第32話これが、ラノベ主人公の申し子

「お兄ちゃん。暑いよーー!」


炎天下の8月下旬の東京都は、

冷房のない外は暑い。

迷惑なのは、この商店街に

閑古鳥が鳴いているお店のおばさんが

打ち水をしている。


実はあれ、少し涼しくなった夕方など

以外の昼間でやると、炎天下の

温度により蒸発し湿度が上昇。

結果、熱中アップ・・・唯悧ゆいりがいるから迂回しないと。


「ゆ、唯悧。わるいけど

たまには別の道に行きたいのだけど

いいか?」


「構わないよ。

お兄ちゃんが行く所だったら

どこでも行くよ」


我が妹は、今日も可愛いでござる。

そう言えば、服部半蔵はっとりはんぞうは忍者なかった。


神君伊賀越えで忍びを使って

脱出ルートを入手したことから

忍者化された。


「そ、そうか・・・よし!

唯悧が喜ぶような情報を話しよう。

服部半蔵だけど、本名は

服部正成はっとりまさなり

槍の名手であった。

父親が忍者で息子には絶対に

忍者になってほしくなかった。

それは、何故か?」


ノンフィクション小説を

読んで知った知識を語るのは

楽しい唯悧が博識になるために

話をする。受験生だし。


「う、うーん・・・お兄ちゃん」


「忍者ってカッコよく

信頼に置けているけど、実はあれは

フィクションなんだ。

戦国時代では非正規雇用されている

ような立場。イヤ、それ以上よりも

悪く殉職率が高い上に出世の

見込みのない仕事を嬉々として

息子に勧めるバカはいない!」


「お兄ちゃん言いにくいのけどねぇ」


「そう、息子には武士として教育

して導いた。

昔も今も子供を思わない

親はいないなぁ思ったよ」


「っー!?」


唯悧の肩が震え、表情には

闇を抱えるようにうつむいた。

何故そう落ち込むのは、すぐに

理解した。


唯悧は、両親が離婚して俺と離れ

ばなれになった。

父親が娘につまりは、唯悧を虐待

したのだ。

発覚したのは、唯悧の身体の傷で

発覚した。

育てる資格はないと裁判。


母親が育てることになったと

裁定が下されたのだ。

当時の俺は、虐待の怒りよりも

また一緒に居られることに

喜びの方がまさった。


一緒に暮らしてから大変だったのは

唯悧は、暴力をヒドく怖がっていた。


(ようやく、克服したのに

俺は・・・なに思い出させて

いるんだよ!バカなのか!!)


「はぁ・・・はぁ・・・・・

あっ、由布ーー!」


「あれは、十時連貞とときつれさだ?」


全力で前へ走ってくる友人に

ついフルネームで呟く。

唯悧も俺の言葉や視線に背後へ

振り返る。

十時は、生粋の女たらしだ。

唯悧が危険だ!

十時は俺の左に止まり

呼吸を整える。


「ハア・・・ハア」


「とりあえずなにがあったんだ?」


「彼女と妹が、デート約束したけど

ダブルブッキングをやってしまって

それなら、一緒に行こうと

提案したのだけど

何故かヒドく怒られたんだ」


「いや、当たり前すぎだろ。

どうして、それで怒られた事に

疑問だけど!?デート的な

友達的な遊びだと思ったのだろ!」


「す、すごいね由布。

読心術を使えるのかい?」


「まぁ否定する。

それで、追いかけていると」


「そ、そうなんだ。

由布は口達者のようだし

仲介してくれないか?」


「・・・そもそも仲介じゃないと

思うんだけど、唯悧。

申し訳ないけど、すぐに

終わらせるから隣に

いてくれないか?」


そもそも、他力本願がおかしいと

一蹴できないのが悲しい。

あの、ラブコメの申し子の

弁明を手伝うなんて。厄日やくびだ。


「ふぇ?・・・・・お兄ちゃんの

隣なの?」


「え、そうだけど、おかしかった?」


「う、ううん。嬉しいよ。

待ってくれとか言われるよりも

ずっと、わたし嬉しいお兄ちゃん♪」


唯悧は眩しいほど満面な笑みだった。

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