第26話  理屈と感情は同時にそして離れる

「お、おかえり母さん」


「ただいま」


次の日、早朝で残業を終えた

母さんが帰ってきた。

滅多に帰るのがなく、ビジネスホテルで

泊まることがあり

ここには帰らないこと度々ある。


俺はいつものように料理を作って

いる最中で、玄関のドアの音に気づき

そして居間に入り淡々とした

帰宅にあいさつ。


「遅くなって悪かったわね。

これは、お土産よ」


リビングテーブルの上に

ケーキ屋の箱を置く。


「ありがとう」


惟信これのぶその・・・学校とか

唯悧とかうまく行っている?」


「・・・ああ。順調だよ」


「・・・そう」


これで会話が途切れる。

母さんとはあまり話したくないし、唯悧を

離れ離れにさせたのだとまだ頭の中では

そう強く思っている。


最初は二人一緒に引き受けとるつもりだった

と、なんども言っていた。

俺と母さんの二人で生活していたとき

今よりもひどく母さんが話し掛けても

無視をしてけっこう暗い生活をしていた。


それからは成長するにつれ愛情を注いで

もらいながら、無視や一方的に怒るなど

苦しい言動に反省した。


ようやく冷静になったけど、次はどう

接すればいいのか分からずこんな

一言で終わりそうな会話をする日々。


あの事を謝ろうかと一瞬でも考えたが

俺はまだ許せていないし、

謝る必要なんてないと、思い留めた。


でも、こんな頑なでいいだろうか。

今も悩んでいて明確的で不可逆な解決は

あるのか・・・・・

なによりも、今は高野が家に泊まっている

方が解決しないといけない。


「そ、それよりも母さん疲れているだから

休んだ方がいいじゃないか?

けっこう仕事続きなんだろう」


睡眠中なら高野を朝食を食べさせ

外に放ち居たことを知らせずに出ていける。


惟信これのぶ・・・・・・・

そうね。そうさせてもらうわ」


体を気をかける息子の言葉に

嬉しそうにする母さん。本当は

獰猛な獣の高野を野に放つことなんだだけど

・・・申し訳ない気持ちで苛まれる。


「息子が成長すると、嬉しくなるわね。

でも惟信これのぶソファーにあった

これなんだけど・・・・・」


それを見て俺は手に持ったニンジンを

落下する衝撃的な物だった。

それは、高野の学校の鞄であった。


(し、しまった!?

今日は母さんが明日は、帰ってくるって

昨日の夜にラインを

送っていたじゃないか!

これなら、居間を証拠隠蔽しょうこいんぺいをしていれば、イヤイヤ違う。

隠蔽だとなんだか違法的なことじゃないか

それは。)


「中を見えたんだけど、少女マンガとか

手鏡やポーチなんてあるわよこれ。

・・・・・あなたもしかして」


くっ、万事休すか。母さんは、観察眼が

普通の人よりも鋭い。

見た目は普通のボブヘアーのおばさんだが

海千山千うみせんやませんの中

を潜り抜けた人を思わせるのがある。


「・・・これは・・・・・」


相手が権謀を常に巡らすような母さんに

論破や下手な・・・イヤ、巧みな嘘でも

通じないだろう。

頭が魂がそう認識してしまい思考を

うまく回らず戦慄する。


「まさか、惟信が女装趣味をあったなんて

ね。驚いたわ」


決定的な発言により思考は混乱の一途に

・・・・・・・あれ?イマナンテ。


「か、母さんもう一度いいか?」


「これのぶ。女装趣味をあったなんてね。」


「・・・・・・・そ、そうなんだ!

最近なんだか女装に目覚めるような

年になったから。

ほら中二病は、14歳が最も発症するように

高校生になると避けて通らない

道に辿たどったわけなんだ」


我ながら頭のネジが一瞬に消えた

ロボットのような動きのようは奇妙な

言い訳をいい続ける。


「そうなのね。高校生は色々と大変な時期だと思うけど母さんにたまに相談を

しなさいよ」


セリフや心中が混乱しているのに俺の

言葉を疑わずに信じてくれる母さん。

ぐっ、なんだか苦しくなってきた。

罪悪感で。


「あ、ああ。いつかは」


「でも、他にも気になることがあったの

だけど」


「ほ、他にも!?」


「これだけは、わたしも理解できない

ことがあったのよ。玄関にある

女の子サイズのローファ」


「な、なっ―――」


どうしよう。大雑把おおざっぱの高野

かばんを奇跡的に回避したけど

奇跡は2度は起きないだろう。

一難去ってまた一難・・・どうしよう。


「ふわあぁ~、眠い」


なんたる不運の連続か必死にここにいることを隠している高野が唯悧が小学生の頃に

着ていた動物パジャマ(猫)の姿で

現れた。


だらしなくヘソをかきながら

整った美しい白髪は、ボサボサで

目をこすりながらゆっくりとドアを開き

ぱっなしの居間に入った。


「えっ、子供!?唯悧の友達かしら・・・」


アゴに手を触れ考え始める母さん。

こうあうクセがあるんだよなこの人は。

高野は驚愕から思考をすぐに切り替えた変人

の母さんを見てはっ!となにかを気づく?


「由布のお母さんおはようございます。

わたしは、由布のご学友になる高野大善たかのだいぜんです。」


頭を下げながら挨拶をする高野・・・えっ?

どちら様ですか!?高野は凶暴で

人格破綻者のようなJSの皮を被った

恐るべきJKだけど。


「えっ?これはご丁寧ていねいに。

わたくしは、由布の母親を務めさせて

・・・失礼。少し仕事が抜けなくて、

高野ちゃんは娘と仲よくしてくれて

嬉しいと思っているわ」


仕事スタイルから、一般的な母親モードに

変わり砕いた言葉で微笑みながら挨拶する。

あれ、もしかしてこれは僥倖ラッキー

なのでは。高野に唯悧の友達にすれば

危機は逃れる。

頼む高野、なんとかしてくれ。


「いいえ、お母さん違いますよ。

わたしは息子の由布のご学友なのです」


聞き慣れない魔王高野の敬語と笑顔。

そして、内容は願ったことの逆を果す高野。

さすがだよ。このトラブルの根源のような

ロリめ!


「・・・・・・・コレノブの学友?

え、えーと高野ちゃん大丈夫、

変なこと、とかされていない?」


ほらそんなこと言うから母さん勘違い

したじゃないか高野。

本当の事をただ伝えただけだから

わるいっていうのは理不尽で独りよがりだって重々に分かるけど・・・

順序を考えてほしいかった。


「はい。大丈夫ですよ。

・・・どちらかと言うと恐ろしいほどない」


「そうなのね・・・ハァー、よかったわ。

小学生にとんでもないことを

教えているのだと早とちりしたわ」


母さんは、高野の言葉とついでに独白のような言葉も聞こえ安堵する。

これで、高野を隠す理由はないし

その心配は終わった。

さて、朝食の準備をしないと。

落ちたニンジンを拾いピーラーで皮を剥こう

としていると高野の声が聞こえた。


「さあさあ、お母さんこちらに座って

ください」


「あら、ありがとう」


イスを引いた!?

しかも明るい声で・・・振り返るか・・・・

それよりも朝食だ。いいかげん

早く作らないと。


「お母さんそれでは、ごゆっくり

どうぞ」


あれ?高野どこかに行くのかそう疑問に

なり後ろを振り返りそうになるが、

ささいな事だと自分に納得させ

料理に集中する。


「由布、手伝うぜ今からねぇ」


「え?ああ頼むよ」


隣に来る高野にピーラーを渡し

調理を任せる。

二人でやると調理が短縮して味噌汁と

目玉焼きの隣にレタスを乗せたシンプルな

朝食が出来た。後は皿をリビングテーブルに

持っていくだけ。


「おはようお兄ちゃ・・・ん・・・えっ、

マ、ママ帰ってきたの?」


最後に目覚めた唯悧が溢れんばかりの元気さ

で居間に走って入ってくる。

相変わらず元気で俺も元気になれる。


「ええ、唯悧はなんだか明るくなったわね」


「う、うん。でも帰るならラインとかで

伝えてもよかったのに」


「惟信しか伝えていないからね」


「なんだとぉ~、わたしも伝えてよ」


頬を膨らませ反論する唯悧。

本気での反論ではなく、からかうような

遊び相手になってほしいそうな

声音で母さんに言う。


「ごめんなさい唯悧」


最愛の娘にそうされ嬉しさを隠しきれて

いない母さん。


「仲が良いんだね由布」


隣にいる高野は唯悧と母さんのやりとりを

微笑で見る。

二人は仲がいい。けど俺は忘れていない。

両親が唯悧を暗い表情を泣き続けたことを。


「だけど、俺は母さんをどうしても

仲よくは出来そうにないな」


「えっ?・・・高野それって・・・・・」


「なにもない。ほら持って行こうぜ」


「う、うん・・・」


すでに去っていた怒り。だけど記憶は

感情は両親の事情や苦しみなど考慮こうりょしていない。いや、いなかった。

理性や論理的に考えれるようになってから

でも感情と理屈は一緒になるし

かけ離れることは何度もそうさせる。

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