忘れ物
検定試験の会場にて。
時給もそこそこ良く人気なこのバイト。そのためか、前から狙っていたのだがなかなか採用されずにいた。そしてやっと、俺はこのバイトを勝ち取ることができたのだ。
試験も終了し、少々仕事内容は難しくもあったが、無事に終えることが出来そうだ。
人のいなくなった会場で、ふぅと一息ついていると、扉の方に気配を感じる。
振り返ると、そこには中学生くらいの男の子の姿があった。
忘れ物でもしたのだろうか。
「すみませんっ、忘れ物しちゃって…」
「忘れ物ですね。少々お待ちください」
やっぱりか。いくつかペンとかあったからなぁ。そんな事を思いつつ、俺は忘れ物の回収ボックスを男の子の前に持っていく。
「うーん、似てるのがいくつかあって…」
「何か特徴ってありますか」
「あっ!」
俺が問うと、男の子は何かを思い出したように大声をあげる。
「ちょっとこのペンのフタ開けていいですか?」
「どうぞ」
ペンをとり、フタを開けて男の子はシャカシャカと振り始めた。どうしたのだろうか。
すると、スポっと音を立てて一枚の紙切れが出てきた。
「やっぱり僕のだ!ありがとうございます!」
「はっ、はい…。どういたしまして…」
俺は、嬉しそうにしている男の子の手ににぎられた文字のびっしりと書かれた紙を見つめ、呆然とした。
クスッと! 秒で笑える短編集 如月風斗 @kisaragihuuto
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