コピー機はお望みのままに

「先生、これ印刷したいんですけど…」


 技術の授業中、隣の男子は学校で使う資料を印刷したいと先生に許可をもらっていた。

 私はそれを隣で見ながらパソコンを打つ。


「印刷していいぞ。やり方わかるよな?」

「大体わかるんですけど完ぺきとは…」


 自信なさげに男子は言う。

 先生は少し焦った感じを出しながら言った。


「ちょっと職員室に行かなきゃいけないからさ、隣の人とかに協力してもらってやっといてもらえる?」

「わかりましたぁ」


 男子が先生からいわれると私のところへ寄ってきて言う。


「なぁ、手伝ってくれよぉ」

「しょうがないなぁ」


 仕方がなく私は手伝うことに。


 といっても方法は簡単。

 ただ“印刷”のところをクリックし、コピー機の電源を入れるだけ。


「よし、これで印刷されるはずだよ」

「ありがとよっ」


 さあこれで自分の作業ができる。


 そう思っていた。


「なぁ、コピー機が動かないんだけど…」

「えー」


 まあこういうことがあるのは仕方がない。

 そう思って私はもう一度先ほどの手順を繰り返した。


「これで出てくるよ」


 そう言ったのに、出てこない。

 どうなってるんだよ! 思わずそう叫びたくなった。


 しばらく格闘しているとやっと先生が戻ってくる。


「センセー、できないんですけど…」

「ああ、これは詰まっちゃってるね。ちょっと待っててよ、すぐ直すから」


 しっかり起動しなかったのは紙が詰まっていたからだったのか。

 やっと直せた今、もう一度“印刷”を押す。


「やったぁ、出てきたー!」

「ん?」


 必要なのは一枚。


 だがコピー機からは私たちの努力の数だけ紙が出てきた。


 コピー機はただ二人のお望みどおりに印刷しただけでございます。


 私たち三人は湧き出てくる紙の泉を見つめながら唖然としていた。

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