皇帝と王

 皇帝は颯爽と軍人王に王太子との和解を勧める手紙を出した。

内容には娘マリア・テレジアとの縁談をにおわせる動きもあった。

カール6世からの手紙はフリードリヒ・ヴィルヘルム1世に王太子を許す心の余裕を与えた。なぜなら王太子を処刑しようとした王としての面子も皇帝からの勧めということで立つからである。

 皇帝が調停に乗り出したことは王太子の耳にも入った。王太子からしてみればどちらでもよい精神状態であったのだが、それも親友を亡くすとともにただ一人の理解者を失い自暴自棄になっていたからだ。

王太子(カッテ...私は処刑されるどころか廃嫡も逃れるようだ。だがお前のいないこの世に生きる意味などあろうか、人とは好きなことをし時には苦難がありその苦難すら幸福に変わる時に希望を夢みて生きるのだろう...だが、お前は死んでしまった!)

そんな思いを考え王太子はカッテが王と和解するようにと書いたことを思い出した。

王太子(何故おまえは父上と和解することを求めたのだろう。父上は私を殺そうとしたのに)

王太子はその謎を考えるため、希望を持つことを止めた未来を考えた。

王太子(私はたとえこの先生きたとしてもプロイセン国王という鎖につながれ国家に従わなければならない、全てを国家が潤滑により良くなるためにその全てを捧げる下僕となる。)

私は人と理解を深め美しい芸術に囲まれ過ごしていたい。そんな夢はもう無いのだと考えていた。

王太子(いや違う!そうではない未来はまだあるのだ。私はこの国を芸術に囲まれた美しい国になってほしい私はそのために王となり国の下僕となるのだ。私は生きる意味を悟ったぞカッテ!たとえいかなる苦悩があろうとすべきことはある。)

王太子は父王に従う手紙を出した。

しかし王太子の意思は希望に満ちていた。

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「大王」 独露 @friedrich2

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