第22話 小さき白い星と煌めく黒い星

「改めまして妹さん。わたしは

高野大善たかのだいぜん。由布とは

あっ、お兄ちゃんとは親友をやらせて

いただいています」


高野が妹の唯悧に自己紹介するのは

いい・・・いいけど、

お兄ちゃんと甘い声音で言うのは必要が

あったのか?


「は、はい。お兄ちゃんが友達に家に

入れるなんて今までなかったので・・・

なんだか斬新だねお兄ちゃん!」


「ま、待ってくれ・・・いるよ友達は!」


今まで友達を家に誘うような相手がいなかっただけで・・・・・・


「妹さん・・・それ以上は

お兄ちゃんが苦しむだけだよ」


妹の肩を手を乗せて理解したような高野が

忠告のような事を妹に言う。


「そう・・・だね。

つい嬉しくなって、お兄ちゃんが友達に

出来たことなんて・・・」


優しく慈しむような唯悧の笑み。

な、なんだろう急に悲しくなって

来たぞ俺。妹に心配されるほど絶望的

だったのか俺って。ち、違うはず。

そう思わないと本当に泣きそう。

ニヤニヤしている高野は俺の前に行き――


「まぁ、どうせ妹さんの可愛さに

好きになるのが、不安で死守しようと

家に来るなとか恫喝まがいな事を

したのは明白だけどねぇ」


そんなシスコンな小学生ではなかったし

普通の妹として見ていたのだけどあの時は。

だから、検討違いだ高野。


「・・・イヤ、普通に友達が少なか――」


「なるほど。皆まで言わなくても大丈夫。

パトーナーのわたしには分かる・・・

あえて、友達を減らして妹さんの

安全を確保したわけだよね。うんうん」


ぜ、絶対に唯悧の反応を楽しんでいる。

いや、小さいとか小学生とか言われて

意趣返しだこれは!


「そ、そうだったんだ・・・嬉しいえへへ」


ああぁぁーーーー!唯悧が可愛さ全開の

笑っているのは嬉しいけど、

それだと小学生の時もシスコンだって

ことになるぞ!


でもこの笑顔を見ると否定が出来ない。

・・・しかったない。墓場まで持って

いくことにしよう。うん、これから

小学生の頃もシスコンだったことで

これから生きるとしよう。シスコンに

覚醒したのが最近だけど、もういいや。


「・・・唯悧、高野に挨拶しないと

いけないじゃないか」


「うん。そうだねお兄ちゃん、

わたしお兄ちゃんの妹の由布唯悧です。

これからもお兄ちゃんとは仲良くいて

ください高野さん」


素直に頷き挨拶する唯悧は、最後に

唯一の友達なので見捨てないで的に

聞こえてしまうのは俺がぼっちだからなの

だろうか・・・うん。きっとそうだ、

懇願しているとは思わないぞ!


「持ちのろんだぜぇ妹さん!

近い内に毎日おはようと挨拶

するようになるよ!」


ロリがサムズアップするとどうしても

年下にしか見えない。それと、また

高野の独特な言葉に俺はこめかみを抑える。

俺は慣れているが大袈裟おおげさ

事を言う節があって案の上、唯悧は

顔を傾げる。


「毎日ですか・・・ありがとう

ございます。」


怪訝そうにするが、天使の化身である

唯悧は明るく返答する。


「ぐっ、眩しい。由布がシスコンに

目覚めるのも納得できる話だぜ!」


「はいはい、で何して遊びますか親友の

高野様。」


「そうであるなぁ、まずは貴殿の部屋に

ある本をレンタルしたい」


「はいはい、マンガかラノベを借りると」


「理解が早くていいねぇ」


俺は高野ともはや慣れている

特殊な会話を繰り広げていると隣にいる

唯悧をさりげなく見ると

唯悧が少し不機嫌そうにしていたのだった。

き、気にくわないことがあったのだろうか?


「わたしも・・・・・行く」


唯悧が行くと言うのは分かっていたから

別に不思議ではないのだけど

使命感とか危機感のような感情が漂って

いるのは一体なんだろう。


「唯悧、来てくれるのはうれ・・・・・

えないけどなんだか焦りの色があるの

だけど体調がわるいのか?」


あ、危なかった。もう少しで嬉しいとか

出るところだった。

・・・それにしても憂えているって

咄嗟に言ったけど違和感がスゴい。


「平気。わたしが行くのは二人が

間違いが起きないか見張りに行くため!」


「理由までは訊いていなかったんだけど、

その・・・可能性はほぼ皆無だから

安心していいんだけど。」


「そ、そうだよ妹さんそんな訳が・・・

あるわけない・・・なな、な、な、

ないかひゃからね。」


「・・・どうしてそんなに戸惑っているの

か知らないけど高野、落ち着け」


「は、はい」


俯き始め敬語の返事をする高野。


「・・・・・・・えっ!?

高野さんは・・・・・」


高野の反応に何か勘づいていたのか驚愕する唯悧。その反応は震撼させるような色にも

見える。そう恐れたり驚いたりしているのは

なんなのか俺にはまったく分からない。

和気藹々わきあいあいと喋ると

思ったがまだ時間が必要のようだ。









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