第2話 第二の人生

「………あれ…」

目が覚めた。

そこには見慣れたものがたくさんある。

「あれ…これ…俺の部屋じゃん。」

と。

ピリリリリリリリリ――

スマホが鳴っている。

目覚まし…?

いや、違う。

電話だった。

「もしもし?」

『あ、クオーツ君?起きた?』

「あ、豊穣神様?」

『そうだよ~この電話番号登録しておいてね』

「はいはい」

『はい、は1つでいいの!』

「はーい…で、なんの用ですか?」

『ん?なんでもないよ?声を聴きたくなったからかけただけだよん』

可愛い…。

「そうですか…」

『あ、そうそう。スマホにマップ機能あるでしょ?』

「あります」

『この世界のマップになってるから。道に迷ったらちゃんと見るんだよ?』

「了解です。」

『それから、創ちゃんからの伝言。幼馴染に電話しておけってさ。』

「はは…わかりました。」

『それじゃあね』

「はい。それでは。」

ピッと。電話を切る。

すると―

頭の中で声がした。


<ピーッ…ピーッ…>


なんだこの音。

機械音か…?


<ピー…あーあーあーあー。只今声のテスト中、只今声のテスト中―>


お、女の人の声…?

どういうこと…?


<コホン。初めまして、マスター。私がアシストです。>


あ、アシスト…?

創造神が言ってたのってこれか…


<早速ですがマスター。私に名前を付けてください。>


「え。名前無いの?」


<はい。>


「うーん…いきなり言われてもなぁ…」

どんな名前がいいんだろう…。


そして、悩みまくった結果。


「カフラっていうのはどう?」


<カフラ…でございますか?>


「ああ。特に意味はないんだけど…」


<いえ、大丈夫です。ではマスター。目を瞑ってください。>


「はぁ…」

俺は言われた通り、目を瞑った。

「もう大丈夫ですよ、マスター。」

ん?

あれ。さっきまで頭の中で声が聞こえたはずなのに。

頭の中じゃなくて、普通に聞こえる…

俺は恐る恐る目を開けた。

そこには。

桃色の髪の毛に黄色の目をした1人の少女の姿が。

「えーと…?」

「さて。こっちの方が話しやすいでしょう?マスター。」

「え?ああ、うん。」

よく見ると…美少女だよな…

可愛い。

「どうしました?マスター」

「え?ああ、いや。なんでもない。」

「そうですか」

「あ、そうだ。他の部屋も見てみよう」

「そうですね」

そう言って、部屋を出た。


「かなり広いな…」

想像以上に広くて、正直驚いている。

部屋の数も多い。

「とりあえず、隣の部屋を物置にして…1番大きい部屋はリビング、残った部屋は客間だな。」

よくよく考えたら、知り合いが誰もいないこの世界。

客間なんて必要あるのか…?

「マスター。」

と、カフラが。

「私にも部屋をください。」

「部屋を?」

「はい。」

「いいよ。じゃあ、俺の隣の部屋を使って。物置にしようと思ってたけど…まぁいいや。」

「ありがとうございます、マスター。」

「おう。俺はもう少し部屋を見てくるよ。」

「では私は部屋に。用がありましたら、来てください。」

「了解。」


「いや~やっぱいいなぁ…この部屋。創造神に感謝だな。」

本当に快適な家である。

お風呂は露天風呂とサウナ付き。

1番大きい部屋には元からテレビがある。普通に見れた。

和室もある。

最高すぎる。

「あ。そういえば、凪に電話しろって言ってたな…」

正直言って、嫌な気持ちである。

死んだ人と電話している訳だし。

まぁでも…

悲しむ凪の姿も見たくないしな。

「えっと…確か凪の電話番号は…っと。これで…本当に…」

ピリリリリ―


■■■■■■■■■■■■■■■■■


ピリリリリ―

「あれ?非通知…?誰からだろ。一応出てみよ…」

私、九涌くわくなぎは恐る恐る電話に応答する。

「もしもし…九涌です…」

『あ、も、もしもし…?』

………………………え?

電話越しから聞こえた声は、聞きなれた幼馴染の声。

本来、ここにいるはずのない人からの電話。

でも…声を聴けて安心する私がいる。

「あ、あなたは…誰…?」

本当に本人なのか確かめる。

『は、ははは…。本当に凪は疑い深いなぁ…。俺は福乃河ふくのかわ幸鳴ゆきなりだよ。。』

今は違う…?

「本当に…幸鳴なの…?」

『ああ。幸鳴だよ。』

「うっ…幸鳴…ごめん…ごめんね…」

気付いたら私は泣いていました。

好きな人からの電話で。

もう顔を見ることも、声を聴くこともできないと思っていたのに。

今、こうやって好きな人と電話している。

嬉しい。

この涙は、きっと嬉し泣きだ。

「ねぇ…凪?なんで泣いてるの?誰と電話してるの…?」

と、私の友達の姫福きふく輪守良わすら

黒髪のポニーテールに紺色の目。

クールな幼馴染である。

幸鳴のことも知っている。

しかし―

話している場所が悪かった、と後悔している。

私は今、学校にいて。

ちょうどお昼休みで。

クラス全員が泣いている私を見ている。

自慢でもないが、私はクラスの中で1番人気である。

そんな人が泣いていたら。

どうなるか。

察しがつく。

『あれ…?凪?もしもーし?』

「幸鳴の…」

『ん?』

「幸鳴の馬鹿ああああああっ!!!」

『えっ!?ちょっ―』

そのまま切った。

「ねぇ…凪。今の電話…」

「きっ、気にしないでっ!」

と。

クラスの男子が。

「「「なっ、凪さぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!誰からの電話ですかああああ!!??」」」

「凪さんを泣かせるやからはどこのどいつじゃああ!!!」

「探せ!!今すぐ!!」

「探すぞぉぉぉ!!!!」

「凪さんを泣かせた奴は粛清だぁぁぁ!!!!」

私が泣いただけでこれである。

私は深呼吸して―

「みんなストーーーーップ!!!!」

と、叫んだ。

その叫びでクラスの男子たちは静まる。

「で、ですが…」

「凪さん…」

戸惑う男子。

「なんでもないから大丈夫!!みんなごめんねっ!」

「な、凪さんがそう言うなら…な?みんな!」

「「「そうだなっ!!」」」

元に戻った。


少しして、輪守良が声をかける。

「ねぇ…凪。さっきの電話って…誰から?」

「…幸鳴…から。」

「え…うそでしょ…?」

「ほんと…非通知からだけど…」

「そっか…よかったね。凪。」

「うん…」

唯一本音で語り合える輪守良との会話は終わった。


■■■■■■■■■■■■■■■■■


「………。」

怒られた。

悲しい。

「はぁ…なんで切るんだよ…凪…」

久しぶりに聴いた凪の声。

その声は、やっぱり…動揺しているように聞こえた。

「どうしました?マスター。元気ないですよ?」

「ん?そうか?」

「はい。さっきよりも。」

「そっか…」

「話なら…聞きますよ?」

と言ってくれたので、俺は話した。

「マ、マスター…私が慰めてあげましょうか…?」

「え、ど、どうやって…」

「その…カ、カラダで…?」

え…。う、うれしいけど―

「却下。」

「そうですか…まぁ、でも…元気出してください!マスターには私がいますから!」

「ありがとう。カフラ。ちょっと元気出たよ」

「お役にたててうれしいですっ!」

カフラのにっこり笑顔。破壊力ありすぎです。


そういえば、俺の能力ってなんだろ…

「なぁなぁカフラ。俺の能力ってなにかわかるか?」

「ちょっと探しますね。ちょっと目を瞑ってください」

俺は目を瞑った。


<もう大丈夫です。目を開けてください。>


頭の中からカフラの声が聞こえた。

どうやら目を瞑れば中に出入りできるみたいだ。


<検索中…マスターの能力…>


「どうだ?あるか?」


<はい。ですが…能力名がありません。>


能力名がない…?

「そ、それって…?」


<名前を付けてください>


名前か…

「どんな能力なんだ?」


<…折り紙で攻撃したり、防御したり…命を宿すことができる能力…でございます>


折り紙か…確かに俺は折り紙が趣味だ。

いろんなものを折って、作っていた。

「うーん…どういうのがいいんだろ…能力か…」

能力の名前なんて考えたことがないからな。

適当でいっか。

「そうだな…折紙操作おりがみそうさとでも名付けるか。」


<折紙操作…登録しました。マスターの能力はこれより折紙操作となります。>


「お、おう…で、どうやって使うんだ?」


<まず、頭の中で作りたい折り紙の作品を考えてください。>


作りたい作品か…

手始めに鶴にしよう。


<では次に、折り方を考えてください。>


折り方か…鶴は確か…三角に折って…もう1回三角に…そのあとに開いて潰して…反対側も同じことをして…折り目を付けて、花弁折。あとは中央に向かって折って…中割折り。それで完成だ。


<では、手のひらを上に向けて―完成した作品を手の上に出すようなイメージでやってみてください。>


やってみてくださいって…

じゃあやってみるか…

手のひらを上に向けて、手の上に出すイメージで…

と―

手の上で半透明の鶴が出てきた。


<成功です、マスター。それに飛べって言ってみてください>


「鶴よ。飛べ!」

すると―

フワフワと。

飛び始める。

「おお…すげえ…」

思わず声が漏れる。

【初めまして。ご主人様。私を作ってくれてありがとうございます。】

ん?

なんか声が…?

「あ!もしかして…さっき作った鶴か…?」

【そうでございます。】

そっか。命が宿るんだもんな。

「じゃあよろしくな。んーと…名前…クレインでいいかな?」

【はい。よろしくお願いします、マスター。】

「あ、自由にしてていいからな」

【了解です。】


<マスター。私のことを忘れてませんか?>


「ん?ああ、カフラ。ごめんごめん。」

カフラが少し怒ってる。嫉妬だったりして。


<ではマスター。次にユニットを作りましょう>


ユニット?

「なにか役立つの?」


<戦う時に使えます。>


おお!まじか。

戦闘用なのね。


<さっきと同じようにやってください>


よし。なに作ろうかな…

辻風つじかぜにでもするか。

「辻風…辻風…これでよしっと。」

そのあと、さっきと同じように手のひらを上に向け、手の上に出すイメージする。

しかし―

「あ、あれ?」

手の上にあるのは、辻風となる1パーツである。

「ねぇカフラ、このあとどうするの?」


<パーツを複製します。そうですね…ざっと100個ぐらい。>


ひゃ、100!?

「いやいやいやそんなに使わないよ?」


<残ったらストックします。>


なら安心だ。

「えーと…パーツ複製!100ピース!」

と。手のひらにあった1つのパーツが一気に100個になった。

俺はそのパーツで、辻風を作った。

「できた…」

残ったパーツは、体の中に戻す感じで…っと。できた。


<ではマスター。ターゲットを設定して、辻風と言って下さい。>


ターゲット…

そうだな…

「ターゲット、自分を中心とした半径100m以内にいるすべての虫。辻風、起動!!」

結構かっこつけて言ったけど…これでよかったのかな…

そう思った瞬間。

手に持っていたユニット、辻風から不可視の刃が出る。

その刃は俺の言った通り、俺の半径100m以内にいるすべての虫を切りつけた。

正直言って、気持ち悪い…

「でも…これいいよな。もっと試そう。」


そのあと、俺はいろんなユニットを作って自分が使えるものを増やしていった。

第二の人生1日目は、幼馴染との電話と能力の練習で終わった。

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