7

 近く大岩を飛び乗り、てっぺんに堂々と立つ。


 竜二はしばらくの間、月の光に当てられているサーシャの後姿を見ると、風に揺れる長い髪が綺麗だと思った。例えるなら夜の魔女。


 ————炎の魔女より夜の魔女の方がしっくりくるように見えるんだが……。


 幻の遺跡。


 そこはサーシャ・ノグワールの墓であり、実際に周りからしてみればこんな場所を見たとしてもどうって事はない。


 しかし、こんなきれいな場所に建てられた師にとってはうれしいと思うだろう。


 だが、この遺跡の本当の意味は他にもあるらしい。


「竜二たちはこの場所がただのお墓だと思っているだろうけど、それは違うんだよ。もちろん、ここは私の師の墓だけど、もう一つ、同じ場所に違うものがあるんだよ。こっちに来てみればわかる」


 そう言われて、竜二たちはサーシャの元へと近寄る。


 彼女がさす方向を見ると、滝の向こう側への道がかすかに見える。それにまた、新たな洞窟が見薄っすらとぼやけて見えるのだ。


「あれはこの遺跡の本当の姿だ。滝に隠れてはいるがあの先には面白いものが見れる。あそこまで案内しよう」


 サーシャはそう言って、岩から飛び降り、滝の裏にある洞窟に向かって歩き始めた。


 洞窟まで行く道はあまりにも狭く、一つ間違えれば谷底へと真っ逆さまに落ちてしまいそうだ。おまけに今は足場が悪く、暗くて慎重に歩かなければならない。


 洞窟内部は綺麗な結晶が輝き、中はさっきまでよりも明るかった。


 まるでこの洞窟自体が生きているかのようだ。


 そして、遺跡の中心部にたどり着くと、中央に神殿らしき建物が建てられていた。


 サーシャは近くにある灯りを灯す台に近づき、火を灯す。


 ここ遺跡内はそこまで気温が下がっておらず、むしろ次第に暖かくなっていくのだ。この謎の神殿を目の前に二人は息を呑む。


「竜二。あなた、これが何なのか知っている?」


 しばらく、神殿の周りを歩いていると、全く分からずじまいに終わる。


 さすがのミラでも見たことのない神殿が何なのか知るわけがない。


「俺が知るわけがないだろ? この世界に来て、未だに知識が浅いのに……」


「そうよね。でも、こんな立派な神殿は初めて見たわ。サーシャさん、この神殿が何なのか知っていますよね? これは一体何なんですか?」


 ミラが竜二に訊いたのを間違ったように思い直し、サーシャにこの事を訊く。


 ふっ、とサーシャは息を吐く。


「ここは火の魔導士による神殿よ。その大昔、ここでは生贄に火の魔導士を使っていたと言われている」


「魔導士を生贄に? 何のためですか? 確かにいろんな説では魔導士を生贄にする禁忌魔法が存在すると聞いたことがありますが……」


「そう、その禁忌魔法が行われた場所だよ。この神殿は……」

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