第8話束縛の歌

「メル・アイヴィー。神殿外での祈りの歌は三年前から禁止している。しかも、朽ちかけているとはいえ、『希望の歌』を星樹の前で歌うとは!」

取り押さえられたメルを見下ろしながら、エビルはそう告げていた。


雨上がりの空のように、水たまりに映るメルの顔は、どこか満足そうだった。


「立て。さっきの少年はどこに行った?」

周囲を見回すエビルの声に、衛士たちは一様に首を横に振っていた。


「私以外に、人はいません」

「…………。メル・アイヴィー。禁止事項を破りし罪により、その声をはく奪する。これより一年その事をよく考えるのだ」

「………………」

神妙にしているメルを見下ろすエビルは、満足そうに頷いていた。そして、メルの首に黒いチョーカーをつけた。


――その瞬間。


メルの体に異変が生じる。崩れるメルの体を、衛士が両脇で支えていた。


「連れていけ、巫女様には私から説明する」

エビルの指示に従い、衛士たちは捕縛したメルを引き連れていく。

遠ざかる人影。

それを見送るエビルの口元が、緩やかに伸びていく。


「巫女様……。これでもう、あなたのメルは歌えませんよ」

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