18.Bottle(ボトル)

 ウイスキーが好きだ。 

 出来れば癖の強いシングルモルト。

 磯の香りと強烈なヨード臭。

 口に含むと優雅に広がり、そこから変化する複雑妙味な香りったらもう言葉に出来ない。

 この味わいを知っているというだけで、僕は他の人よりも人生でひとつ得をしていると確信している。


 そんなわけで好きなシングルモルトウイスキーのボトルを紹介したい。

 どちらかというと好き嫌いの分かれるボトルばかりだ。

 でも好きなのだから仕方がない。


・ボウモア

スコットランド西岸沖のアイラ島で製造され “アイラの女王” と称されるウイスキー。その香りはスモーキーかつフルーティで奥深い。シングルモルトの入門にして至高。できればロックで飲んで欲しい。口の中で転がし、鼻に抜ける香りを楽しんで欲しい。きっと病みつきになるから。さあ、シングルモルトの世界にようこそと言いたくなる。


・ラフロイグ

ボウモアに比べると癖が強く、開封すると強烈なヨード臭が鼻につく。うへえとなりそうなところをぐっと飲んでみるとあら不思議、草原を駆け抜ける風のような爽やかさが鼻孔を抜けてゆき、これぞウイスキーという満足感を与えてくれ。チャールズ皇太子も好んだという高貴な味わい。


・ラガブーリン

ラフロイグよりさらに香りに癖があるのがこのラガブーリン。故マイケル・ジャクソン氏(ポゥ!じゃなくてビール/ウイスキー評論家の方、と言っても分からない人の方が多いのだろうけれど)も絶賛したというスモーキーかつ強烈なピート臭の奥に、他の追随を許さない美味さを内包しており、この香りを知ってしまうともうラガブーリンじゃないと寂しいとさえ感じてしまう。個人的にはボトルのデザインも古風で威厳があって好き。抱いて眠りたい。


・アードベッグ

ピートの香りとフルーティさが不思議と両立するアイラモルトの最高峰。この香りと出会えた奇跡をただただ喜びたい。拙作の登場人物の名前にも使わせてもらっているぐらいに大好きなのだ。香りが良い。味わい深い。鮮烈さとバランスの良さに釣られてついつい飲み過ぎてしまうのが唯一の弱点ではないだろうか。ファンも多いようで三宮にはアードベッグ専門のバーがあるらしい。まだ行っていない。行ってみたい。


・アンノック(ノックデュー)

紹介する中では知名度では少し落ちるし、これだけハイランドモルトなのだけれど、蜂蜜やレモンの香りを思わせるフレッシュな香りと切れのあるフィニッシュに惹かれ、アイラモルトから浮気するような気持ちでたまに飲みたくなる。ロックもいいのだが少し加水してやると香りが立体的な広がりを見せてくれて、また別の楽しみ方ができる。ボトルもスタイリッシュで美しい。


 ちなみに今日のお供はボウモアの一〇年物。

 ボトルを傾け、ロックグラスに琥珀色の液体を注ぐだけで思わず顔がにやけてしまう。

 やっぱりこの香りは最高だ。

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