第二話 仲間

 ~ヌリ村・広場~



時刻は朝六時。

私は身支度を済ませ、広場へとやってきたのである。

今のところ誰もいない。


「ちょっと早すぎたかな」


勿論私が寝ている間に去ってしまった村人さんもいるかもしれないけどね。

広場に立っていると農業の村人さんとガタイの良い村人さんがやってきた。


「おはよう、ルヴァン村長」


「お、寝坊はしなかったみたいだな」


「おはようございます。お二人とも!」


私は笑顔で二人に交互に視線をやり、元気に挨拶する。

今は三人、勿論そう都合良くはいかないだろうけど、少しでも多くの村人さんに残ってもらえたらいいな。


それから一時間程経つと、家から村人さんが少しずつ出てき始めた。

残ってくれるかなんて聞かずとも、姿を見れば答えは見えていた。

皆、大量の荷物を抱えて家を出てきているのだ。

ある人は気まずそうに私に視線を送りながら出ていき、ある人は私に声を掛けて出て行った。

既に何人の村人の背中を見送っただろう。

分かってはいたけど実際に見てるとやっぱり辛いな。

そこへ一人の村人さんが声を掛けて来た。


「ルヴァンちゃん、ごめんなさいね。本当は信じて応援してあげたいけど……」


その村人さんは小さな子供を抱えていた。

後ろには旦那さんがいる。

申し訳なさそうにする子連れの村人さんに私はなんとか笑顔を作り出し返す。


「そんな、謝らないで下さい! 仕方ないですよ。この状況じゃ……でも」


「?」


「またこの村に住みたい! って言ってもらえるように私がこのヌリ村を変えてみせますから! いつかまた遊びに来てくださいね」


私は自信満々にそう言い親子を見送った。

その間にも去る人は沢山、もう数える程しか村人さんは残っていないはず。

ん……? あの人は。

昨日真っ先に出て行こうとしていた荷物を抱えた村人さん。

村の出口ではなく真っすぐに私の方へと向かってくる。

半分冗談、いや諦め……それでも僅かな期待を込めて昨日の質問の答えを聞く。


「わ、私の村に住んでみたくなりましたかっ?」


荷物を抱えた村人さんは荷物を抱えていなかった。

なんだか怖い顔してる気がするけど。


「ルヴァン村長の言う私の村……見せてもらうぞ。何も変わらなかったらすぐに出て行ってやるけど」


「え? ほ、本当ですか! 是非! 村が変わっていく様子と、私の有能な働きぶりを見せてあげましょう!」


続いて後ろから二人の声が聞こえてくる。


「村を訪ねてくる旅人や冒険者の為にも宿屋は必要だろ? 仕方ないからおじさんが残ってあげようじゃないか」


「今は正直赤字も赤字、苦しい状態だけどルヴァンちゃんが頑張って立て直そうとしてるのに、私が見て見ぬ振りはできないねぇ」


宿屋のおじさんと喫茶店のおばあちゃんがそう言ってくれた。


「皆さん、ありがとうございます! 今こうして残ってくれたこと、絶対に後悔させませんからね!」


私は残ってくれた五人の村人さん達に軽く頭を下げ、すぐに視線をあげる。

ほとんどの人が去った今、小さな村なのになんだか広く見えた、けど私は負けない。

信じて残ってくれた村人さん達の為にも!



十一月五日――元々五十人くらいだった村人さんは私を含め六人になりました。

昨日に加えて三人の村人さんが仲間になったよ! 辛い気持ちもあるけど、嬉しくて、頑張らなきゃと思える言葉ももらえたの。

さあ、明日からついに行動開始だ!



十一月六日――

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ルヴァン村長のヌリ村再興にっき ばえる @Bael

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