第35話 反撃の狼煙
僕は扉を開けるとすぐに短銃杖を構えた。
「お前ら……逃がさんっ!!」
3人の兵士も僕に銃杖を向ける。すぐさま銃弾を放って二人を撃ち抜く。
「発火っ!!」
一人がこちらに向けて発射した弾丸が僕の腕をかすった。もう一人は僕がうずくまっている間にエリーゼが剣を飛ばして倒したようだ。
「大丈夫っ!?」
「深刻な怪我では無いです。これくらいは自分で回復します。」
「そう……魔力には気を付けて。」
そこから中庭へ進んだ僕たちの前に誰かが歩いてきた。見ると、館に来たときに見た門番だった。
「俺の部下を倒すとは、中々の腕前と見た。」
ネックレスを外すと、光と共に老いた姿が変わっていく。その男はリナルドだった。巨大な剣を片手に、銃杖を片手に立つその姿はただならぬ威圧感を放つ。
「あの方からは足止めを命じられた。だがまぁ……お前らはここで始末するさ。」
彼は銃杖をこちらに向けて発射した。
「っあぁっ……!!」
銃弾は僕の足を貫いた。片手で発射したにも関わらず、撃つときの衝撃をしっかりと受け止めていた。
「これで一人目の首を……」
そう話すリナルドにエリーゼさんが襲い掛かる。
「邪魔立てか?アホらしい。テヤァッ!!」
リナルドは剣で殴り付けるように彼女を吹き飛ばした。
「ふん。そんなもんか。」
彼は吹き飛ばしたエリーゼさんに向けて銃杖を向けた。それを見た彼女は体を何頭ものコウモリに変えて彼の方に飛んでいった。
「これでどうだっ!!」
彼女は体を元に戻してリナルド後ろから斬りつける。しかしその攻撃は受け止められた。それに向けて僕は銃弾を放つ。しかし、彼はそれを腕で受け止めた。その腕にはかすり傷しかついていない。
「なぁっ……!?」
「普通の魔弾なら魔力と肉体、その両方を鍛えた俺には通用しない。」
そういいながら、またもや易々とエリーゼさんを弾き飛ばした。ならばと、私は銃杖の刃を撫でながら魔術を発動させる。
「星羅を束ねし理よ……我が身で踊れッ!!グリードパルサー!!!」
これを唱えた瞬間に私の体内に魔力が流れ込む。先ずは自分の足の傷を回復した。立ち上がった僕を見て、リナルドは姿勢を立て直す。
「何をしたかは知らんが……また痛い目に遭いてぇみたいだな。」
僕は魔術で時間を加速させながら両手の短銃杖に込めた魔弾に膨大な力を注ぎ込む。そして大剣をギリギリの所でかわし、彼の銃口の先に立たないように立ち回る。
「ツインヴェスパーッ!!!」
2発の魔弾を腹に撃ち込む。
「クソッ……ハアアアアッ!!!」
咆哮のような叫びと共に大剣をとてつもない勢いで振り回した。
「アダマントクローッ!!」
彼の剣を避けることは出来たが、衝撃波に巻き込まれて壁に叩きつけられる。
「だ…け…ど……まだ……!!」
既に貯まっていた魔力を使って体の傷を瞬時に回復した。魔力の使いすぎで頭が痛くなる。このままでは精神にも異常をきたしそうだ。
「成る程、大量の魔力を体に流入させる魔術か。面白い。」
再び時間を加速させるが、リナルドの姿が少しボヤけていた。そろそろ限界が来ているようだ。力を込めていない魔弾を3発撃ち込んでから魔力の吸収を解く。
「はぁ……はぁ……」
目を開いてみたが、やはりリナルドはそのままの状態で立っていた。
「二人を殺るには時間が少しかかるか……だが、これくらい時間を稼げばあっちはなんとかしてくれるだろう。じゃあな。」
「待てッ……!!」
僕は彼を追いかけようとしたが、エリーゼさんはそれを止めた。
「あいつの確信したような顔……なんか嫌な感じがするわ。館の中に向かってカイン達と合流しましょ。」
「はい……行きましょうか。」
僕達は館の中に戻ると、勇者達のいた部屋を目指した。エントランスを通り過ぎた辺りで、女の声がするのを聞いた。
「誰だろう……?」
「……!!この声、ローシャよ!急ぎましょう!!」
声のする方に、僕達は走っていった。するとそこにいたのは血塗れで倒れたカインと左腕を抑えながらそれを起こそうとするローシャだった。
「ローシャ!!大丈夫!?」
「アタイはなんとか……それよりカインを……!!」
見るとローシャの腕には矢が刺さっていて、血が沢山出ていた。
「これを飲んでおきなさい。毒が塗られていたとしても進行を遅らせられるわ。」
「ありがとうございます……」
ローシャに薬を渡したエリーゼは全身から血を流して倒れるカインの肩を叩いた。
「……魔王が……奴らに……僕の事は放って……早く……」
「馬鹿ッ……!!事情は後でいくらでも聞くから、絶対に生きてなさいよ!!」
僕もエリーゼが始めたカインの回復を手伝う。二人で回復していくと、少しずつだがカインの傷はふさがっていった。
「立てるか?アタイの手を掴め。」
「心配させたな……ローシャ。悪かった。」
「生きてて良かった……謝るなよ。」
二人は軽く抱き合った。そんな二人に、エリーゼが声をかける。
「何があったの?」
「僕から話をします。革命軍に魔王が連れ去られました。それを勇者が一人で追いかけに行ったんです……」
「何ですって!?あいつらはどっちに?」
「この先の廊下を走って行きました。僅かな魔力の流れを感じます。恐らく、瞬間移動の魔術を展開させていますね。勇者がある程度時間を稼いでいるとは思いますが……」
「急ぎましょう。あいつらを止めるわ!!」
全員がそれに頷いて、廊下の先へ向かった。
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