第5話

 出発から五時間、海沿いを外れ、山中で人里を探していた。家は残っていても人の気配は微塵も感じない。時間は昼前ほどだろうか。この辺の町や村はある程度調べ、次の村で最後だ。この村に誰も居なかったらもう一度北上を続けよう。

 海沿いの道路に出て小さな半島の先っぽにある村にたどり着いた。だがやはり人の気配は無い。予想は付いていたがなんとなく気分が落ち込み、防波堤の近くで休憩を始めた。

 ヘルメットを脱ぎミラーに掛け、マフラーを荷物の隙間に差し込む。そして防波堤の上に座り込んで海を眺めた。

 後ろを向くと少しはみ出たマフラーが風に揺られ、前を向くと日本海が見渡せる。


「抱えきれないほどの、情報に生まれた街で」


 うろ覚えの歌詞で小さく歌い出す。その歌声が潮風によってどこか遠くへ流されていく。

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