第24話 触手だからってアイテムを漁らないとは思うなよ


 塔を登り始める。未知の素材でできた塔にはエレベーターとやらもあるようなのだが、基本的には階段での移動が中心である。というのも、エレベーターのほとんどが使い物にならなくなっているのだ。使えるものもあるが、それは逆に機械たちが地上を目指すために直したようである。危ない。


 作った連中もこんな未来まで塔が維持されているとは思ってなかったのだろうか、それとも維持はされてるが作った連中の勢力がこの世から無くなってるとは思わなかったのだろうか。多分後者だな。


 とにかく塔を登って行くと……高さ数百メートルくらいのところに、なんか街があった。


「なんでこんなところに」

「ここまでは観光も兼ねたものでして」


 近くにいた案内の人がそのようなことをいいだす。どうやら数千年前も、この辺りは塔の近くに来た観光客の土産物屋だったらしい。人間のやることってそう変わらないんだろうな。気がついたらファブリーがいない。どこ行った?


「えっ、なんか凄い買い込んでるけど、ファブ」


 串焼きを数本咥えた上、パンやら肉やら何やらたくさん抱えているファブリーを俺たちは無言で見つめた。


「お腹、空いてるの?」


 エウロパのその問いかけに、ファブリーは串焼きをくわえながらうなづきで答えた。走ってこなくてよかった。人間の世界に、「ヤバい遅刻遅刻」とか言いながらパンをくわえて走ると男女がつがいになるという伝説があるらしいが、串焼きではダメなんじゃないか?


「しかしまたたくさん食うのう」

「……龍形態になったあと人間形態になると消耗するの。これでも全然足りない」

「見てるだけでお腹いっぱいだよぼく」


 まぁそうだな。しかしこんな細い身体のどこに入るのか呆れるとしかいえない。


 ファブリーの腹ごしらえも済んだので、いよいよ本格的に危険な塔に登ることになった。危険エリアに入ると早速飛んでくる機械が多数ある。触手ではたき落とす。弱い。


「おい、触手、俺にもやらせろよ」

「心配するな、どんどんくるぞ」


 ブレンが運動不足だそうなので、しばらく暴れさせる。……やっぱりこいつ人間辞めてるよね。危ないよね。


「虫かなんかと同じだよなぁ」

「いや、ブレン、せめて小鳥くらいだろ」

「お前ら、強くなりすぎだろ……」


 小鳥くらいの強さしか無いと思うんだが。成長速度で劣るヴァンパイアが俺たちを恨めしそうに見ている。その分お前は長生きすんだろう。始祖と子孫とで末永く死ね。


「戦力はきちんと確認せねばならんぞお主ら」

「始祖の見立ては?」

「ん?なんかおったか?」


 気づかず自動魔法で破壊してるじゃないかこいつ。見立てとはなんだよ。そうこうしているうちに今度は人型の機体が複数何かを撃ってきた。なんだろうあれ。水の障壁を唐突に展開するエウロパ。


「ほら、触手。早いとこ倒して」

「んじゃ触手砲で」


 そこらへんに転がっていた長細いものを触手から撃ちだすと……撃ってきた機体が吹き飛んだ。なんだったんだアレ。


「爆薬だったようじゃな」

「古代人って馬鹿なの!?」


 いきなり吹き飛ばなくて助かったが、その一方でエウロパには全く同意である。適当に拾ったものが爆薬とか、危なすぎないかこの塔。襲撃してくる機械を適当にあしらいつつ、塔を登っていく。階段が行き止まりである。どうやって登ろう?そう思っていたら、突然壁が開いた。何故壁が開く?


「また来たぞ!」

「しつこい!」


 ブレンとファブリーが、群がりくる人型の機体を一刀のもとに袈裟懸けに斬り捨てる。後ろから出てきた機械も、俺が触手砲で吹き飛ばした。


「なんだったんだ全く」

「上に行けるようだよ」


 エウロパの言う通り、どうやら上に行けるボタンがある。この上にも機械が多数いることだろう。しかし、見たこともない色々なものがある可能性も高い。となると。


「行くしかないな」

「じゃな」

「何かいいものがあるといいわね」


 全員が乗り込んだのを確認して、上のボタンを迷わず押した。結構早い。……しかしエレベーター登る時、人は何故上を向いて無言になるのだろう……。しばらく登った後、エレベーターがたどり着くと……また機械の群れだ。いい加減にしろ。


「触手、なんかまとめて吹き飛ばせないか?」

「無茶言うなよ」

「でもうっとおしくないか?」


 そりゃまぁそうだが、地道に破壊するしかないだろう。俺はとりあえず、そこらへんにあるブロック状のモノを触手で掴んで投げつける。機械が反射的に何かを撃ち出し……おいまたなんか爆発したぞ。いい加減にしろ。


 そういう戦闘を繰り返して数時間、流石に疲労がたまってきた。どこかで休みたいところだが……。触手を伸ばしてあちこち探しているとだ。


「なんか休めそうなところがあったぞ」

「本当か?それは良かった」


 椅子とかベットもあるし、休めそうではある。しかしなんで白っぽい部屋なのかはわからないが。一同一休みして思い思いにくつろぐ。その間も俺は触手を伸ばして部屋の中を探っている。すると。


「なんだこれ?」


 ガラスの管のようなものを見つけた。なんだこれ。


「注射器じゃな」

「ひょっとして、これ、俺があの紫ゴブリンに何かされた……」

「どうやらここは治療を行う部屋のようじゃな。薬とかもあるかもしれぬ」


 始祖のその言葉に一同あちこち探してみた。だが、それらしいものは見つからない。


「ダメだね、見つからないよ」

「そうじゃの」

「あら?これ何かしら」


 ファブリーが持ち上げている機械に、何やら多数の白い粉や液体が付いている。これは一体……。


「薬品の合成機械かのう」

「つまりそれって……」

「そうじゃ。無数に作らねばならない薬をつど作るより、必要に合わせて作る方が効率的だと考えたんじゃろ」


 なるほど。これは持ち帰った方がいいな。その後ろに白っぽい服がある。これはなんだ?


「この服は……」

「どうした始祖?」

「う、うむ。今日はここで休むとしよう。わしとこやつはこの部屋で、お主たちは反対の部屋で寝ると良い」


 何をする気だよ。でもこの展開はおそらくそうなんだろうなぁ。


 その晩、始祖とヴァンパイアは白衣を着て繁殖行為に勤しんでいたようである。なんでもナースプレイとかいうらしい。当然のように壁を叩いた。ブレンたちはぐっすりと寝ている。お前らあいつら繁殖活動してても寝れるんだな、これだから体育会系は。文化系触手は今日も睡眠不足である。


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