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 そして、竜二は一つ思いついたことがあった。


「俺、少し携帯で話す奴がいるから少し待っていてくれるか?」


 ミラは小さく頷き、近くの木の下に寄りかかる。


 家を出る前に紫苑に渡された道具をパーカーのポケットから取り出す。携帯のようなもので携帯電話ではない。どうやら紫苑だけに繋がる魔法道具らしい。そして、紫苑の名前が書いてあるアプリを起動させ、耳にかざす。


『お、これから電話してくるとはあいつとは会ったんだな』


 火神紫苑かがみしおんの声が耳元に聴こえた。


「ああ、相当怒っていたけどな……。すぐに理解してくれたからこっちは楽だったけど……」


『ははは……。そうか、あいつは今でも元気だったか。それならいいんだが、本題はそれじゃないんだろ?』


「そうだ。兄ちゃん、炎帝竜の事は前々から知っていたんだろ? なんで、兄ちゃんが討伐しないんだ?」


『俺だと勝てないからだ。それに炎帝竜は相当厄介だぞ。どらごんの中でも物凄く能力が高く、知識も豊富だからな。炎の魔導士になった物はいいぞ。かっこよくて』


「それを俺にやらせようとしているのはどこのどいつだ!」


『まあ、そんなに焦るなよ。言っておくが、こればかりは俺の地彼でどうにもならない』


「最初から当てにしてないよ。それよりもミラ・アルペジオについて訊きたいことがあるんだが、兄ちゃんの知り合いだろ?」


『お前、ミラに会ったのか⁉』


 急に驚いて、耳元で大声を出す。


「ああ、今、俺の近くにいるよ。そっちの世界のイギリスで会った。彼女は何者なんだ?」


『………………』


 紫苑はいきなり黙りだす。


 竜二の顔が、苛々に押しつぶされそうだ。

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