第15話 貧乳剣士と烈火の騎士6

「で、なんで王族のこの子が、護衛のはずのあんたのそばを離れて行動していたわけ?」


ハンカチについたショタの汗の匂いを嗅ぎ終わり、冷静になったドクが鼻血を出しながら真面目な話を切り出した。

なんとも締まらない絵面だが、表情そのものは真剣だった。

それもそのはず、一国の主である王族が追手から追われている状態で、こんな山奥に一人でいたのだ。

よっぽどの理由がなければこんな状況にはならない。

「フム・・・そうですね、ではまず我々の状況について最初から説明しましょう。その方が手っ取り早いですし、王子よろしいでしょうか?」

「うん、どちらにしろドクには説明しなきゃいけないしね」

そう答えるショタの表情は心なしか暗かった。

「まず現王、つまりショタ様のお父様がとある事情で倒れてしまったことが事の始まりです。まだ亡くなられたわけではありませんが、もしもの時のため次期王位継承者を決める継承戦を行うことになりました」

「ええ・・・そこまではショタ君から聞いたわ、それでショタ君の周りの戦士じゃあ弟クンの専属騎士に勝てないからアタシを探してたって話だったわよね?でもさっき戦った感じだとレッカ・・・だっけ?あんたが戦えば楽勝じゃないの?」

「アハハハ、それならよかったのですが・・・恥ずかしながら私ではたぶん勝てないかと」

レッカは申し訳なさそうに笑いながら答える。

先ほどの戦いぶりを見る限り、レッカも相当な使い手であることは確かだ。

そんなレッカ自身が負けを認めるほどの相手

「へぇ・・・そんなに強いんだ、その人」

ドク顔つきが先ほどまでのたるみ切った顔ではなく、戦闘時の凛々しい表情に変わっていた。

そんなドクの表情の変化に気づかず、ショタは難しい顔をして先ほどの問いに答える。

「うーん・・・まぁ強いことは確かなんだけど・・・」

「?」

「相性が悪いというか・・・」

「どういうこと?」

どうにも歯切れの悪い答えでさる。

ショタの表情を見るとどうにも答えにくそう・・・というか若干顔を赤らめている。

「なんでショタ君が顔を赤らめているの・・・?」

ドクはそんな疑問を口にするが、その言葉に我を取り戻したのかショタがハッとして慌てて話を戻す。

「と、とにかく僕たちはレッカに代わる戦士を探すため、国内の情勢調査っていう名目でレッカを連れてここまで来たんだ!」

「そ、そうなの」

ショタの慌てっぷりに違和感を感じつつもドクは話を聞き続けることにした。

「ですがショタ様の弟君であるフォルタ様・・・というよりもその側近である専属騎士が我々の動きを察知したのか、秘密裏に傭兵団を雇って私たちの動きを抑えようとしてきたんです」

「国内にいる不穏分子が怪しい動きをしているから安全のためっていう名目で僕らを無理矢理城へ戻そうとしてきたんだ」

「なるほど、それがアタシの家まで来たあの傭兵団ってことね」

「近隣の村から抜け出したことに気づいた奴らが追ってきたので私が足止めをしてすぐに王子と合流するはずだったのですが・・・」

「その傭兵団の中に弟の専属騎士の『ジャノメ』がいたんだ」

ショタとレッカ、二人の表情が陰った。

「まさか私たちの妨害のためだけに出張ってくるとは思っていませんでした・・・完全に私の失策です」

「ジャノメはフォルタのことを第一に考えて行動するから・・・まさかフォルタの護衛から離れてこっちに来るとは僕も思っていなかったよ」

「それで・・・ショタ君だけでも逃がすためにレッカが足止めに徹したってとこかしら?」

ドクの質問に対し、レッカは若干悔しそうに笑いながら答える。

「ええ・・・まぁ決着がつく前にショタ様を発見したという報告を受けて退却してくれました・・・あの時は王子の身を危険に晒した自分の無力さを呪いましたが・・・改めてドク殿、ショタ様を守っていただきありがとうございます」

「えっへん、いいのよ気にしないで!カワイイ男の子のために頑張るのが私の使命なんだから!」

「・・・」

ショタは初対面でいきなりドクに襲われたことを思い出したが、ややこしいことになりそうだったので黙っていることにした。


話を一通り聞き終えたところで、ドクが腕組をしながら何かを思い出そうとしていた。

「うーん・・・ジャノメ・・・ジャノメ・・・聞いたことがあるような・・・あっ確か・・・双剣使いの『双頭のジャノメ』だったっけ?」

どうやらその名前に聞き覚えがあるようだ。

「よくご存じで。『双頭のジャノメ』若干15歳で王国騎士団に入団し、早々に王族直下の近衛騎士団に配属された超エリート女剣士です。剣技もさることながら、その美貌から国内外問わず多くの人から人気を集めていますね」

レッカの説明を聞いてライバル心に火がついたのか、急にやる気を出すドク。

「アタシも直接見たことはないけど噂程度には聞いてことがあるわ、この国で一番美しくて強いって言われているらしいけど・・・ふふふ今度の継承戦でその称号はアタシのものになるわけね!!」

(継承戦は一般に公開されないから国民には伝わらないんだけど・・・うーん、まぁやる気を出してくれるんならそれでいいか)

叶うことのない願いにやる気を出すドクに対し、ショタは若干の申し訳なく思った。

そんなこともつゆ知らず、ドクの妄想は続く。

「ああ・・・でもこの戦いで私の美貌が国中に伝わってしまう・・・まぁこれもショタ君のため、仕方のないことね・・・あ、いい?レッカ、あんたもアタシが美しすぎるからって惚れたりしないでよ!アタシは基本的に見た目が16歳以上は恋愛対象には入らないから!」

「何?その基準・・・」

全く持っていらぬ心配、ショタががっつり引いているのに対し、レッカは爽やかな笑顔でその可能性を否定する


「アッハッハ!なるほど、それは気をつけねば。王子と三角関係になるのはまっぴらごめんですからね」

「ちょっ!?レッカ!?」

まるでめちゃめちゃ笑える冗談を聞いた時のように、目じりに涙を浮かべて笑うレッカに対し、ショタは顔を真っ赤にして慌てた様子で先ほどの言葉を否定する。

「何か勘違いしているかもしれないけど!違うから!ホントに!」

「ええ、わかっていますとも、フフフ・・・」

ショタはレッカの体を掴み左右に揺さぶる。

自身の好意に関する話題を必死で否定するその姿は、年相応の少年の振舞いそのものであった。

変わらず笑い続けるレッカに対し、ドクは若干不機嫌そうな顔で文句を言う。

「・・・アタシ、そんなに笑える冗談を言ったつもりないんだけど・・・」

「フフッ・・・失礼、でも本当に安心してください、私がドク殿を好きになることはありません」

その言葉を聞き、よりいっそう不機嫌になるドク。

「どういう意味よそれ!アタシも別にアンタに惚れてほしいなんて毛ほども思っていないけどそんな言われ方すると腹が立つわ!」

ドクは立ち上がってレッカの胸倉に掴みかかった。

「ド、ドク落ち着いて!レッカも言い方を考えて!」

先ほどまで顔を真っ赤にして慌てていたショタも、ドクをなだめる。

「ショタ様・・・申し訳ありません、私は嘘がつけないので・・・」

「ちょ、レッカ!?それ以上は言っちゃダメ!」

ショタの制止も空しく、レッカは一切表情を崩さず、爽やかな顔のまま言葉を紡ぐ。


「なぜなら・・・私は



バストがEカップ以下の方は女性として認識していないので!」



「・・・は?」


ドクの全身から殺気が出ているのをショタは感じ取った。

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肋骨浮き出る貧乳剣士と金髪碧眼ショタ王子 膝毛 @hizage

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