第7話

 グリム学園体育祭から一週間。

 あの借り物競争の一件のせいで僕の周りは騒がしく……なんてことはなく、いつもと変わらないモブらしい日々を過ごしていた。

 レイナも出場した種目が二つだけだったしあまり活躍していない(本人談)から周りは大人しい。というか、クラスでのレイナは以前から話しかけられないような雰囲気だったけれど。


 体育祭が終わっても、相変わらず僕たちは一緒にお弁当を食べるくらいしか接点がなかった。自分のレイナへの恋愛感情を自覚したところで、ただの一般生徒モブに、『高嶺の花』に告白したりするような勇気はないのだ。

 いま、『一番仲が良い』友達だと思われているならそれでいいかと安心している部分もあるけれど。

 とにかく、僕とレイナの関係性は進展することも悪化することもなく、ずるずると友達関係のまま続いているわけだ。


 そんなある日の放課後、帰ろうとする僕にレイナが声をかけてきた。なんだか緊張感が伝わってくる。


「……エクス、部活って興味ない?」

「部活……?」

「そう! 実は部員が足りなくて廃部寸前なの……。良かったら見学だけでも来てみない?」


 確かタオとシェインと同じ部活だと言っていた。この三人と一緒にいると退屈はしないだろうけど、部活の内容にもよる。レイナがいるから運動系ではないと思うけど……。


「見学だけなら……。けど、それって何の部活なの?」

「合同美術部よ」


 合同美術部。

 話だけは聞いたことがある。中等部の生徒と高等部の生徒、どちらでも入部できるという珍しい部活動だ。だが知名度は低く、中等部専用の美術部や高等部専用の美術部、造形部、文芸部などと比べると部員数は圧倒的に少ないとか。


「じゃあ、さっそく美術室に行きましょう!」


 レイナとタオとシェインが美術部で真面目に活動しているところなんか想像できず、しかしだからこそそれを見てみたいと思った僕は合同美術部に見学に行くことに決めた。

 部活の時だけは真面目に、静かに、集中して取り組んでいるのかもしれないし、それはそれで面白そうだ。

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