第2話召喚の歌

目覚めてから、かなりの時が過ぎていた。星樹の息吹と共に、周囲の音を感じる少年。


土の香り、風の音。風の匂い。鳥たちのうた。虫のうた。雨の音。

そして、人々の営み。その心。

それらの響きは、少年の心を形作り、満たしていく。


やがて少年は知るようになる。

黒い世界で、波紋のように広がっていたその正体。

それが雨だと知った少年は、それに強い興味を持つようになる。

やがて興味は好意に変わる。


そして、少年は求めはじめる。少年の心を灯した温かな歌を。


――あの歌が聞きたい。


満たせぬ心は渇望し、いつしか少年は決意する。


――探しに行こう。あの歌を。


少年は願う、母なる星樹に。

そして、星樹は少年の願いを聞き届けた。


――召喚に応じよ。久しき、いとし子。二度生まれし汝は、雨の時だけ地上にでることを許される。ゆめゆめ己の使命を忘るることなかれ。我に残されし時は少ない。――


かくして少年は使命と体を得る。そして、雨降る間だけの自由を得た。


喜び勇んで降り立つ大地。そこには一人の歌姫が待っていた。


「生まれてくれてありがとう。これでもう大丈夫。あとは、あの子に――」


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