス(クロから連想して……以下略)が居る。

「なぁ……。彼女クロ達に気づいて怖がってないか?」

 死を覚悟したような顔でクロ達を見つめながら、身を清めるように水浴びをしている。

「はぁっ、もう見てられない……」

 そういって俺はシロ達と一緒に対岸にむかうことにした。


「もう諦めました。どうぞお召し上がりください」

 対岸にたどり着くと身を清め終わったのか裸のままクロ達の前に横たわり、死を覚悟した女性が居た。

「ク~ロ~、ダメだからな? 俺はお前らに人を食わせるために救ったんじゃないからな?」

 そういうとクロ達は俺の言葉を理解しているのか頷いてシロ達のところに戻る。

「貴方はさっきの……。そうですか、貴方もさっきの男達と同じで私を性奴隷にするつもりなんですね? いいですよ……。もう考えたくないです」

 そういって彼女は顔を隠して起き上がらない。

「いや、そんなことしないぞ? 天は人の上に人を作らず。俺達は対等な立場だろ? 単純に君が心配だったからクロ達に護衛させていただけで食おうなんて思ってないよ、まして性奴隷とか何処のファンタジーだよ」

 俺は笑いかけながら羽織っていた上着を彼女に掛ける。


「どうして? どうしてこんなにも醜い私のことを気にかけてくれるんですか? 私みたいな醜い女じゃなくたって選びたい放題なのに……。そんなことされると誤解しちゃいます」

 泣いている顔を見られたくないのか腕で顔を隠しながら隣に座る俺に尋ねてくる。

「どうしてって……。困っている人を助けるのに理由なんて必要なのか? 両親が事故で死んで一人で生きていくと塞ぎ込んで泣いていた俺を救って育ててくれたのは近所に住む幼馴染の両親と妹の様な幼馴染だった……。親戚は助けてくれなかったのに赤の他人だった義父さん達は俺のことを本当の家族の様に迎え入れてくれた。だから俺が赤の他人の君を助けるのに理由なんかいらないと思うよ……。それに君が思うほど君は醜くなんかないと思うよ?」

 そういうと隣に横たわる彼女の頬から涙が頬を伝っていた。

「そんなに優しくしないでください……。私、ハーフなんですよ? 顔だって醜いし……。心の狭い女なんですよ? 誤解して貴方のことを好きになって束縛しちゃうかもしれませんよ? それでも優しくしてくれるんですか?」

「束縛はちょっと嫌かもしれないけど嫉妬ぐらいなら可愛いと思うよ?」

「返却は一切受け付けませんよ?」

「返却って……。君は物じゃないんだから君のことは君の意思で決めなさい」

「それじゃあ、ハーフの私に優しくしてくれる物好きは貴方しかいないので貴方のお嫁さんにしてもらうまで地獄の果てまでついて行きます」

「それって結婚したらどうなるの?」

「子供を作って幸せな家庭にします」

「そっか……。分かった。でもお互いのことをまだよく知らないから一緒に生活するところから始めようか」

「えっ……、わっ、分かりました。不束者ですが、よろしくお願いします」

「こちらこそよろしく……。え~っと……」

「ラピスです」

「そっか、俺は鹿野 零児 レイジって呼んでくれ」

「分かりました。レイジさん、よろしくお願いします」

「こちらこそよろしくラピス」

 異世界に転生した日。それは俺に嫁(仮)が出来た日でもあった……。


「おはよう、起きてレイジ」

 そういって俺の身体を揺すって起こしてくれたのは昨日、俺の嫁(仮)になったラピスだった……。

「夢オチじゃなくて本当に異世界なんだな」

 淡い期待は脆く崩れ去った。

 目を覚ますと窓や戸が壊れたボロボロの小屋の中に居た。

「おはよう、レイジ。朝ご飯用意してあるから一緒に食べよう」

 ラピスの方を見ると樽の上には綺麗な焼き目が付いた魚が食器代わりの板の上に並べられていた。

「朝ご飯って言っても湖でシロとクロが捕まえてきてくれた魚を調理しただけなんだけどね」

 樽の上には焼き魚の他に大きな葉に包まれ蒸すように焼かれた魚や刺身の様なものもあった。

「ありがとう。朝から大変だったでしょ?」

 そういってラピスと一緒に朝食をとる。

 魚は鮭と同じ様な味がして不思議と涙が溢れてくる……。

「えっ、もしかして不味かったですか? どうしよう……。お水飲みますか?」

 慌てた様子でラピスは水を差し出してくるが俺は首を横に振ってラピスを見つめる。

「不味かったんじゃないんだ、なんだか懐かしくて……。義父さん達と別れるまではいつも家族そろって朝食を食べていたから……。それにこの魚はよく食べていたから」

 昨日、この小屋を見つけた後、それぞれの出生を話した。俺は異世界からの転生者ではなく田舎に住んでいたことにして親は事故、義父さん達は盗賊に殺され死別したことにしてある。

「そうだったんですか……。でも、これからは私がレイジのそばにずっと居ます。これからは2人で力を合わせて頑張りましょう」

 そういってラピスは俺の手を握って、見つめてくる。

 

ラピスは人の父とエルフの母から生まれたハーフエルフで人間からもエルフからも忌み子として扱われ、両親が亡くなって身を寄せたエルフの隠れ里では山賊への贄に有無を言わさず選ばれたようだ……。

 他にも、田舎に住んでいて世界情勢に疎いから教えてもらった。

 この世界は魔族・亜人種・人間の3種族の国があり十年前から国同士の戦争が起こっている。そして拠点にしたこの泉は3か国の丁度真ん中にある。


「ねぇ、聞いてるの? お~いレイジ」

「あぁ、うん聞いてるよ」

 ボーっとしちゃってたな……。このあと、どうするかってことだよな?

「じゃあ、このあとどうするか考えてくれた?」

 うん、間違ってなかったみたいだ。どうするか……。とりあえず生活の拠点であるこの小屋を改善しないとマズいよな? 冬がこの世界にあるかは分からないけど、このままだと確実に風邪ひく……。


「生活の拠点になるこの小屋をもう少し快適な環境にしたいよな……。その為に何が足りてないのか小屋を綺麗にして確認しよう」

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Re:Life-異世界転生したら全ての言語が分かるようになり仲裁役に抜擢されてしまった!- 兎神 入鹿 @Destiny

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