第3話 迷子

さて。疲れたな…。

こういう時はお風呂に入るのが1番だよな。

俺は風呂場に向かった。

更衣室で服を脱いでいるとき、カフラから。


<あの…マスター、出してください。>


「え…?どうしたの?」


<いくらマスターでも…その恰好かっこうされると…その…恥ずかしいです。>


俺は今、裸である。

カフラにとって、頭の中からでも恥ずかしいだろう。

「あ、ごめんごめん」

そう言って目を瞑った。

「マスターもういい大丈夫ですけど…」

「ん?」

「か、隠してください…」

「あ…」

俺はすぐにタオルで隠した。

「ごめん…」

「……お背中流しましょうか?」

「いや、いいよ」

結構だめだから。それ。

俺の理性が暴走するとこだった。

「そうですか…では、ごゆっくり。」

ちょっと悲しそうな顔をするカフラ。

今度…頼もうかな…。


お風呂から上がった。

外はもう真っ暗である。

星空を見たいなと思い、外に出ようとすると―

「マスター。外に出るのはおやめください。」

カフラからの忠告が。

「どうして?」

「夜は、魔物の行動が活発になります。魔物は、人を食料とすることもあるので、大変危険です。」

おいおい。人を食べるのかよ…。

「能力でなんとかなるんじゃ…」

「…危険な目にあっても知りませんよ?」

怖くなってきた。

やめておこう。

「じゃあ…どうしよ…なんもすることない…」

暇になった。

「なら、少し勉強しますか?この世界について。」

この世界についての勉強…か。

ま、悪くないかな。まだ来たばっかりでよくわからないし。

「じゃあ、お願いしようかな。」

「マスター。ステータスというのはご存知ですか?」

「ステータス?えーと…自分のレベルとか?」

「まぁ…そんな感じです。ちなみにマスターのステータスは―」

と、俺のステータスを見せてくれた。


【アルライト・リスタル・クオーツ】

Lv,?

〖特性〗…豊穣

〖能力〗…折紙操作

スキル〗…ワープ、暗視、トラップ全回復オールヒール

〖加護〗…創造と豊穣


「ねぇ、カフラ。なんで俺のレベルが『?』なの?それと、特性とスキルってなに?」

「そうですね…まず、マスターのレベルが『?』なのは、非公開っていうだけです。」

非公開…ねぇ…。

「それで、特性とスキルっていうのは?」

「特性はランダムです。スキルは誰でも使えるような魔法です。」

魔法か。

異世界っぽいな。

「それにしてもマスター。なんで2つも加護があるのですか?」

「あ…」

言えない。

創造神と豊穣神様からの加護なんて言えない。

「創造は…創造神様、豊穣は…豊穣神様…?」

……

なんて勘がいいのだろう。

「そうだよ。俺は2人の神様の加護を付けてもらった。」

「…おかしいです。」

「なんで?」

「普通、そんなこと絶対にないです!異常です!異常イレギュラーです!!」

「そんなに…?」

「そんなに、です!!通常の人なら、加護は1つか加護ナシが普通です!!加護が2つなんておかしいです!」

「そ、そうか…あ!カフラのステータスは?」

「さらっと話を変えないで下さい。私のステータスは…」

これです、と。見せてきた。


【カフラ】

Lv,100

〖特性〗…反撃カウンター

〖能力〗…補助アシスト

スキル〗…結界、超回復、身体強化、ワープ、マルチコピー

〖加護〗…なし


いろいろ突っ込みたい。

まず、Lv,100って…おいおい…。

加護はないけど…

それ以外はチートじゃない?

特にスキル!!

最後に書いてあるマルチコピーってなに!?

「なぁカフラ。マルチコピーってなに?」

「そうですね…簡単に言えば相手のスキルをパクることができるスキルですね。」

もうわけわかんね。

スキルをパクることが出来るのはいいよ?

でも、能力までパクるっていうのは…ちょっと…。

チートだよね。

「どうかされました?」

「いや、カフラのステータスが異常だったから。驚いただけ。」

「異常?これのどこがですか!?」

「マルチコピーがあることだよ!!」

「こんなの普通です!!」

「嘘だ!」

「ほんとです!」

「嘘だぁぁぁぁ!!!」

「ほんとですううう!!!」

「なにこの言い争い。」

「ほんとに。」

俺とカフラは笑った。

「カフラ。他になにかあるか?」

「そうですね―人種ですかね。」

「人種?妖精とか?」

「そうですね。」

カフラの話によると、主な人種は―

人間、機械、妖精、巨人、天使、悪魔、吸血鬼、鬼、動物。

この9種類である。

「なるほど…ありがと。カフラ。」

「いえいえ。」

「それじゃ、眠ろうか。」

「そうですね。」

「じゃ、おやすみ。」

「おやすみなさい、マスター。」

俺とカフラは眠りについた。


翌朝。

「おはよ、カフラ。」

「おはようございます、マスター」

「あ、カフラ。ちょっと俺出かけてくるよ。」

「どこに行かれるのですか?」

「近場だよ。」

「……」

「どした?」

「マスター。私も連れて行ってください。」

「どうして?」

「ついて行きたいからです。」

「まぁいいよ。」

「ありがとうございます。」

よし。

森に行こう。


歩き始めて数十分。

道に迷った。

「なぁ、カフラ。ここどこ?」

「………さぁ」

困ったもんだ。

迷子センター…なんてないか。

よし。こうなったら、探検だっ!

「余計迷いますよ?マスター。」

ま、まぁ、最悪能力使うし。大丈夫。

またしばらく歩いた。

すると、どこからか声が聞こえる。

「…?カフラ。声聞こえない?」

「…。聞こえますね。」

「行ってみるか。」

「はい」

俺とカフラは声の主を探すことにした。

「この森…結構怖いな。」

「そうですね…」

木の葉っぱでほとんどが日陰になっている。

涼しいけど、夜は絶対に真っ暗なはずだ。


声の主を探すこと数分。

「見つけた。けど―なんか絡まれてないか?」

声の主は少女だった。

髪の毛は金髪で、目は黄色。だいたい10歳ぐらいだろうか。

ただ―

誰かに絡まれている。

そのせいか、怯えている。

「助けに行きますか?」

「行くに決まってるだろ。」

「了解です」

俺は勇気を振り絞って言った。

「おい!!何をしている!!」

叫んでやった。

当然、相手は驚いた顔してこちらを見ている。

少女も見ている。

「あぁん?こいつはな、俺らのシマに入ったんだ。それに女だからな。奴隷にするんだよ。」

奴隷…?

最低最悪な奴らだな。

「どうすればその子を解放してくれるんだ?」

「そうだな―そこの女をこちらに寄越せ。」

と、カフラを指さした。

「マスター…?」

俺はカフラに小声で作戦を言った。

「カフラ。よく聞いてくれ。まず、お前をアイツに渡す。そのあと、あの子がこっちに来たら、俺の中に入れ。そうすれば問題ない。」

カフラは少し考えて―

「了解です」

と言ってくれた。

よし。あとはこの作戦が上手くいくかどうかだ。

「お望み通り、コイツを渡してやる。だから、その子をこちらに―」

遅かった。カフラがさらわれた。

なんとなく気づいていた。

カフラを渡すと言った瞬間、ニヤリと笑ったからだ。

クソッ!!!

「カフラ、入れ!!」

「させねぇよ」

と、もう1人が俺を取り押さえる。

動けない…

「どう足掻いたって無駄だよ。」

どうする…どうするどうする…!!!

こんなんじゃ、少女を助けるどころか、カフラを失ってしまう。

どうすれば…

「マスター!!」

カフラッ!!??

「お前は黙ってろ」

カフラが気を失うところが見えた。

能力…スキル…特性…加護…

能力?

そうだ!能力だ!!

いや、でも…何を使う…?

考えるだけ無駄だ!!

とりあえずここは―

「せ、旋風っ!!!」

唱える。

【旋風、発動シマス。】

俺を中心に、大きい竜巻が起こる。

俺を取り押さえていたやつは吹っ飛ぶ。

「よし。自由になった。」

あとは、カフラと少女を助けるだけだが…

姿が見えない。

「チッ、逃げたか。」

逃げられた。


「ペガサスッ!!!」

翼が生えた白馬。

俺が作った、折り紙の作品だ。

「手を貸してくれ。」

ペガサスはうなずいてくれた。

森でこんなに迷うなら、空から探すだけ。

まだ近くにいるはずだ。

ビンゴ!

見つけた。

俺はすぐに考え―

「ビアノット!!」

唱える。

【ビアノット、発動シマス。】

ビアノットは主に重力を操る。

それで相手の動きを止める。

「ペガサス。降りてくれ。」

ペガサスはゆっくりと地上に降りた。

「ありがとう。」

そしてペガサスは―消える。

悲しいが、役目を終えたら消える設定になっているのかもしれない。

ま、いつでも作れるからいいけど。

「さて。カフラとその子を放してもらおうか。」

「ク、クソッ!動くな!!」

ナイフをカフラの首に突き出す。

物騒だな…。

そういえば、能力って口に出さなくても心の中で唱えても出るんだったな。

よし。

「よーし…。そのまま両手を上げろ」

ターゲット、自分を中心とした半径200m以内にいる、俺以外の男全員。

「そのまま後ろを向いて、振り返らずに走れ」

「辻風」

唱える。

【辻風、発動シマス。】

不可視の刃が男を切りつける。

いろいろとヤバいけど、仕方ないよね。

コイツが悪いんだから。

とりあえず、この少女を保護しないとな。

「大丈夫?」

「……」

「けがはない?」

「……」

「仲間はいないの?」

「……」

無口だな。

「まったく…とりあえず、俺の家に来るか?」

「マスター。道に迷っているのでは?」

「あ」

察し。

「……ふふっ」

と、初めて少女が笑った。

「大丈夫?」

「……」

「けがは?」

「……」

「よし、来い。」

「!?」

「あ、勘違いするなよ?俺は決してあいつらのグルじゃないから。ただの通りすがりだ。」

「……」

少女は安心したのか、気を失った。


「それでマスター。どうやって家に帰るんですか?」

「それなら大丈夫だ。」

「?」

俺は1つ、ユニットを出して―

「はばたきっ!!」

唱える。

【はばたき、発動シマス】

ユニットから羽が出てくる。

まるで、天使のような。

「よし。はばたき、付与。対象、カフラ。」

すると―カフラの背中に羽が生えた。

「わわわ…マ、マスターこれ、どうするんですか?」

「まぁ、いい。ついてこい!」

俺は少女をお姫様抱っこして、空を飛ぶ。


「あ、あったあった!はばたき作っておいてよかったぁ…」

「やりましたね!マスター!」

空を飛ぶこと約30分。

無事に家を見つけて、

ようやく帰ることが出来た。


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