Chapter6-1「昔話、そして」
「さて、昔話を…ってシーナさん、どうしたんですかその目隠し。カーネイジさんに目つぶしでも喰らいましたか。ウェステッドにおいて、最も優先的に再生されるのは感覚器官と聞きますが…」
「あ、これ?えーとね、ここに来る途中の町のお店で売ってたの。エルフが作る特別な眼帯でね、目隠ししても魔法の布で作られているからちゃんと見えるんだよ」
「アクセサリーですか。僕が生きていた時代にもたまに見かけましたよ。視界を覆うことで、見えないものに触れられるようになるとか。でもそんなズルじゃ、見えないものは見えないし触れられないでしょうね」
「見えないものは見えないままの方がいいって、怖い話でよく聞いたわ」
「そうですか。では、最初の勇者が世界を救った後のお話からですね…」
最初の勇者たちが魔王を倒した後、勇者は自分の村に戻り、他の仲間たちもそれぞれの故郷に戻ったと言います。その後、勇者は村の幼馴染と結婚し、寿命を全うしたとも聞きます。物語の記録者は、救った後のことはどうでもよかったのかもしれませんね。どの時代の書物や記録を見ても、勇者たちのその後については詳しく記されているものは見つかりませんでした。
中には、勇者たちはその後権力者たちに謀殺された、村も残っていないのは勇者共々消し去ったから…なんて説もありました。というか、
「まあ、その人はきっとハッピーエンドに後味の悪いものを追加するのが好きな人だったんでしょう。カーネイジみたいな」
あなたの後ろにいるカーネイジさんではありませんよ。何せ興味がなかったみたいでほとんど聞いてるようには見えませんでしたし。
さて、それから百年ほど経った、丁度僕のひいおじいさんくらいの時代でしょうか。
二代目の魔王を筆頭に、再び魔王軍が攻めてきたんです。
百年も経つとまた人間は戦争を始めてまして、亜人達はあれから何があったのか閉鎖的な社会を築くことが多くなりましてね、争うことはなくなったんですが人前にほとんど姿を見せることがなくなっていたらしいんでこの時はあまり関わってなかったみたいですね。魔物たちも、森林の奥深くや溶岩が近い洞窟、大砂漠のど真ん中あたりでやっと亜人種の集落を見つけたと報告するくらいには住処も険しかったり奥地だったそうです。
「ところで、ゴブリンたち魔物と亜人の区別って誰がしてたの?」
私達の判断ではゴブリンやオークは魔界側の種族なので魔のモノ。縮めて魔物としてました。まあ、私の時代から魔物はそう言われていましたんで気にした事はありませんね。転生者や貴方達があれこれ調べてましたが、ウェステッドは教えてくれないし、転生者は魔物と亜人は異なるものと判定を出したんでそれに従ってる状態です。
「どうして、教えてくれなかったんだろう」
調べてたウェステッドが死んでしまったりしたのもあったんですが、同じく調べていたウェステッドに聞いてみたところ「別に遺伝的に亜人種と人間と魔物は同じとかじゃなかった。つまらなかった」って…。
「つまらなかった?」そのウェステッドは、こうも人に近しいならそれぞれの祖先は同じものかもしれないと思ったんだそうです。事実、エルフとダークエルフは色合いが違うだけで種族上は同じですし。リザードマンは魔界に迷い込んだ竜人族の群れの末裔と言われていますから。
ゴブリンやオークも、人間や獣人族に近いものがあったみたいですが、別に種族としてのつながりはなく、魔界原産の、一から進化した人型生命体、だと分かっただけだった。みたいです。コボルドと獣人族は共通していたみたいですが。
まあ、僕は人と魔物と亜人の祖先が同じものという事実の何が面白いのか、分かりませんでしたが…椎奈さんは何か感じましたか?
「多分、争いを見たかったんじゃないかな。ゴブリンと自分たちの祖先が一緒なんて、いやな人は死ぬほど嫌だろうし。それによる混乱を、もたらしたかったのかも」
やっぱり世界を壊す者らしいですね、その思考は…それも、ウェステッドとしてのものなんでしょうか、それとも、その人は元からそうだったのか…。椎奈さんも、なにか破滅的な思想とか、浮かんだことはありますか?
「私は…ないかな…今はまだ…できればそんなこと思いたくないけど…」
思わずに生きれるといいですね。
さて話を戻すと、その時にも勇者は現れたらしいです。最初の勇者の子孫が、王国の近衛騎士をやっていたそうで。魔王がこの世界に足を踏み入れた瞬間に、魔王の出現を察知したのがきっかけだとか。
そうして勇者は再び旅をすることになり、仲間たちを集め、最初の勇者が成し遂げた試練、その成果とも言える竜の武器を再び揃えるという試練を成し遂げて再び魔王軍に立ち向かったと言います。
近衛騎士なんだから、何かしら伝手とかあったんじゃないかなって、ウェステッドは言ってましたね。なんだって少人数で向かったんだとも。
…その時も、人間同士の戦争で魔王軍どころじゃなかったんだそうです。
勇者が世界を救ったと言っても、救ったのは世界で、各国のいがみ合いを諫めたわけではなかったし、勇者もその仲間も政治に関わることなく姿を消してしまったので人間同士の争いには何の影響もなかったんです。
魔王が倒れて暫くは祝勝ムードで国同士仲良くなってたみたいですが、そんなのたった数年程度の勢い。それから少しずつ各国同士の不満が溜まり始めて、そしてまた爆発、再び戦争になったわけです。
「魔王なんてどうでもいいけど目の前の国は消す」
「だけど魔王に国を滅ぼされるのは嫌だ」
「だからまた勇者に始末させよう」
…みたいなことが、王国の極秘会議で話されていたとか。
最初の勇者と違って、二代目と仲間が戦っている間も戦争は続いてたそうですよ。幸いにもおじいちゃんの国は小国で僻地にあったので戦火が及ぶ前に大きな戦争が終わったらしいですが…
勇者はどうにか魔王を滅ぼしたそうなんですが、何が起きたのか、魔界がそっくりそのままこの世界に転移してきたらしいんですよ。それが今、暗黒大陸と呼ばれている場所なんですが。
その結果、魔物たちの目的の一つであった食糧問題や領土問題は解決したらしいです。まあ今も大変と言えば大変みたいです。
さて、魔王が倒れ、魔界もこの世界にやってきて魔物がいる以外特徴のない島となったことで今度こそ平和が訪れた…はずだったんです。
人間同士の戦争は続いてるし、亜人種たちも先祖代々の憎しみが何かの拍子に噴き出しちゃったみたいでまた戦争始めて。おじいちゃんの、私の国の近くによりによって鬼族と呼ばれる極東の亜人の末裔たちの集落があって、獣人族と戦争始めちゃって大変だったんですよ。
「私の国?」ああ、お父さんが早死にしてしまい、私が王になったんです。
王と言っても、形ばかりの王様で役に立っていたか…分かりませんが…。
小さい国だったんで世継ぎも私しかいなくて、仕方なく私が女王になったわけです。
その直後辺りに亜人種同士でおっぱじめたんですよ。もう迷惑でしかありませんでしたよ。興奮しすぎて訳わからなくなった鬼族と獣人族が照らし合わせたみたいに城下町に突っ込んで乱闘するわ、門の前が騒がしいと思ったら協力を強要しようと両方の使いが来ててその場で殺し合ってるし、保留したら近くの村の人間が食われて、生首が丁寧に私の寝室の窓から投げ込まれるわで頼むから病気が蔓延して死んでくれないかなって毎日神か悪魔に祈ったものです。
そんなこと祈ったから、今私はこうして死してなお動いているのかもしれませんね。
あるいは、そんな呪いのような祈りが、通じてしまったのでしょう。
私達の世界の神様にではなく、どこか別の世界の神様か何かに。
そうです。彼らがやってきたのは、魔王が、この世全ての悪と定められたものが倒れてもなお戦乱が続いていた時だったのです。
最初の転生者の名前は、伝わってません。「伝わってない?」ええ、実のところ、二人目も、一人目も、実は勇者は名前が伝わってないんです。名前や人となりだけが、まるで虫食いみたいに分からないのです。そして三人目の勇者と定められた彼もまた、名前は知られていません。
三人目の勇者もまた強大な力を有していました。違ったのは、修行や試練の末に会得した先代二人と違って、彼は初めから圧倒的な力を持っていたんです。
そして、彼の力の矛先は魔物だけではなく、人間と亜人でした。
今現在、セントレア王国と言う名前で存在する、
転生者が最初にやったのは、そうですね、あなた達の言葉で言うなら。
クーデターを起こしてその国を乗っ取ったんだそうです。
名前は伝わっていない割に行為については鮮明に残されてまして、セントレアと名前を改めた後、女王が言うには腐敗した貴族制度に革命を起こしたらしいです。
ええ、最初の犠牲者は女王となった王女以外の王家ほぼ全員、幾つかの将軍家、貴族たちでした。全員一方的に殺されたとも聞きましたが、その話が私の耳に入るころよりも早く、セントレア王国と名乗る謎の国の軍が亜人の戦いに介入してました。
今でも覚えていますよ。式典でしか見ないような、変に豪華な鎧を身に付けた、何とも言えない、これから何回も似たような顔を見るようになる顔をした、私と同い年くらいの青年が、魔法なのか分からない力を振るって、亜人たちを薙ぎ払っている姿を。
三本角を生やした鬼族の長老と、狼と鹿のいいとこどりみたいな外見した獣人族のリーダーをですね、ほぼ一方的に打ちのめして、それでも戦争を続けようとした派閥を皆殺しにして嵐のように去っていきましたよ。
ポカーンとしてる間に、国らしく各地に情報収集で飛ばした使者たちが次々と帰ってきてこう言ってきたんです。
「あの王国で革命が起きて、得体のしれない男が新しい王になった」
「セントレア王国軍と名乗る謎の軍勢が、色んな所で戦争を鎮圧している」
「王国の周りの国々が、併合されていった」
みんな第一声はセントレア王国。続いて出てくるのは、王国の快進撃でした。
ダークエルフの勢力を鎮圧した。という報告が入ったと思ったら、何とか帝国の首都が陥落した。どこそこ共和国の名無しさんが討たれた。あそこの国が降伏した。どっかのゴブリンの軍勢が消滅した。その辺のオークの集落が殲滅された。
そして最後に入ってきた報告が
「あの王国で革命が起きて新政権が出てきて、セントレア王国と名前を改めた」
「セントレア王国が三人目の勇者を発表した。三人目の勇者は、異世界から転生してきた人間とのこと」でした。
私も、貴族たちも、使者の報告を聞いた時「何を言っているんだ」って思ったし言いましたよ。異世界ってなんだ、転生ってなんだって聞きました。
当然、使者たちに答えられるわけがありません。言ってる本人も分からない顔してるんですから。かろうじて転生自体は落ち着いた時に生まれ変わりのことだって分かりましたが、異世界と言う概念は分からないままでした。
魔界は異世界じゃないかって?異なる世界だから異世界じゃないのって?あー…考えがそこまでいかなかったです…。魔界は魔界だって、ご先祖様の時代から言われていたので…
勇者が出たって事は、また魔王が現れたのか?とみんな思いました。
ですが、いつまで経っても使者たちは魔王の出現を見つける事はできず、代わりに王国軍が次々と他国に攻め込んでるという報告を持ってくるだけでした。
どこも、その当時から強国として知られていた国でした。一人で千人の敵を討ち取った戦士がいたり、魔力そのものと対話ができる魔女が治める国なんてのもありました。
そんな国々が、次々と攻め込まれては、数日後には陥落したか、併合されたという報告が入ってきたのです。ここまでくると、魔王軍とはこいつらなんじゃないかって、思ってしまうし、私の国のような、小さい国はみんな思いました。
そこでいつ彼らが大国を平らげた後に我々を襲ってもいいように、有志連合なる同盟のようなものを結成することを思いついたのです。それが今も続いている、周辺諸国と呼ばれる国々です。貴方が戸籍を偽った、ゴトランド自治区も、元は何処か小さな国か、国の一部だったのでしょう。
幸いにも、私と私の国が残ってる間に彼らが攻めてくることはありませんでした。
あの何とも言えない顔をした青年の顔が大空に映し出されたと思ったら、一方的に人類同士の戦争が終結したとか言い出した時は頭の病気を疑いましたが。
勇者の?いえ、私が見たその光景があまりにも現実離れしてましたので私の頭が。
とにかく彼の言うように戦争が終わったらしく、王国軍は引き潮のように王国に還っていきました。
言う通り、戦争は終わってました。
大国たちは大幅に戦力と国力を奪われて衰弱死寸前、あるいは併合され消滅。
名のある戦士たちの殆ども、勇者の手にかかりほぼ全滅。
亜人たちのいざこざも、当事者や中心人物の死と、過激派たちの全滅を以て終結してました。
三人目の勇者は、とんでもない血と死の果てに平和をもたらしました。
出来ればここで終わって欲しかったんです。本当に。
でもその数年後に、また別の国に転生者が現れたとか、誰が予測できるんですか?
そしてその転生者が「魔物たちは弾圧されている」とか言い出したとか聞いた三日後くらいに、暗黒大陸を乗っ取って「魔王」を名乗ったとか、シーナさん予測できますか?
その次に現れた転生者によって帝国が建国。名前はなんか長ったらしくて覚えてられなかったです。覚えたくもありません。みんなは
転生者は建国後に
何で覚えたくないって?ええ、その帝国とか言う国にですね、私の国が滅ぼされたんですよ。ビックリしましたよ。気が強そうな金髪の女の子が来たと思ったらですね、見た事もない魔法を私の城目掛けて放って、意識が戻った時には私の国は瓦礫の山になってました。後で調べたら生き残った国民たちは王国が救助したらしいです。
それと私がワイトになっていたのは、貴族たちが私に何かあった時の保険としてかけていた魔法なんです。それにしても、魔法の効果は切れてもおかしくないほど動いているんですけど。本来ならワイトになった私に蘇生魔法をかけて、元の肉体に戻すという作業があったんですが、それが出来る貴族は皆死んじゃいましたので、このままです。
それで今度はなんか学級?とやらが一斉に転生してきましてね、いやもう見てるだけで大変そうでしたよ。30人近い転生者がですよ、そこら中に散らばったと思ったら群雄割拠始めてるし。で転生者の殺し合いが終わったと思ったら、次はただでさえ何言ってるのか訳わからない転生者の言葉の中でも特に意味不明な事しか…ゲーム用語だっけかな…を使う奴が来まして、そいつが乗っ取った、ええ、乗っ取ったのが扶桑と言う極東の、私も民芸品くらいでしか聞いたことのない島国を乗っ取ってました。
そうかと思えば、下級の魔物の中から突然変異みたいに賢いし強い個体が出てきたと思ったら、実はそいつは転生者だったとか、なんか突然すごい武器が見つかったと思ったら、それも転生者で、呪いを受けたとか言う女の子がそれ持って大暴れしたとか…
ここ数十年間は、ずっと転生者が現れては騒動を引き起こす。そんなのばっかりでした。
そして今から十年前ほど、貴方達が現れたんです。そうです、先ほどお聞かせしたクモことアトラク=ナクアが世界の破壊者と呼ぶ。貴方達ウェステッドが。
きっかけ?きっかけは、セントレア王国がかつてのように大空に、変わらない転生者のアホ面を焦らせたような顔を表示させて、こう騒いだんです。
「見た事もない魔物が大量に出現している」「とんでもなく強い魔物がいる」って。
その頃には私も旧魔王軍らと行動を共にしてまして、上を見上げていたら同行していたゴブリンが飛び込んできて「転生者が見た事もない魔物に殺されたのを見た」って言うんです。
貴方達によって最初に殺されたのは、冒険者をやっていた転生者とそのパーティでした。何やら卓越した剣術の使い手だったらしいですが、その時の…確か扶桑の甲冑を身に付けた頭だけ猫の姿をした怪人の居合い切りか何かで一瞬で真っ二つにされたそうです。転生者と、その仲間、そして周りの木々がね。
獣人族じゃないのかって、聞いたんですよ。でも彼が言うには、その怪人の片腕が、巨大な刀になっていたんだそうです。それで、居合い切りのような体勢を取ったと思ったら、次の瞬間には、自分のなけなしの毛髪が切られ、転生者たちも斬られた。
そして何よりも衝撃だったのは、転生者がそのまま死んだんです。
何かしらの理由で死ななかったり異常なまでにしぶといんです、
防御力が極めて高いとか、謎の数値がカンスト?してるとか、そんな理由で。
その転生者も例にもれず何かしらの理由で死ななかったらしいんです。可能性を消費して自分の死をなかったことにする…とかなんとか。
だけど、その可能性とやらを消費することもなく、自分が何をされたのか分からない、みたいな顔をしながら死んでいったと、彼は教えてくれました。
その猫みたいな生き物?彼が言うには、転生者が集めた武具には目もくれず、哀れにも真っ二つになった帝国出身の女の子、だった死体を貪っていたそうです。
生きていて正気が残っていたら、もしかしたら会えるかもしれないですね。
まあ、人間を喰ってる時点で正気なんてないかもしれませんが。
それから暫く経ってから、かつて転生者が初めて現れた時と同じように、新種の魔物のような怪物たちによる転生者や人間の被害が次々と報告に上がりました。
浮遊していて建物みたいな大きさを除けば幻想的なクラゲのような魔物が現れた。
そいつに港町の住民の殆どが触手に絡め取られるか貫かれて食い殺された。
カクカクしたゴーレムのような魔物が現れて、ドワーフの機甲部隊が全滅させられた。
車輪を両前足と両後ろ足で挟んだ豹に頭だけのライオンにした女性の上半身を融合させた訳の分からない怪物が、手にした金属製の看板のようなものでケンタウロス族の女騎士の胴体を切断して殺して、切り取った上半身を自分と同じように動物の背中に融合させて仲間にした。
ケバケバしい配色のユニコーンの頭をした怪人が、転生者と一部しか使っていない銃という武器を持って娼館に突入したと思ったら、男は全員撃ち殺し、女は手にした角で全員刺し殺した。
迷宮に住み着いた転生者が、鋼鉄の蜘蛛以外に例えようのない怪物に八つ裂きにされているのが見つかった。
帝国の転生者が、ケンタウロス族の女騎士を殺した怪物と一騎打ちをして返り討ちに遭った。
共通点は、異様以外の言葉で例えようのない姿をしていること。
そして、人間と転生者だけでなく、目についたものを次々と襲っていたこと。
その数日後、セントレアから各地にその怪物たちをウェステッドと名付けたことと、最優先で排除するべき人類共通の敵と定めたという書文が回されました。
それが、貴方がウェステッドとこの世界で呼ばれる理由。そして襲われる理由です。
名前自体は、何体かが名乗ったそうなんです。俺、私、僕、あたし、ワシ、我、吾輩は、ウェステッドだと。
ただ、何で最優先で排除するべき敵になったのか、までは詳しくは知らされてないんですよ。まあこの世界で最強の座を欲しいままにしてるくせにわざとらしく謙虚な姿勢を見せてる転生者が言ってるんで、ならヤバい化物なんだろうと言った感じです。
その後、言葉を話せるウェステッドとかが現れるようになったり、旧魔王軍がどうにかコンタクトを取ったりして分かったのは、貴方達も同じく転生者である。ということでした。
いやもう、誰もまともに話してくれないし話す内容も自虐めいてて、価値がありそうな情報がこれしかなかったんですよ。あそこのカーネイジさんに至っては「同士討ちしない仲良しこよしの引きこもり集団」とか言うだけなんですもん。
仲良しの何がいけないんですかね。同類同士仲良くすればいいのに。
椎奈さんは、何か感じましたか。何も感じない?分からない?そうですか。
まあ、これから私があなた達に頼みたいことに、そんな感情は不要です。
だって、あなた達にやって欲しいことは、クモが言った通りのことなんですから。
ウェステッドは世界を滅ぼす存在なんでしょう?世界を滅ぼすために産まれて、その通りに滅ぼしていく存在だと。
僕はもうこの世界に疲れました。旧魔王軍や周辺諸国の有志連合軍はまだ諦めていないようですが。貴方達が来たところで、何も変わりませんでした。
変わったのは、転生者と同じくらい厄介なものが増えたくらい。
はい、そうです。椎奈さん。おぞましい深淵種の椎奈さん。
王のウェステッド、そして強力なウェステッドと一緒に
「この世界を滅ぼしてくれませんか?」
はいもいいえも必要ありません。だって全てのウェステッドはやがて狂うと言うんですから。
正気のまま滅ぼそうが、正気を失って滅ぼそうが、この世界が終わってくれるなら僕はどうでもいいんです。王たちも、いずれは狂うのでしょうから。
だけど、私の人生を、多くの人々、国々の運命を狂わせたあの転生者たちだけは、必ず皆殺しと言わずとも壊滅してください。
詳しく言うなら「勇者と呼ばれている強力な転生者とその子孫とこの世界を滅ぼしてください」。
やると決まったら、教えてくださいね。世界を滅ぼすために、死んで甦った貴方達と、世界をどうするために産まれたのか分からない転生者たちの殺し合いなんて。
今まで見たどんなショーより楽しいものに決まってるんですから、一番前で見たいんですよ。
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