春と冬の間

くちづけのたびに

ひと綴りの紙片が舞う

雪よりもなおつかめない

詩はだれが記したのか


あれは確かに冬のした

美しき冬の舌、甘やかに

ひと綴りの詩篇が絡みあう


やがて春告げ鳥が

冬の死を告げても

あの丘にたたずみ

青い蜜柑の仄かな

香に身をまかせて

温んだ風を浴びて


冬を刺繍した蛹は

春の陽の脈を打ち鳴らす


詩片よ

春の陽に透けて

青空に融けてゆけ


けしてつかめぬものとなれ

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