第3話 暗い世界に響く歌声

 獣の背中に乗ってから、どれほどの時間が経っただろうか。周囲は相変わらず暗闇のままだ。深く、暗い世界をひたすらに走り続けていた。


 突然に獣は走るのを止めた。青年は獣をいたわると、背中から少女を下ろし、青年も降りた。青年は獣をなで、暗闇へと送り返した。


 2人は少し歩き、近くに洞窟を発見した。今日はここを寝床にするようだ。青年は少女にここで待つようにさせると、暗闇の中へと消えていった。少女は洞窟で1人歌っていた。青年の無事を願っていた。


 少し時間が経ち、青年が帰ってきた。木の葉と枝を宙に浮かせて持ってきた。それらを整えると、少女のためのベッドを作った。青年は洞窟の入り口が見える位置に座ると、鋭利なナイフを握りしめていた。

 少女は不安げにそれを見つめていた。そして歌った。安息の夜を願って。

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