壁の焼跡

長方形の焼跡は億年の時を経て

掘れば首長竜の化石が眠っていて

あなたの声も眠っているだろう


倦んだ日々に

燃え尽きていった

古い絵葉書

切り抜きの地図

杭州西湖へと

引かれた

朱墨の線上の

指紋の顔も忘れて


座標を失い

突き立てられた

ピンは

壁に

刺さったままで

春の陽を待ち

浴びている

わたしは

ピン


冬を刺繍された蛹


長方形の焼跡からのびゆく

春の葉脈に根をはる蛹

その根元にはさざめきながら


いつかの

声の化石が

瑞々しく

崩れている

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パッチワーク 帆場蔵人 @rocaroca

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