対決!モンスター
次に園庭前のテラスから、別の園児の親とアジサイ組担任のいずみ先生が話しているのが聞こえてくる。
「お母さん。明日はともやくんに牛乳パックを持たせてくださいね。今日は園で用意しておいた予備をあげましたが、工作の時間は明日もありますから」
「えー? だってウチ、牛乳なんて飲まないし。じゃあさ先生、別にともやに工作させなくていいよ」
「え、そんなわけには。あのですねお母さん、工作はともやくんも大好きで……」
矢も楯もたまらず、俺はアジサイ組に駆け込んだ。
「あっ! ちょ、園長……!?」
理賀子が何か言っていたが、耳には入ってこない。
「──だってさー、別に工作やらせろってコッチは頼んでないし、あんたたちが勝手にやらせたいだけじゃん。なのになんでわざわざ牛乳買えとか命令すんの? それっておかしくない?」
「いえ、そんな命令とかじゃなく……」
「ともやくんのお母さんっ!!」
突然の俺の大声に、ともや君ママがビクッと跳ね上がった。ソコで一気に畳みかけーーる!
「見てください、このともや君の作品を! どうですかスゴイでしょうスゴイですよね!? この恐竜の尻尾のギザギザ加減なんてまさに芸術! ものスゴイ造形の才能だと俺……いや私は睨んでいます!」
「は……え、園長先生? あ、あの」
「子供の才能を伸ばしてあげましょう! そう、それが出来るのは誰でもない、親御さんなんです! 牛乳がアレならジュースでも、ウーロン茶でも天然水でも1リットルの紙パックなら何でもいい。それでともや君の未来が光り輝くんです!」
「わ、わかりました明日持ってきます持たせます! 家にマンゴーの天然水ならあるから……」
「おお、そうでしたか! それなら仄かにマンゴーの香りのする恐竜が出来ますね、ありがとうあなたは母の鑑だ! いずみ先生、持ってきてくださるそうですよ、これで問題ありませんね!?」
「ええまあ……」
俺の渾身の説得に、ともや君ママも心底理解を示してくれたようだ。
今後、園から何か用意して欲しい旨の通達があれば、これまでよりは少ーし意識してくれる事だろう。
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