第3話 ステータス

 思わず食い入るように見つめてしまった。俺のステータス。

 なんてこった。


 月影 圭吾(男)


 ・種族 悪魔


 ・属性 闇  属性スキル 魔眼(空間認識能力)


 ・魔法武器マジックアーツ ライフル


 ・Level.95

  ・体力 9500

  ・魔力 9500

  ・精神力 87000000


 「皆さんがチートと呼ぶものはレベルが最初から10000付近であること。また、体力、魔力、精神力の値はレベル値×100になっていること、自分の属性に関わる属性スキル、魔法武器が使えることの3つです。勇者の方は種族名の横にかっこつきで勇者と書いてあるはずです。かっこつきということはこれからその称号を手に入れられるということになります」


 うん、ツッコミどころいっぱいあるわ。まず、おれって人間じゃないんだね。これだけでも異質なのに精神力の値がおかしいこともある。これはいろいろ考える必要があるが、どうやってこのステータスをごまかすかが先決だ。


 うーん、もう少し詳しくわからないかな。スキルの魔眼を使ってみるか。物は試しだ。使い方はわからないが、眼に力を入れてみよう。お、使える使える。魔眼を使って見た俺のステータスは次の通りだ。


 月影 圭吾(男)  異世界人


 ・種族 悪魔

 

  ・悪魔はある程度魔法能力を極めると新たなスキルが得られるが、その場合今までの魔法能力はなくなる上に精神力値80000000以上が求められ、運良くスキルを得られても覚醒することはめずらしい。

    

 ・属性 闇  属性スキル 魔眼


  ・魔眼とは半径200メートル以内の空間認識能力

   とそれを応用した相手の記憶を読み取る能力の2つがある。


 ・魔法武器 レミントン700(ライフル)


  ・魔法武器とは自分の魔法支配領域内に存在する武器のことで自分の意

   思で出し入れが可能。このライフルは弾が1時間ごとに6発ずつケース

   内に補充される。性能は基本的に地球と同じ。


 ハッハー、もう何も言うまい。ステータスは適当に書けば誤魔化せるだろうが、問題なのはどう書くかだ。参考がいるな。


 「ここに百年前の勇者方のステータスがあります。各自に配りますので、ご自分のステータスと比べてみて下さい。ステータス用紙の提出は明日で結構です。ここにいるメイドたちがお一人ずつ部屋にご案内及びお世話しますので、今日のところはゆっくり疲れをおとりください。」


 これは都合が良いな。一晩ゆっくりステータスについて考えよう。

 ん?、今メイドとか言ったか? 

 

 「めんどくせえ」

 

 「影宮なんか言ったか?」


 「え?、いや、何でも無い。気にするな」


 しまった、つい声に出てしまっていたか。阿久津に聞かれてしまった。だが、本音ではある。俺は隣で興奮ぎみの阿久津や感激して涙を流している玉橋や少し照れている様子の福沢たちと同類ではない。自分のプライバシーを侵害されることがほんとうに嫌いだからな。

 

 俺の愛読書は太宰治の「人間失格」であるが、その文中には女に関する言葉がある。

  

 「いったいに女は男よりも快楽をよけいに頬張る事が出来るようです」と


 つまり一部の例外を除いて女という生き物は貪欲であることが多い。というか、俺が今まであってきた女がひどいだけゆえの偏見かも知れないが。

 俺が言いたいのは女は相手にするのがめんどくさいということだ。

 うん、メイドは部屋から追い出そう。決めた!


 「それではこちらになります」


 メイドたちについて目がチカチカしてくるような廊下を通り、階段を上がると、ホテルのようなところに着いた。


 「それではお好きなところにどうぞ」


 「おれここにしよう~」


 「じゃあ、わたしはここで」


 みんなはしゃぎながら部屋に入っていく。俺はどうしたものかな。何があるかわからないし、王女の表情も気になるから離脱しやすい階段付近の部屋にしておこう。後見人争いのごたごたがあったときのくせでどうも保身に走りやすくなってるが、俺は別に悪いことだとは思わない。


 願いには対価が、利益には不利益がつきまとうということは俺自身が一番よく知っている。このような待遇がどれだけこちらの世界では贅沢にあたるかわからないが、それなりのものだということはわかる。それにどこの国家も一枚岩であることはまずないから、慎重になりすぎるってことはない。


 そんなことを考え、気を引き締めてドアを開けると、きっかり90度に礼をしているメイドがいた。


 忘れてた・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 「お疲れ様です、旦那様」


 「うん、まず旦那様はやめよう」


 「ではなんとお呼びすればよいのですか?」


 へえ~、なかなか物わかりがいい。もう少し抵抗されるかと思った。それにしてもメイドなんて雇ったことがないから、呼ばせ方なんて知らないな。ていうか会ったのも初めてだし。


 「俺は影宮 圭吾。だから、影宮と呼んでくれるとうれしい」


 「わかりました。では影宮様と呼ばせていただきます」


 「君の名前は?」


 「ソフィア・ルージュと申します」


 「じゃあ、ソフィアと呼ばせてもらうよ。ところで3つほど質問があるんだけど

  いいかな?」


 「私が答えられる範囲でなら、喜んで」


 ふ〜ん、ねえ。


 「ひとつ目、君の今の行動は誰のどんな命令によるもの?」


 「リリー様による城の案内と部屋でのお世話でございます」


 「それは魔法的な命令?」


 こう聞くと彼女は驚いた様子で、目を見開いたが、すぐ元に戻って少しうわずった声で答えた。


 「そうです」


 ふふふ、期待通りの答えで楽しくなってきたな。素直な子は好きだよ、俺





 


 


 


   

  

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