23話 エクストラミッション

少年とのびちゃんを部室に残して、私達は、とある会議室前に集まっていた。今日は、残りの全部とみどみどがいる。

「いえ、呼ばれたのはいいのですが……私完全にアウエイですよ。はあ……」

みどみどは、力なくため息をつく。まあ、みどみどを確保した私が言うのもあれだが、今回の作戦に、みどみどは必要だったのかは、分からない。先輩の考えは、私の次元を越している。

「でゅふふ。沼田氏もこんなロリッ娘幼馴染がいるなんてけしからん!」

普段は不潔な格好をしているくせに、今日に限って、綺麗なスーツ姿の先輩。うん、死ねばいいのに、ちゃんと物事は、相談してから実行に移してほしい。

「かほかほ、帰っていいですか?」

「すまんな、ウチの先輩は、キモイことには、定評があって……今回は、あの先輩が何をしようとしているのかが私にもわからん」

「みどり、騙されないで、果歩先輩ってなんだかんだあのキモイ部長のことを一番知っているから、実は、今回の事だって実は最初から聞いているに違いないわ。それとアンタら、いつからそんなに仲良くなったの?」

「ソウルメイトかな?」

いや、私だって先輩の企みを完全に理解しているわけじゃないからな。なんというか、ソフィアは、たまに私をあの先輩の理解者ポジにしたいみたいだが、分からないからな。

あと、みどみど、その説明では、絶対にソフィアには、伝わらないぞ。

そんな私たちを見て、先輩は、さも当たり前のようにとんでもないことを語りだす。

「さて、今回は、隠密に……ここ、大手ビルの一室の前に集まってもらったわけだが、我が部員hiyori……月夜野日和の受けるオーディションを公正にしようとしない輩の成敗をする」

「え?のび太ちゃんは、のび太ちゃんじゃない?うちにアイドルなんて」

「こ……この部長さん、ストーカー!」

「……おい、先輩」

この馬鹿、私とみどみど……しか知らないことをなぜそうも簡単にばらす?事実を知らないソフィアは、ポカンとし、みどみども変な驚き方をしていた。

「うん?hiyoriは、ウチの月夜野君が隠すもう一つの姿だぞ?僕は、今年の入学者の個人情報は、網羅しているからね?安心してくれ僕は、それを使って悪いことはしない。ちなみに証拠」

キモイ。純粋にウチの先輩が行っている行為は、気持ちが悪いものだった。のびちゃんの隠し撮り写真と画像にそれっぽい加工をし、hiyoriの姿に変えた画像をソフィアに見せる先輩。

分かりやすいが、今度先輩の家の家財道具をすべて破壊しておかないといけないな。

そして、比較が画像を見せられたソフィアは、疑いが確信に変わると性格なのか、会議室の前で物凄い大声で叫んでいた。

「いやいや!え!えぇぇぇ!嘘ぉ!」

『だ……誰だ!』

そして、この大きな声は、会議室の中にいる人にも聞こえたらしく、大慌てで会議室のドアを開けると先輩は、なにやら、不適な笑みでしゃべりだした。

「やあ、土岐崎君。元気かい?まあその様子じゃまた悪企みをしていたみたいだから元気だね」

「ゆ……ゆびお!おまえ、なにをしに!部活は、存続したんだもう用はないだろう!」

「おい、さん付けしろ」

「く……ゆびお……さん」

中から出てきたいかにもお偉いさんみたいな中年男は、先輩を見ると物凄く慌てていた。様子を見るに、部活の存続……去年、ウチの部活が存続不可能になりかけたという話をつい最近聞いたが、恐らくその時に先輩は、この中年男と取引をしたのだろうが、先輩のが完全に優勢であった。

「まあ、今日は、別件だ。今度土岐埼君の経営する会社でやるオーディション。下町ソレイユの恋物語だっけ、あの審査は、公正にやる様に忠告しに来た」

「マッテ……え……おい、糞部長……」

「ストーカーきもい……」

「あきらめようソフィア、みどみど。この糞先輩、もう止まらないよ」

こういう先輩を私は、みんなより一年長く見て来た私だから分かる。もうコイツは、止まらない。目的のためには、容赦がないから。私達は、見ているしかない。

「あれは、お前には関係ない。公正だ」

推測だが、のびちゃんは、アイドルとして、オーディションを受けるのだろうが、そのオーディションは、公正でない。だから中年の前に部長がここにいるのだろう。

「……某アイドルに枕営業。それに、最近また新しい車も買ったね。高級外車だっけ?あれは」

「な……何を根拠に!」

「根拠も何も僕の情報網に引っかかったことだし、証拠ももう集めている」

そういうと先輩は、一枚の紙を手渡す。うん、きっと政治的で汚いことがいっぱい書いてあるのだろう。それを見る中年だが紙の内容を見て中年は、笑い紙を投げる。

「ふん!ゆびおさん。アンタもあまくなったねえ、こんな証拠、金を握らせれば何とでもなるじゃないか。それに君に関係はないだろうこの件は」

「ん?うちの学校の生徒が、このオーディションに本気なんだ、それだけで今回の交渉理由にはなる。しかも僕は、まだカードを全部切ってない」

「なんだって……どういうことだ」

うん、分かった。コイツは、私達に協力を仰いで呼んだわけじゃない。最初から、交渉のカードにしていただけだ。それなら分かる私とみどみど以外……のびちゃんの正体を知らないソフィアを呼んだのは、驚かせて、相手に気が付かせるという事だった。乗り込むのは、簡単だが、警備員を呼ばれるかもしれないので、相手から、扉を開けさせたのだ。そして先輩は続ける。

「うん簡単だよ。僕の横にいる金髪美少女は、とある大会社……あぁアメリカの最王手、綿花企業の孫娘で、君らは、金を握らせて黙らせるのが常套句みたいだけど、彼女の一声で君らみたいな、しがない映画会社は、潰されちゃうだろうね?しかも、今度金で黙らせられないなら隠ぺいするかもしれないけれど、僕らとは、全く関係のない一般の女の子の声っていうのは、消せるわけじゃない。悪い噂程度は立つだろう。そして、暴力で僕らを殺すこともできない。ウチの部員の上級生は、乱暴事は、得意だからね」

「ゆびおさん……アンタやりすぎだよ?何がしたい、自分の学校の生徒を合格させたいのか?こんなオーディション程度にそこまでするか?」

中年男は、先輩の企みを聞いて、難色を示す。しかし先輩は、不適な笑みを溢す。うん、私達は、本当に交渉のカード程度には、役に立つようで安心したが、こういう流れに持ってこようとしたのには、私達交渉のカードは、苛立ちを覚えた。きっと、この先輩は、のびちゃんを裏取引で合格をもぎ取ろうとしていると思われている。私の後輩たちに。

私は、先輩がそう言う不正は、働かないような男ではあるのを知っているので後輩たちを両手で止めていた。まあ不正を働くようならこの場で先輩は、殺してしまうかもしれないが。

「そうじゃない、オーディション選考は、公平にするだけでいい。ウチの生徒の実力がないのに受からせてもいい作品はできないからね」

「その程度なら保障しよう……それだけか?」

中年男は、意外そうに先輩に聞くきっと前回は、もっとエグイことをしていたのか、表情が煮え切らないものになっていた。

「それだけ。まあ、オーディションは、見ているからね?変な動きをした瞬間会社はつぶれるかもね?それとこれは、契約だ。この契約書にもサインしろ」

「フン、しょうがない……まあ、私も自分の命は惜しいからな」

そう言い中年男は、契約書に目を通しサインする。うん、先輩は、最初から、これを狙っていた。正しい判断。それが欲しいだから。

「うん、ありがとう、じゃあ帰ろうか部員諸君……」

「先輩、覚えておけ」

「糞部長、説明責任は、果たしなさい」

「……うん、英二の入っている部活の異常性がいま直接見て感じてしまうなんて」

私達は、三者三葉な反応で、先輩を睨む。この後、先輩は、私達後輩に自ら行った今回の愚行を清算するのは、また別の話。

まあ、後は、のびちゃんの実力次第。先輩の話では、のびちゃんの正体を知る少年が付いているらしいのできっとうまくいくと信じている。

うん、私は意外と少年……沼田英二のことを信用……いや気に入っているのかもしれない。

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