終わりの終わりの始まりは

 私は今小学校生活で最も苦痛ともいえる時間をやっと乗り越えようとしている。

 それは終業式。それも冬で床の冷たい日の。


 校長先生の話は長く、一秒一秒が拷問のように感じる。


 そして今、やっと教頭先生が前の台に上がった。

 いよいよあの言葉を言うのだ。

 私は勝った!


「これで終業式を終わりにします」


 私の頭の中でくす玉が割れる。

 やっと帰れるんだ~!

 今は教頭先生の顔ですら見ていてうれしい。


 冷たい床に座るのが嫌でずっとしゃがんでいた私。

 もう足が限界に達していた。

 これ以上ここに滞在するのは危険な行為だ。


 ここから出るために立ち上がろうとすると悪魔先生の声が聞こえてきた。


「ではこれから冬休みの注意事項を始めます。終業式が終わったからって騒がないように」

「え?」


 私は今までの苦労が何だったのかと思いながらも床に座り込んだ。


 話を全部終わらせてから終わりの言葉を言ってよ!

 

 終わりの本当の終わりが終わるのは相当先のことになってしまうのかもしれない。

 こんなことなら初めから床に座っていればよかったのになぁ。

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