第4章  気象の巫女

4-1

 翌日————


 今日はサーシャから炎の魔法を教えて貰う予定だったのだが、生憎、都合が入ったらしく、今日一日、暇になった。


 さて、今から何をするか……。


 竜二が軽く溜息をついた時、ミラは空を見上げていた。彼女の左肩には小鳥が止まっており、何か話をしている。


 こうしてみていると普通の可愛らしい少女にしか見えない。


 ミラの表情も透き通った声も、とても楽しそうだった。


 数分ほど、その小鳥と話を終えると、ミラがいきなりこっちを見た。


「竜二。今日は一日中何もすることはないわよね? これから時間あるかしら? 大丈夫、少し歩くだけよ」


「まあ、修行は明日からだからな。一日中暇だけど……」


「そう、だったら今から山登りをするわよ。私について来てくれる?」


「はぁ? なんで俺が?」


 当然のようにいきなり山登りをすると言い出すミラに、竜二は困惑した。だが、断るとなんだか怖い予感しかしない。


「この地方の風が変わったのよ。さっきの小鳥が言っていたわ。私も嫌な空気が流れているのを感じているのよ。だから行ってみても損はないわ」


 彼女曰く、そうなのだろう。


 まるで天気予報士みたいな人だ。体で感じ、実際に目を見て自分なりに情報を集め、細かく分析をする。


 どこかの兄との違いを思い知らされて、竜二は憂鬱な気分になった。


「ということだから、すぐに出発の準備をするわよ。サーシャさんが返ってくるのは夜頃、それまでには帰ってくるわよ」


「……はぁ、山登りはまた面倒だな」


「これも魔法を極める者だと思えばいいわ。体力が上がれば魔法の威力も変わってくるものよ。常に魔導士は体を鍛えるものよ」


 ミラが微笑んで言った。


 内心、何やらソワソワしていて、楽しそうにしている様子だったのが、今は彼女の空気が変わったのを感じる。


 簡単に言えば、魔導士の顔だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る