第23話 触手だからって天空を目指さないとは思うなよ


 見たこともない大きさの見たこともない塔、そしてその素材もよくわからないものだが、そんなところに人間は普通に住んでいた。いいのかよお前ら。住んでる人たちは普通のカッコだな。その一方で、なんだか見たことも無いような機械やらクスリやらが色々と店に並んでいる。なんだこれってモノがたくさん転がっている。


「これは……一体……」


 ブレンが機械の1つを持ち上げる。変な穴がたくさん開いている。店主がニコニコしながら説明をはじめる。


「ナベに火をかける道具です」

「こんな小さいのに!?」


 何故かヴァンパイアが驚いてるが、こいつ血以外の料理得意だからなぁ……俺も食べさせてもらったが中々なものだった。始祖も意外に上手ではあったが。見習えエウロパって痛い痛い痛い触手引っ張るな!


「ちょっと触手!イヤなら料理当番させないでよ!」

「でもなぁ……旅してるんだから交代でやった方がいいだろう触手」

「そうはいうけどな、ブレン。お前より下手な奴にさせたいか?」


 ちなみに始祖ほどではないが俺とブレンもそれなりにできる。随分脱線したがこの道具は便利だ。


「しかし、火をかけるためのってのが必要なのですが、あいにく見つかっていません」


 なんだよ単なるガラクタかよ……一同失望の目で店主を見る。そうなのだ。ここの多くの品は天空にそびえ立つ塔から発掘されたモノであるが、遺失技術ロストテクノロジーの塊のモノだらけで、ほとんどのモノが使えないシロモノなのだ。


 薬なども同様であるが、稀に使えるモノも見つかっている。保存のいい甘味料などが発見されたようだ。ひと匙で1つの樽が甘くできる甘味料すらあるとのことだ。そんな中、始祖が何かを探しているようだ。何を探しているんだろうか?


「見つからんのう」

「何がだ?」

「精力を活性化させるような薬とかないかのう」


 やめてくれ!これ以上壁を叩きたくないんだ俺は!しかし始祖としても切実なようではある。


「四年に一度のチャンスなのじゃ。ここは全力で頑張らないと作れるものも作れぬ」

「それは困るよね……」

「わかるかミノタウルス娘」

「ぼくだってブレンのブレンがずっとこのままじゃ困るからね」

「じゃろ。ここにその治療薬でもあればのう」


 ヴァンパイアがブレンにぼやいていたのを聞くと、人間の体力の10倍のヴァンパイアが死にそうな顔になっていたという。受精率が極端に低いため死ぬ気で頑張る必要があるという。不死者が死ぬほど頑張るとは一体。


 俺たちが薬屋をウロウロしていると、どうやらその系の薬もあったようである。しかし、売り切れている。


「これは、一体?」


 ブレンが指差している絵にはpha…?なんて読むのかよくわからないがそのような文字が書いてある青い錠剤が映し出されていた。


「あんちゃんのような若い子には要らない薬だぞこれは」

「どういう薬ですか?」

「……これあんちゃんが飲んだらあんちゃんのモノが立ち上がりっぱなしになるぞ」

「ブレン、これは……」


 エウロパが目を輝かせている。そんなに繁殖したいのかよこいつは。


「店主、この薬はもう手に入らないのか?」

「今はない。だが、この塔のどこかにはこの薬の作り方を書いたなるものがあるらしい。それを薬を作る機械に入れると……という話があるな」

「本当か?」

「ああ。だが、そのがどこにあるかはよくわからない」


 そんなあるかないかわからない伝説に縋るのはどうかと思うが、その一方でワラにも縋りたい気持ちもわからないではない。


「どこにあるかわからない?」

「うむ。だが、この塔のどこかに、様々なを格納しているがあるという」


 なんともアバウトな話である。とはいうものの、ほかに当てはない。ふわっとした情報を元に、探しに行くのもそんなに悪いことでもないかもしれない。


「どうする?」

「ブレンが探しに行きたいならぼくも行くよ」

「妾たちの欲しいものもあるかもしれぬな」

「そうか。なら行くか。触手はどうする?」

「ここまで来て待ってるのもなんだからな。カネになるものもあるかもしれないしなぁ。行くか」


 こうして俺たちは塔を目指すことになった。塔を登ろうとして割と驚いたのだが、結構な数の冒険者たちが塔を目指している。よく考えてみたら古代の遺産が山ほど転がっているのだ。探さない法はないだろう。だが。


「大変だ!野良マシンの襲撃で怪我人が出たぞ!」


 結構危険な感じではあるな。どうやら塔を守るための防衛機構が暴走しっぱなしなようである。タチの悪いことに、防衛機構のエネルギー源は宇宙にあるらしい。


「宇宙に?」

「そうじゃ。太陽の光で機械自体を作ったり、防衛機構を再構築したりするのに使っておる」


 なんてこった。そうなると、無限に沸く機械自体がもう厄介だな。モンスターと変わらない代物じゃないか。しかしそうなるとこの過剰戦力も必要になるかもしれないな。そんなことを考えていると。


「紫の小鬼だと!?」

「そうだ。そいつが何かの機械を使って魔物の頭に何かを植え付けようと」


 ここにもかよ!どこまでも因縁があるな!そろそろ決着つけたいんだけどな!ついでにブレンのブレンを治す薬とかヴァンパイア夫婦を妊娠させるクスリとか見つかるといいんだがな!

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