第10話 鍛治師組合

 冒険者組合で報酬を受け取った後、そのまま俺は鍛治師組合へと足を向けた。

 鍛冶師組合とはその名の通り全国にいる鍛冶師たちを取り纏める組織のことである。

 かくいう俺も鍛冶師としてこの組合に所属している。

 そんな組織になぜ俺が足を向けたのかというと昨日キンバリーさんから聞いた話を鍛冶師組合で確認するためである。

 ついでにレンタルの鍛冶場を借りて俺の新しい武具を造るつもりでもある。


「すまないが少し聞きたいことがある。」


 俺は組合に着くなり受付の返答を聞かずに尋ねた。


「申し訳ありませんがどちら様でしょうか?」


 受付は若い男性で獣人のようだった。

 俺は組合員証を示すことを忘れていたことを思い出して鍛冶師であることを示す組合員証を受付に提示した。


「トルゲ様ですね。それでお聞きしたいこととは?」


「俺の勤めていた先の工房長であるゴッツ・ゼネシー親方が冒険者組合で鍛冶協力依頼を出していた。親方は工房を畳むと言っていたのにだぞ?しかも、鍛冶協力依頼ならこっちの組合で募集するほうが良いだろうにわざわざ畑違いの冒険者組合に依頼していた。なんかあると思うだろ?そこんとこ組合は何か知らねえかな?」


 キンバリーさんからの情報は言わないようにして組合がどんな対応をとるのかまずは見ることにした。

 すると受付の男性は目を見開いて心底驚いたような顔をしたと思ったら「少々お待ちください。」と言った後、受付から飛び出して2階へと走っていった。

 少し待っていると2階から受付の男性が緊張した様子で現れた。


「トルゲ様、組合長がお呼びです。すぐに組合長室までお越しくださいますようお願い申し上げます。」


 受付の男性は頭を下げてそれだけ言うと受付業務へと戻って行った。

 俺はいきなり組合長に呼び出されることになろうとは思っていなかったので驚いてしまった。また、ゴッツの親方の件が鍛冶組合にとってどれほどのことなのかを認識してしまい迂闊に受付で聞くんじゃなかったと後悔した。


◇◇◇


 幸い組合長室は2階に上がってまっすぐ行った奥にあったので迷わずに行くことができた。

 俺は扉の前まで来ると一度深呼吸した後、扉をノックした。

 すると少しして返事があったので入室した。


「トルゲです。呼び出しにより参りました。」


「そう緊張しなくても良い。座ってくれ。」


 受け答えたのは男のドヴェルグだった。

 その男性はドヴェルグ特有のもっさりとした髭を三つ編みのようにいくつか束ねており、服装もところどころに刺繍が施されている高級なものだと素人でも見るだけでわかるものだった。

 俺が勧められるままに見るからに高級そうな椅子に座ると男性は棚から蒸留酒だと思われる酒を取り出して自分と俺の分のグラスになみなみと注いだ後自己紹介した。


「解ってると思うがおれはこの鍛冶師組合の組合長であるヴィルギルという。まあ、まずは飲め。」


「いただきます。」


 グラスに入った酒を一気飲みした後、組合長の話が始まった。

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