楽しくのんびり異世界生活

クオーツ

第1話 死んで―生き返る。

俺は福乃河ふくのかわ幸鳴ゆきなり

早速だが―俺は死んでしまったらしい。

原因は、交通事故。

車に引かれてあっさりと逝ってしまったらしい。


このような話を―創造神から聞いた。

まぁそれは、さかのぼること数時間前―




転生する前の俺はと言うと―

高校1年生。

親もいない。

一人暮らしと言ってもいいだろう。

学校に通っておらず。

家にこもってゲームばかり。

友達なんてネッ友しかいない。

それが俺だった。

俺は食べ物がちょうどなくなったので、近くのスーパーマーケットで買い出しに行くことにした。

外では雪が降っていた。

「うわ…さむっ…もう冬かよ…」

家ではカーテンを閉めっぱなしだったので、季節が冬になってるなんて全然知らなかった。


何事もなくスーパーマーケットに着いて、カップラーメン、おにぎり、おやつに飲み物を約2ヵ月分買った。

「あとは…なんかゲームの攻略本が欲しいか…な。」

ひきこもってゲームばかりしていると、独り言が多くなる。

俺は欲しいものを全部かごに入れて、レジに向かった。


「いらっしゃいま…せ…。ポ、ポイントカードはお持ちですか…?」

レジの店員さんがすごい顔して俺に訪ねてくる。

そりゃそうだ。かご3つ分になってしまったのだから。

「あ、特にないです。」

「そ、そうですか…」

ピッ―ピッ―ピッ―ピッ―ピッ―

商品のバーコードを読み込む音がしばらく続いて―

「お、お会計…2万6千824円です…。」

俺はサッと、3万円出した。

「お釣りの…3千176円に…なります。」

「ありがとうございます。」

俺はその商品すべてを、もともと持ってきていたカバンに全て入れた。

相当重いし、大きい。

これじゃあ目立ってしまう。

まぁいい。

と思った時だった。


「あれ…?ゆ、幸鳴…?」

と。

馴染みのある、女子の声。

幼馴染の、九涌くわくなぎ

面倒見のいい、優しい幼馴染―なのだが…。

「………………。」

俺は何も言わず、顔も合わせずに、無視して、歩いた。

その行動に―

「あっ!ちょっ…幸鳴!幸鳴ってばぁ!!」

と言いながら、追いかけてきた。

俺はチッと舌打ちして、走って逃げた。

「待って!!」

俺はそんなこと聞かずに逃げ続ける。

しばらく走っているうちに、外に出た。

でも、しばらく運動していないせいか。

体力はもう限界である。

「待って!!」

さっきから同じことばかり言ってくる。

早く諦めてほしいのだが…。

俺はもうがむしゃらになって走った。

結果。

信号を無視して―

車に引かれた。


だんだん意識が遠のいていく。

近くで誰かが泣いている…?

「幸鳴っ…!!幸鳴…!!死んじゃだめ!!」

嗚呼。凪の声が遠のいていく。

俺は―力を振り絞って―

「凪。ごめん。それから…今まで…ありが…とう」

と言った。

「だめだよ!!お別れなんて!!私嫌だよ!!幸鳴ぃ!!死なないで!!」

俺は最後に軽く笑って―

意識がなくなった。


その後。


俺の魂は神界しんかいに送られた。

神界に送られると、神様たちの会議が月に1回あるらしい。

その会議で、創造神が俺を引き取った。

引き取られると、みんな一斉に異世界に転生されるが…


俺だけは違った。


俺は創造神に引き取られたあと。

みんなと一斉に転生せずに…

神界に残った。

俺の意思で残ったわけではない。


「君が…福乃河幸鳴君かい?」

と。

訪ねてきたのは創造神だった。

「そ、そうです…」

「そうか。引き留めてしまって申し訳ないな。」

「い、いえ!全然。」

「さて。君は、なんで自分が死んだのか。わかっているのかい?」

「いえ…お、覚えてないです…」

「そうか。じゃあ、少し話すとするか。」


そして、現在いまに至る。


気付いたら俺は―泣いていた。

「はぁ…可愛い幼馴染…お前さんのことを唯一好きだった子を置いて、死んだのだ。それをわかっておくれ。」

「はい…。」

「それと。」

「?」

「これを見てくれ。これを見て、なんて言えるのか?」

「え…?」

と。少々懐かしい感じがするTVに―

俺の葬式している画面が映る。

そこには。

クラスの友達、家族、先生、親戚。

みんなが泣いていた。

もちろん、幼馴染の凪も。

「お、俺は…ただ…みんなの間に壁を作ってしまったんだ…俺が…自分で…」

「そうじゃ。」

俺はまた泣いた。


俺が泣きやむまで、創造神は何も言わなかった。

と。

ピリリリリリリリ―

電話の音…?

「あ、すんまの。ちょっと待っててくれ」

そういって創造神はふところから、神界にはないはずの―

を取り出した。


「あーもしもし?」

『あ!もしもし?創ちゃん?元気にしてる?』

「創ちゃんって呼ぶな!!それに、さっき会っただろう!」

『もーつれないなぁ。創ちゃんは。』

「だから創ちゃんって―」

「あ、あの―創造神様…?誰と―」

「あっ!ちょっ!し、静かにして!!」

『創ちゃん?そこに誰かいるの?』

「えっ?いや?いないよ?」

『嘘~いつも誰もいない創ちゃんのとこから、別の声が聞こえたよ?』

………。

あーあ。

黙っちゃったよ。

『創ちゃん?図星?』

「いっ、いや!いない!いないよ!!」

バレバレの嘘ですね。

『今すぐにそっちに行くから、待ってて』

プーップーップーッ―

電話が切れた。

「あああああ…まずいまずいまずい…よりによって一番面倒なやつが…」

「誰が面倒だって?創ちゃん?」

「「うわあっ!!??」」

驚いた。

俺と―創造神が。

というより。

そこにいたのは―女の人だった。

と、見ていたら目が合った。

「あれ?どうしたの?この子」

「あ、福乃河幸鳴って言います。」

「フクノカワ…ユキナリ……あっ!今日送られてきた子!?」

なんで…片言なんだろ…

まぁいいや

「そ、そうです…」

「へぇ~この子が!!創ちゃんが気に入った子!?」

え…?

「あ、あの…それって…どういう…」

「あぁ、創ちゃんはね?今までだーれも選ばなかったんだよ?それが…294年ぶりに…!!!」

「へ、へぇ……えっ!?」

に、にひゃくきゅうじゅうよ年…?

単位が違いすぎる…

「お、おい!それを言わないでくれ!!」

「えー?でも、もう言っちゃったし?」

「うー…」

唸ってる…

「あ、あの…それで…あなたは…?」

「あ、自己紹介が遅れたね。私は豊穣神だよっ!よろしくね!」

「よ、よろしくお願いします…」

ほ、豊穣伸様かぁ…

どうりで胸がこんなに…

おっといけない。

「あぁそうじゃ。幸鳴君。向こうの世界では、そのような名前がないのじゃ。」

…うん?

つまり―

「名前を変えろってことですか?」

「まぁ、そういうことじゃな。」

いや…そんないきなり言われても…

うーん…

新しい名前かぁ…

「そうじゃのう…うーん…」

「あ!ねぇねぇ!」

と、豊穣神様が。

「アルライト・リスタル・クオーツっていうのは…どう?」

アルライト・リスタル・クオーツ…かぁ…

「悪くないですね」

「ほんとほんと!?わーい!」

うわっ…

すんごい可愛い…。

「あ、そういえば創ちゃん。加護はどうするの?つけないんなら、私の加護付けるよ?」

加護?

なにそれ。

「あー!ダメじゃダメじゃ!わしの加護を付ける!!」

「あのう…神様?」

「「ん?」」

「加護ってなんですか?」

「あぁ。言うのを忘れておったな。すまんすまん。」

「加護って言うのは、神様からの肩入れ…みたいなものだよ。」

か、肩入れ…

それって…チート確定なんじゃ…

「普通、一人の人間に対して神様が一人付く感じじゃな。」

なるほど…だから創造神と豊穣神様がなんか言ってたのか。

「あの…創造神と豊穣神様の加護を付けるのは…無理なんですか…?」

「できるが…相当大変なことになるぞ…?少なくとも、前の生活みたいに家に引きこもるなんてできなくなるんだぞ…?」

「いえ。大丈夫です。神様に助けてもらった第二の人生、楽しく過ごしたいですし。」

……。

え。沈黙…?

「あ、あの…神様…?」

と。

いきなり神様たちが泣き出した。

「うっ…なんていいことを言うんだ君は…気に入った…!!」

「クオーツくん…かっこいい…!!私と結婚してほしいくらい…!!!」

いやいや…神様と結婚なんてダメでしょ!!

というより、そんなにいい事言ったのか…?


「さて。いろいろ話とかが長引いてしまったな。」

「いえいえ。全然大丈夫ですよ。」

「そうか。じゃあ、これから向かう世界のシステムを説明する。」

「は、はい!」

「まずはこれじゃ。」

と、懐からスマホが。

「向こうの世界では、スマホは普通に使える。転生しても、不思議に思われることはないから、安心しろ。」

「は、はぁ…」

向こうの世界でも…普通にスマホ使われてるんだ…

「それから、特別に―じゃ。」

「?」

「元の世界の人とも話せるようにはしておいた。」

そ、そんなことできんのっ!?

ありえない…

「え…でも…な、なんで…」

「お前さんが死んで、一番悲しんでおった幼馴染がかわいそうになるじゃないか。」

「そ、そっか…ありがとうございます…」

「ただし。通話しかできんぞ。メールだと絶対に届かない。それだけは覚えておいてくれ。」

「は、はぁ…」

「次に、能力についてじゃ。」

「能力ですか…?」

「ああ。お前さんは何が好きだったんじゃ?」

「何がっ…て言われても…」

「じゃあ、趣味は?」

「えーと、ゲーム、旅行、何かを作る事…ですかね…。」

「そうか…」

「ちなみに神様はどんな能力なんですか?」

「ん?わしは創造じゃ。」

「ちなみに言うと、私は豊穣なのよ!」

創造に…豊穣…

なんかすごそう…!!

「どういう効果なんですか?」

「そうじゃのう。創造は、主にモノを作り、生み出すという感じの能力じゃな。」

え…生み出す…!!??

それはすごくないか…?

じゃ、じゃあ…豊穣神様の豊穣は―

「私の豊穣は、必ず豊作にするっていう能力よ!」

ふふんっと。胸を張る。

でも…なんかそれ…しょぼいような…

「この能力は、畑仕事する人にとってはありがたい能力なのよ。」

「そうですね…」

「むむむ。興味なさそう…」

「えっ!いあや、そんなことは―」

ある。

と、とりあえず話を変えよう…。

「お、おれにはどんな能力を…?」

「ん?お楽しみじゃ。能力の使い方とかは、アシストに頼んでおくよ。」

あ、アシスト…?

どういうのだろ…

「あと―君の家も用意しておいた。転生したら、そこに出るようにしてある。」

「え!あの…家ってどこにあるんですか…?」

「んー…近くの町から少し離れた丘の上にあるぞ。」

丘の上…かぁ…

眺めよさそうだな。

「最後に。第二の人生、楽しむんじゃぞ!」

「はい!もちろん!」

「私たち、たまに会いに行くからね!」

「えっ!?」

神様って…向こうの世界に行けるの…?

「ああ、言い忘れておったのう。一応、神は地上に降りることもできる。」

「そうなんですか…」

「じゃ、詳しいことはアシストに全部伝えておくからな。」

「はい。」

「ねぇねぇクオーツ君、もうちょっと一緒にいようよ~」

「えっ!いや、でも…」

「こらこら。もう他のみんなが転生してからだいぶ時間が経つ。もう行ったほうがいいじゃろ。」

「でも~…」

「まぁまぁ。また会いに来れるんですから。」

「うー…」

可愛そうやな…

「あ、そうそう。君にワープっていうスキルを付けておくよ。これがあれば移動は便利じゃからのう。それに、ここにも来れる。」

「へぇ~それは便利ですね!!」

「じゃろ?――あ、でも1度行った場所じゃないと使えんがの。」

「了解です。」

「それじゃ、転生させるぞ。」

「はい。」

「元気でね、クオーツ君。」

「はい。豊穣神様もね。」

神様との別れを惜しみながらも、俺は異世界へ転生した。


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