第2話 これが俺の高校生活
突然だが俺はハーレムが苦手だ。
女性に苦手意識はないが、やはり集団の中で男一人というのは心苦しい。
一人くらいは男子の友人を作りたいのだが、男子はみんな俺を敵視している。理由は簡単、美優が俺を求愛しているからだ。
美優は学校でも有数の美少女で同性からも人気が高い、ラブコメのテンプレ的存在。そんな生徒から好かれているとなれば、敵視されるのは致し方ない。
「雄輝、暇だから相手してー」
当の本人は呑気に俺に抱き着く。人目を
「いきなり抱き着くなよ。もうホームルームだぞ」
「じゃあ『愛してる』って言ってよ!」
意味が分からん。つーか、この
チャイムが鳴り、担任が教室に入って来た。俺たちを見て不快そうに眉根を寄せる。
「おい竹内、人前でじゃれつくな。席に着け」
「じゃれついてません! イチャイチャしてるだけです!」
意味一緒だしそのツッコミはおかしい。ただ美優は本気らしく鋭い目つきで担任を睨んでいる。
担任はその形相に
「……三分だけなら許す」
許すなよ。教師が生徒に負けてどうする。
美優は成績優秀で運動神経もよく、傍から見れば才女のように見える。が、俺がからむと途端におかしくなる。
人前で平気に俺に抱き着いて来たり、さっきみたく教師を怯ませたりするのは珍しくない。
昼休みになり、俺はふぅ、と息を吐いた。この時間が待ち遠しかった。
「雄輝、一緒にご飯食べよ」
美優が自分の椅子を俺の席まで持っていき椅子に腰掛ける。そこに弁当箱を持った萌絵がやって来た。
「お兄ちゃーん! 一緒にご飯食べよー!」
萌絵は空いている席を探しているのか、教室に入ってからずっときょろきょろしている。かと思うと、いきなり俺の太ももに座りだした。
「萌絵、ここは椅子じゃない」
「いいじゃん。ふかふか~」
周りの視線が俺に集中する。特に男子からの視線は殺意があってかなりキツイ。そこにまた一人の来客。
「雄輝、一緒にご飯食べない?」
教室のドアがガラリと開かれ姉貴が入って来た。だが俺の姿を見て驚愕し、右手に持っていた弁当を落とした。風呂敷に包んでいなかったので中身が床に散乱して悲惨なことになっている。あんたよく物落とすね。
「も、萌絵、一体何を……」
「え? お兄ちゃんに座ってるだけだよ?」
萌絵はこともなげに言った。姉貴はわなわなと体を震わせこちらに歩み寄ってくる。顔が近い……。
「あなた、これはどういうこと? 事情を説明してもらおうかしら」
なんで浮気した夫に詰め寄る妻みたいな言い方してんだよ。俺は内心でそうツッコミながら姉貴の質問に返答した。
「萌絵が勝手に座って来ただけだ。それ以外に言うことはない」
「あなた……冷たいわね。小さい頃は私によく抱き着いておっぱい吸おうとしてたのに……」
したことねぇよ! ああ、もう! 教室がざわついてる。姉貴が一番タチ悪いな。掃除もしなきゃなんねぇし……。美優は驚いた顔で俺に訊いてきた。
「雄輝、今の話本当?」
「違う。姉貴が適当な事言ってるだけだ。無闇に信じるな」
「母性本能~!」
姉貴はガクリと肩を落とし、
昼食を食べ終えると美優は自分の席に戻り、俺は勉強を始めることにした。
「萌絵、勉強するからそろそろ降りてくれ」
「勉強? 私にも教えて」
「どの教科だ」
「全部!」
「悪いが全ての教科を教える時間はない。せめて一つにしてくれ」
「分かった。……じゃあ、保健」
そこは普通国語とか数学だろ。なぜ保健なんてマニアックな教科を選んだ?
「保健なら姉貴に教えてもらえ。俺より詳しいから」
「一回教えてもらったことある。でも、お姉ちゃんの言うこと難しすぎてよく分かんなかった」
いったい何を教えたんだ? 絶対まともなことじゃない。
「なんかね、『本当は十八歳未満の人は知らない方がいい』って言ってた」
それ十八禁じゃん! 何考えてんだ姉貴。
「私、十五歳で知っちゃった。えへへ」
「喜ぶな。今すぐ忘れろ」
「覚えたらダメなの?」
俺はとりあえず頷いた。知らなくても生活に困ることはない。むしろ知らない方がいい。
放課後、帰宅部の俺は教室を出て萌絵と一緒に昇降口に向かう。姉貴は夕食の準備があるので颯爽と帰っていった。ちなみに美優は文芸部に所属している。得意ジャンルはラブコメらしいが読んだことはない。
「お兄ちゃん、帰ったら何する?」
二人で通学路を歩いていると萌絵が話しかけてきた。俺のやることはだいたい決まっている。
「勉強」
「むー、お兄ちゃん勉強ばっかり。ちょっとは私と遊んでよ」
今日の朝遊んでやっただろ。これ以上何で遊べと言うのか……。
「チューごっこ」
それただのバカップルじゃねぇか。無論断る。
俺は家に着くまで萌絵の話に付き合い、家に帰ったときにはすでに夕飯が出来上がっていた。
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