第2話あのことの出会い

たまに人通りがあると友達と待ち合わせをしているふりをした。それでも、ランドセルを持った子供が1人でいると怪しまれることが多い。だからいつもランドセルは茂みに隠していた。

その日もいつものように茂みによると、

「えっ」

そこには昨夜の雨で凍えた猫が横たわっていた。


-気がつくとうちに連れてきていた

道ばたで倒れていた猫、病院へ連れて行くのもわからず、とにかく家に連れてきて毛布にくるみ、牛乳を与える。後にあまりいい方法でないことを知るが、その頃の私にはそれが限界だった。猫を助ける方法、温かいごはん、アイロンをかけられたハンカチ、同級生たちが当たり前にもらえるもの。それを私はもらったことがなかった。だから与え方もわからなかった。けれどその猫はずいぶん丈夫だったらしい。数日後には庭を走り回っていた。

しばらくして庭を出て行き、なんとなく、寂しいながらも帰って行ったのだな、と感じて安心した。帰る場所があるのは良いことだ。 

 けれどあのこは戻ってきた。最初はねずみをもってきたのでおどろいた。あのこなりのお礼だったのだろうか。その後もよくうちの庭に来た。私は猫をどうかまえばいいのかわからなかったので戸惑った。けど、あのこはただあしもとで眠ったり庭で歩き回るばかりだった。それでもなぜかしょっちゅう来ていた。私もとても楽しくなった。父親から怒鳴られ、庭で縮こまっていてもあのこがいると暖かく、安心する。


私は自分の家が客観的に見てどんな状況にあるか、わかっているつもりだった。受け入れているつもりもあった。けれど、あのこと過ごし、世話をしたり励まされたりして、自分がどれだけ与えられていないのか、どんなものを失っているのかを少し理解できた気がする。本当の家族というものはどれだけ幸せなんだろう。


私はあのこから生まれて初めて愛情というものを感じていた。


また、私は家族からの愛情というものを、求めるようになっていた。







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