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「足を止めないで! この流はやばすぎるわ! 私が何とか魔法で攻撃しながら逃げるから竜二は私の前を走ってくれる?」


 と、言いながらミラは逃げると同時に魔法を竜にぶつける。


「ストームエッジ!」


 この大いなる風を利用して、ミラは無数の竜巻を作り上げ、竜に向かって放った。


 さっきの雷とは違い、威力は似たような魔法である。彼女の造り上げる魔法は無数のような感じがした。


「……くっ、こんなに魔法を放っているのに全くダメージが無いんなんて……。どれだけの耐久力なの⁉」


 全く傷の一つも傷つけられなかったミラは、悔しそうにする。


 そして、ドラゴンの翼が一度大きく羽ばたく。


 これだけありったけの魔力を注いだ魔法がことごとく敗れるとなると、これはもはや世界の終りに近いと実感させられる。


 ハーバスの方からは人々が逃げ交わる声が聞こえてくる。


 木の葉は全て散り、ドラゴンから放たれる咆哮ほうこうは街の方向に向かって放たれる。


 街は壊され、人は怪我をし、殺されていく。このドラゴンは破壊を楽しんでいる。力のない無の生き物に容赦なく自分の力を見せつける。


 二人はその杜撰ずさんな街の姿に唖然としていた。


 街はほぼ壊滅状態。跡形もないほどに悲惨な末路。


「……おいおい、これは洒落にならねぇーぞ。ミラ、他に強力な魔法はないのか?」


「あることにあるけど……。それには時間がかかるわ。だけど、あのドラゴンに効くのかは別だけれどね……」


 ミラと竜二は走ることをやめ、ドラゴンを見上げた。ミラの魔法では絶対に対抗できない。そんな事は承知の上で訊いていることだ。おそらく、彼女も同じことを考えているであろう。

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