占いのバックナンバー

 PCを起動させるとディスプレイに現れるある検索サイトの画面の小窓に、僕の星座の今日の点数が表示されている。ちなみに、この日の点数は66点だ。

 「今日の運勢」という文字をクリックすると、12星座ランキングが表示される。ちなみに、この日の順位は9位だ。

 運勢は、「総合運」「恋愛運」「金運」「仕事運」と4つに細かく表され、それぞれ、長短のコメントが記されている。ちなみに、この日の「金運」はフルマークの5点で「エコロジーと省エネを考えてある製品にツキがありそう。光熱費の節約にはもってこい。」とコメントされていた。この日は、PC以外に電化製品に縁がない一日を送ったし、光熱費の節約にも一役買っていない一日だった。しかも、これごときの内容で、なぜフルマークの5点なのか今もわからない。他のファクターも同じようなもので、わざわざ此処に記すほどの内容ではない。

 66点で9位という占いからすれば、何事も起こらず平々凡々と過ごせた今日は大きく占いを裏切った一日であり、それを喜ばしいと感じたほうがよいのだろう。


 だいたい、星占いでいい思いも悪い思いもした覚えなどない。せいぜい、点数や順位を見せられ、不安に感じるか、意気揚々と玄関を出るかぐらいのことで、職場に着く前に占いのことなど忘れてしまっているのである。



 そんな僕が、ある日、あることに気付いてしまった。


 僕が購読しているある地方新聞には毎日「五行易」と呼ばれる占いが載せられている。1月から~12月までの生まれ月別にその日の「健康」「金銭」「異性」「吉数」「吉色」「方位」が占われて、短く簡潔なコメントが載せられている。

 このコメントがなかなか小気味良くてよろしい。例えば、「好調日。身辺の整理は頭をスッキリさせる。」「おしゃべりから信を失う怖れ。無駄口禁物。」てな具合である。

 各ファクターは、◎最良 ○良 △普通 ▽注意 といった記号で吉凶が表されているが、◎なんて何ヶ月も目にしたことがない。その辺りが逆に真実味を帯びたりする感がある。


 「五行易」を少し調べてみると、古代の中国、紀元前三百年頃から紀元前二百年頃、今から二千年以上昔、前漢の武帝の時代に京房(けいぼう)という学者が、それより以前の春秋戦国時代に流行した占候易(せんこうえき)などを集大成して完成させたもの、ということであった。まあ、どんな学者か知らないけれど、“昔の人はみんな凄い人”というのはお門違いだろう。


 さて、この占いが実際にどうか、といえば、それが、ちっとも当たらないのである。というか、変な言い方になるけど、“当たっていることに気が付かなかった”のである。

 たまたま、前の日の新聞記事に用があってぺらぺらめくって眺めていたら、この「五行易」の占いに目が留まって何気に自分の誕生月の占いを見ると…なんと、それは、まさに今日の出来事そのままだった。まさかと思って、物置から新聞を取り出してその前の日、その前の前の日と見ていくと、心当たりのあることばかり。


 ということは、僕にとってこの占いは本日の吉凶ではなく、“明日の吉凶”を占う最強の占いだったのである。だいたい、占いなんてみんなその日のことしか頭になく、その日が終わってしまえばあとは忘れてしまって、次の日、また次の日…といった具合に追いかけていくものだ。僕は、明日の占いが吉であれ凶であれ一日をかけて心と行いの準備をする猶予がもらえて有難い。


 此処にこれを表明することでその“効力”が失われるかもしれないけれど、それはそれでいいと思っている。たまに、この占いと自分の行いを思い返して、また、何らかのマッチングができたときにそれを楽しみたいと思っている。


 みなさんも、自分の“占いのバックナンバー”をフィードバックしてみてはいかが?なにかの発見があるかもですよ。

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